12月28日に開幕する第100回の高校選手権。長い伝統と歴史に彩られている大会では、過去に多くのヒーローが誕生してきた。高校サッカーを現場で取材する川端暁彦氏、森田将義氏の識者2人が、今大会注目の新しいヒーロー候補を紹介する。

上写真=湘南への加入が内定している阪南大高FW鈴木章斗(右)と、町田に加入する青森山田MF宇野禅斗(左)。両チームは勝ち上がると3回戦で激突する(写真◎川端暁彦、石倉利英)

【高校選手権】第100回大会・出場全48校◎登録メンバーリスト

図抜けた存在の鈴木章 松村は希少価値がある

――今年度もJクラブ加入内定選手が多く出場します。

川端 青森山田(青森)のMF松木玖生(まつき・くりゅう)は、とにかく『心』が別格です。自分の意見をガンガン主張するタイプなので、最上級生になると逆に周りの選手が言いづらくなる可能性もあるかと思っていました。でも予想以上にフォア・ザ・チーム、チームを良くするために何をするかを考える、いいキャプテンになっています。FC東京で、どう成長するか楽しみです。

森田 技術がある選手ではないですよね。それは本人も分かっていて、でも気持ちがあるからこそ、攻撃にも守備にも顔を出せる。

川端 うまさが売りではないけど、ゴールを決める力がある。何でもメンタルで片付けるのは乱暴ですが、やはりそこが最大の魅力です。

森田 本田圭佑や鎌田大地と似ていると思っています。自分でハードルを上げて自分を追い込んで、そのためには結果が必要、という感じ。ただピッチを離れると普通の高校生らしい、無邪気な一面も見せるんですよね。

川端 そう。ピッチ上でのギラギラ感とのギャップが大きくて。

森田 だから周りとも、うまくやっていけるんでしょうね。

――過去2年、決勝で敗れているというストーリーもあります。

川端 本人も、それをすごく意識しています。どんな結末を迎えるのかは間違いなく、今大会の見どころの一つでしょう。

画像: インターハイ決勝の後、金メダルを手に笑顔の松木。FC東京に進む前に、高校生活最後のタイトルに挑む(写真◎石倉利英)

インターハイ決勝の後、金メダルを手に笑顔の松木。FC東京に進む前に、高校生活最後のタイトルに挑む(写真◎石倉利英)

――ほかに気になる選手は?

川端 湘南に加入する阪南大高(大阪)のFW鈴木章斗(すずき・あきと)です。阪南大高はダークホースだと思っていて、その中でも図抜けた存在。体格がしっかりしていて気持ちも強く、チームプレーヤーでありながら、ストライカーとして単独でも輝ける。あまりいないタイプです。

森田 振る舞いや言動など、すべてがストライカーですよね。でもG大阪ジュニアユースで3年生のときは、サイドバックの控え。高校1年のときも目立たなかったですが、コロナ禍で思うように活動できなかった2年生のとき、しっかり食べて寝ることを続けて、体がぐんと大きくなったとか。

川端 「俺に任せておけ」という感じがあり、あいつに預けたら何か起こしてくれるのでは、という期待を、周りに自然と持たせる選手ですね。阪南大高は左SBの2年生、保田成琉(やすだ・なる)など各ポジションに好選手がいます。青森山田とお互い勝ち上がって3回戦で対戦したら、面白い試合になりますよ。

森田 鈴木と同じく湘南加入が内定しているDF松村晟怜(まつむら・せれ、帝京長岡=新潟)に注目しています。184センチで左利きのCBという希少価値のある選手。1年のときは攻撃的MFでしたが、帝京長岡らしい、うまいCBに育てたいという谷口哲朗総監督の考えでコンバートされました。守備もセンスがあるので、すぐに順応しましたね。

川端 県予選を取材したときはケガで欠場していましたが、プレミアリーグプレーオフで復帰しました。左足からのフィードが注目されている一方で、ドリブルで運ぶことができるのも武器。前から積極的にプレッシャーをかけていくチームが、かわされるシーンが見られると思います。

森田 今大会は湘南加入が内定している選手が多くて、帝京大可児(岐阜)のMF鈴木淳之介(すずき・じゅんのすけ)はスケールが大きなボランチ。183センチのサイズがあり、組み立てのセンスがあるのですが、中盤の底からゴール前まで出ていって仕事をする。あまりいないタイプなので、湘南が2年のときに獲得を決めたのも分かる気がします。


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