上写真=笑顔で優勝カップを掲げるGK飯倉(写真◎Getty Images)
■2020年2月8日 FUJI XEROX SUPER CUP 2020(埼玉スタジアム2002)
横浜F・マリノス 3-3(2PK3)ヴィッセル神戸
得点者:(横)M・ジュニオール、扇原貴宏、エリキ (神)ドウグラス、古橋亨梧、山口蛍
初めてのマリノス戦
飯倉大樹が横浜FMから神戸に移籍したのは昨年7月。プロとして14シーズンを過ごした古巣と試合で対戦するのは、この日のゼロックス杯が初めてだった。
「マリノス戦だからって力が入っていたのか分からないけど、いつもより集中力は高かった」
その集中力が特に発揮されたのは試合終盤。82分にFW仲川輝人のシュートを防ぎ、後半アディショナルタイムにもFWエジガル・ジュニオにゴールを許さず、2度も訪れた1対1のピンチをビッグセーブで乗り切った。仲川もエジガルも、昨季途中まで飯倉とはチームメイトだった。「相手の特徴を知っていた俺の勝ちかな」。神戸の守護神は得意げに笑った。
PK戦では、キッカーに対して笑顔を見せるなど、心理戦を仕掛けた。「(横浜FM時代に)PKは練習で何回もやっているし、人柄も分かっている。俺の方が有利で、(横浜FMの)みんなは不利だったと思う」。3人目のエジガル、6人目のMF和田拓也のキックを見事にセーブし、勝利の立役者となった。
昨季J1王者の横浜FMを下した神戸は、元日の天皇杯に続いてクラブ2つ目のタイトルを獲得。近年の大型補強がようやく実を結びつつあるが、飯倉は「きょうの内容で(自分たちが)強いと言うのはまだ早い」と現実的だ。実際に終盤は防戦一方の展開となり、守護神のビッグセーブがなければ結果は違っていただろう。だが、それでも勝てたことに意味があると飯倉は言う。
「最後まで体を張ることによって勝利を得られると知った天皇杯の決勝だったり、きょうの試合だったり、そういうものは頭じゃなくて体で感じるものだから。気持ちの部分での成長は大きいと思う」
世界的スターを擁するチームが勝者のメンタリティーを持てば、まさに鬼に金棒。飯倉の活躍により、神戸はまた一歩、常勝軍団に近づいた。
取材◎多賀祐輔