鹿島アントラーズのFW伊藤翔が24日、オンラインで取材に応じ、苦しい戦いが続くチームの現状について語った。つなぐことが目的化することの危険性を指摘し、好循環に転じるために選手が共通意識を持つことが重要と話した。

上写真=FC東京戦に向けてトレーニングする伊藤翔(写真◎鹿島アントラーズ)

回すことでいっぱいいっぱいになっている

 伊藤の指摘は、的を射ていた。どこに問題があるのか。改善するにはどうしたらいいのか。その頭の中で、整理されている。問題点は分かっているものの、改善がなかなか進まないところにもどかしさがある。ここまでチームはリーグ戦6試合を戦って1勝5敗。横浜F・マリノス戦の勝利が浮上するきっかけになるかと思われたが、事はそれほど単純ではなかった。

「試合をやっていく中で、良いときはみんながボールを前に前に運ぼうとか、前に出そうという意識がある。ただ、ミーティングでも話があったんですけど、出せるのにやめてしまうこともある。取られたら嫌だし、失点したら嫌だしで、今、悪い循環の中で戦っている。そこを打破するには、やっぱり勝つことが必要だし、勝って好循環に自分たちで持っていくことが大事」

 悪循環に長くはまってしまうと、チーム内に迷いも生じる恐れがある。そうならないために、ボールを回す目的を今一度、確認することが重要だと伊藤は言った。

「どうやって好循環に持っていくのか。今はボールを回すことだけに意識がいってしまって、何のためにボールを回しているのか、と。点を取るために、危険なゾーンに入っていくために、ボールを回して相手を揺さぶるのが、うちのやりたいサッカー。ただ、いまはボールを回すことにいっぱいいっぱいというか、相手のゾーンの外でボールを回しがちなところがある。もうちょっと危険なところに自分たちで入れていかないと、崩れない」

 新たに取り組んでいる戦術を消化することに意識がいって、本来の目的が疎かなってしまっているということだろう。ボールを回すのはゴールを奪うための手段。手段が目的になっては本末転倒だ。

「攻めの3分の2まではある程度できている。みんながこの立ち位置に立ってやっていこうというのはあるとは思う。ただ、そこから先をどうするの? っていうのもある。去年の鹿島の課題でもあったと思うんですけど、そこの部分の意識づけもそうだし、選手自身の質もそうだし、そういうところをもうちょっと上げていかなければいけない」

 生みの苦しみと言われている中で「選手が完成形について共通意識を持たなければ」と、伊藤は指摘した。

「マリノス戦でも早い時間帯で点を取れて、でもすぐに失点する流れになった。それだと厳しいし、そういうふうにならにように締めるというのがアントラーズだったと思う。そこはいま一度、自分たちで見つめ直さなければいけない。アントラーズだからできる、というのではなくて、もともとアントラーズにいた人たちが、ちゃんとやっていただけの話。自分たちはそこを勘違いしちゃいけない。(チームに)入ったからオッケーではなくて、ピッチでやってこそアントラーズの選手だよ、ということ。僕自身も含めてやっていかないと」

 明日はFC東京戦。鋭利なカウンターを誇るチーム。つなぐことに重きを置いたまま臨んでは、相性がいい相手とは言えない。

「きょうミーティングであったんですけど、顕著に空いているスペースがあったので、そこを有効に使えれば。ただ、カウンターは相手が狙っているところなので、ボールの失い方は気をつけないと。これはもう、FC東京と対戦するにあたっての定説というところですけど」

 FC東京戦を悪循環を脱し、好循環に転じる機会とできるか。この日、32歳の誕生日を迎えたFWに大きな期待がかかる。


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