上写真=横浜F・マリノスのFRM事業部、永井紘事業部長(写真◎横浜F・マリノス)
何をすべきか共通意識を持った
――事業部というと仕事の範囲も広く、コロナ禍でより大変だったのではないでしょうか。
永井 今までとは全く違う仕事もしています。チケット代収入でビジネスをしていた部署だったので、試合がないことによって考え方が随分変わりました。売り物がない中で、そのままだと業務がゼロになっていたと思います。ただ、早い段階で違うことをやろうという意思決定をクラブでしていました。何をしなければいけないかという大きな目標について共通意識を持っていたので、あとはどう形にするかでした。
――クラブ内の共通意識とは、どういうものですか。
永井 ネガティブな空気が世の中に流れていたので、何とかスポーツの力で明るい話題をお届けできないか、社会貢献できないかというのが第一でした。また、クラブを応援して支えてくださるファン・サポーターの方々に何ができるのかを考えていきました。当初はすぐに再開できそうな雰囲気だったのですが、緊急事態宣言が出たので「これは長引きそうだ」と予想し、本格的に考える内容を変えていきました。
「STAY STRONG TOGETHER」と銘打って行動し、グッズの売り上げ利益をそのままマスク購入代にあててホームタウン3市にお届けする社会貢献活動を皮切りに、選手の発案でオンラインイベントなどを行ないました。それで目途がついたことで、クラブとしてオンラインで有料トークショーにチャレンジしたりと、少しずつフェーズを変えていきました。
――クラブ内の変化もありましたか。
永井 普段それぞれの仕事をしている仲間が、担当の枠を超越して力を合わせました。オンライン上でお客様とどういうコンテンツで接点をつくっていくかという会議に、チケット販売担当のチームが「参加させてほしい」と言ってきてくれました。試合の運営担当のメンバーがオンラインコンテンツのアイディアを出してくれたこともありました。ファン・サポーターに喜んでもらいたい、という気持ちを皆が持っていると再認識できたことが印象的でしたし、うれしく思いました。
――制限がある環境で、逆に新しいアイディアや発見もあったのでしょうか。
永井 ネガティブにとらえようと思えばいくらでもできますが、この状況だからこそできることがありました。例えばオンラインのトークショーでは、距離という概念がなくなるので、遠方在住の方にも参加いただけるというプラスの側面がありました。これまでの概念からは生まれないことだったと思います。
――ファン・サポーターの声も、アイディアに影響したそうですね。
永井 早い段階から、いろいろな声が届いていました。直接クラブに伝えてくれる方もいましたし、SNSで個人の思いとして発信してくださる方もいました。クラブとしてSNS上の情報も追っているので、「なるほど!」という考えは、すぐに社内のチャットで共有をしました。ファン・サポーターの声を、我々の中ではしっかりと認識していたつもりです。