上写真=「連戦には連戦の練習の仕方がある」と長谷川監督は選手を高めていく(写真◎FC東京)
「タフな試合になるのは間違いない」
どんなクラブでも、カシマスタジアムでの戦いは大きな大きな困難を強いられる。鹿島アントラーズのJ1リーグにおけるホームでの通算勝率は63.1%。次節で戦うFC東京がこの「魔のスタジアム」で残した戦績は、3勝4分け11敗、勝率は16.7%である。
「鹿島とのアウェーということで、非常にタフな試合になるのは間違いありません。全員が強い気持ちを持って戦うことが大事なポイントになるのではないか」
長谷川健太監督もこう言って、最大級のアラートを発するのだ。
一般的に見れば、今回は4勝1分け1敗で3位のFC東京と、1勝5敗で17位の鹿島では、前者に分があるように見える。それでも長谷川監督は繰り返す。「鹿島はポゼッションを重視しながら新しい形を模索しているということですが、横浜(F・マリノス)に勝っているし、その次の湘南戦でも先手は取られてしまったけれど、内容的には選手の理解度が上がってきていると思うので、難しい試合になると思っています」。慎重な姿勢は頑なに崩さない。
気になるのは、FC東京のメンバー構成だ。特に前節の北海道コンサドーレ札幌戦でキャプテンの東慶悟が右足を痛めて途中交代を余儀なくされ、検査の結果を待たずに出場は見送られることになった。レアンドロも鹿島から期限付き移籍の立場で、契約の関係上、出場ができず、田川亨介も左肩脱臼で戦線離脱。すでに橋本拳人がロシアのFCロストフに移籍している。ここまで中心となってきた面々をさまざまな事情で欠いたまま、挑まなければならない。若手の起用も視野に入っているが、「いまいる選手の状態を見極めて考えていく」ことと、「期待はするけれど経験が必要で、過度な期待はしない」ことの両面からアプローチしていくという。
良い面を見ると、前節の北海道コンサドーレ札幌戦に行き当たる。88分に室屋成のゴールでなんとか追いつく1-1のドローではあったものの、「何回か見直しましたが、決して悪い試合ではなかったと思います。もちろんマックスではなかったですが、いいシーンは何度かありましたし」と状態の良さを示唆している。鹿島戦につながる課題も見つけていて、それがメンタル面。「後半にメンバーが変わって、取り返すんだという気迫が出ましたが、それを前半の頭から出せなかったのは残念です。その前に浦和に勝ってホッとしたというのはないとは思いますが、本当の意味での戦闘態勢でキックオフから入れなかったのは事実です」と認めている。
その反省から導かれる鹿島戦のコンセプトは、この一言に集約されるのではないか。
「鹿島戦では、はじめから自分たちでアクセルを全開にしながら挑んでいけるかどうかだと思っています」
次に乗り込むのが難攻不落のスタジアムだからこそ、現在の順位やコンディションよりも闘争心を求めるのだ。
ところで、現在のメンバーの中で「FC東京の一員としてJ1リーグにおけるアウェーの鹿島アントラーズ戦で得点を挙げた選手」は、実は一人もいない。誰が決めても「初」という記念の一発になる。
さて、その歓喜は何度訪れるだろうか。