上写真=リラックスした表情を見せる中村(写真◎FC東京)
引きずっていたら意味がない
持ち味を出せず、前半のみのプレーで交代した川崎フロンターレ戦について、中村は「プロの難しさを痛感した」と振り返った。しかし、直後の横浜F・マリノス戦では先発フル出場。まるで別人のようなプレーぶりで運動量やアグレッシブさといった自身の持ち味を発揮した。
川崎F戦から横浜FM戦までは中3日。そのわずかな期間の間に何があったのか。
「あそこまでやられると、今まで積み上げてきたものが崩れ去る感じもありました。ただ、うまくいかないとか、壁にぶち当たる覚悟はできていた。いつか当たり前に来るものだと思っていたので、『これもいい経験だ』と割り切って、次の日の練習から気持ちを切り替えました」
うまく切り替えられたことは、横浜FM戦のプレーが証明しているだろう。
「健太さんからも次の日には『マリノス戦で使う』と言ってもらいました。感謝しかないです。そこでいつまでも引きずっていたら意味がないので。プレーを変えたとか、そういうことではないんですけど、心の部分で切り替えて、メンタル的にいい方向に持って行けたかなと思っています」
「自分の持ち味は守備の対人だったり、寄せるスピードだったり、運動量を生かしたプレー。フロンターレ戦のあと、数日でしたけど、マリノス戦に向けて自分の強みは何だろうと、考えて。そこでもう一回、球際の強さとか運動量というところに立ち返れました。まだまだ甘さがありますけど、マリノス戦で、少しずつ自分の中で手応えを感じられたかなとは思います」
そもそも1年半前までは本人もプロになるとは考えていなかった。就職活動もしていたという。それが今や昨年のJ1王者との試合に先発している。敗戦を引きずらずに次に向かえるのだから、そのメンタルは十分にプロ向きと言える。
「課題は経験の部分。感覚的なところしか言えないんですけど、細かいポジショニングだったり、1本のパスの質であったり、室屋成さんだったり、(小川)諒也くんと比べてもまだまだ差があるので。ただ、そこはネガティブにとらえず、自分がどれだけ意識して成長していけるかだと思うので、意識してやっています」
強みと課題を認識し、ポジティブに歩む中村。「一緒にやっていて感心してしまった」と話す攻守の中心・橋本拳人が移籍し、チームの戦力ダウンを心配される中でも、「守備が崩れたら終わり。チームで声かけ合ってやっていく」と地に足がついている。
東京五輪への興味を聞かれても「自分がやるべきなのは五輪を見据えてやるとかではなくて、FC東京で結果を残すこと。東京を勝たせたいという思いしかない。『まず五輪』と考えることは今の自分の本質ではないので。ここで全力で結果残すことで、結果として五輪につながるのであれば、それでいいと思います」ときっぱり。
迷わず惑わず、ただ信じる道を行く。中村帆高は今、日進月歩で成長している。