上写真=練習で札幌対策を施したザーゴ監督(写真◎鹿島アントラーズ)
成功体験を重ねて深める
勝てないときにどんな行動を選ぶか。人としてのフィロソフィーが問われる局面で、ザーゴ監督はまず自分たちに矢印を向けた。
「フロンターレ戦を引きずっても仕方がない。確かにレフェリングのミスがありましたが、こちらのミス、特にビルドアップのところでのパスミスでリズムを失いました。日本のサッカーで強いと言われているチームに対して、同等な試合ができたと思うし、こちらは作り上げている段階でもあります。それでもだいぶ浸透してきている手応えが、私の中にはあります。明日こそもっともっと質の高いものを示して、初勝利できればなと思っています」
「シーズン当初から比べると、私が要求しているものはできるようになってきました。180度変わったサッカーをする上では時間が必要で、時間が解決してくれる部分もあります。もちろん、その週に準備してきたことで、ビルドアップの部分で試合でできなかったり、ここというところのパスでミスして流れを失ったりして状況が一変してしまいました。改善の余地はありますし、感覚的なものもあって、試合勘という言葉に含まれるのですが、それを取り戻せればこちらの狙いを表現できるようになってきます」
自分たちのミスに誠実になること。そこから逆襲は始まる。勝利を手にできていないもどかしさはないわけではないが、手応えもあるという。だからこそ、たどり着く先は見失っていない。
「シーズン最後には優勝争いに持っていけると考えています。当初よりはだいぶ、理解や実行に関して満足できています」
そのためにもまず、初勝利だ。7月8日の相手は北海道コンサドーレ札幌。攻略法は選手に植え付けてある。
「非常に手強い相手で、身体能力を生かしたチームだと思います。彼らはスペースを与えてくれるところもあるので、作り方と使い方を選手が意識して表現し、前回より質の高いもの、精度の高いものができれば、初勝利を手にできると思います」
いつ、誰が、どんなふうにスペースを作って、突いていくのか。その点を入念にトレーニングしてきた様子を明かした。見る側はそこに注視すれば、よりゲームを楽しめるだろう。
勝利のために、ザーゴ監督が掲げたのが4つの要素。
「ゲームコントロール、テンポ、スピード、インテンシティを表現できれば、勝利に近づくと思います」
すべてこれまでの鹿島アントラーズが当たり前のように持っていて、しかし、前節の川崎F戦では表現しきれなかったもの。つまり、原点に戻れ、ということではないだろうか。
MF遠藤康は選手たちが自信を失っている印象を明かし、警鐘を鳴らした。ザーゴ監督は「ボス」として、自信を引き出さなければならない。
「自信という部分は練習でつかんでいって、試合で結果が出ればまた自信につながります。そのためには、まず何をすべきか理解しないと難しくて、理解すれば実行に移せるし、練習の中で実行して成功体験が重なれば自信が深まります。試合では勝利へのプレッシャーもあり、相手も自分たちのイメージ通りに動いてくれるわけではないですが、やるべきプレーをやり続けるんだということを選手たちに話しています。いろんな形でアプローチして、間違っていないんだ、大丈夫だ、と言い続けて、今度は成功体験を試合で重ねていくのです。そして、大半の選手が理解して実行できるようになっています」
勝利こそ最上の薬。札幌戦を、自信を取り戻すきっかけにするつもりだ。