鳥取県高校総体代替大会の男子サッカー競技・西部地区大会決勝で、境高を1-0で下して優勝した米子東高。これが高校サッカーの『引退試合』だったGK奥山秀人は好セーブを連発、有終の美を飾る完封勝利を飾った。

上写真=県高校総体の代替大会で優勝、高校サッカー最後の試合を完封勝利で飾った奥山(写真◎石倉利英)

「引退すると決めていた」

 中止になった今夏のインターハイ(全国高校総体)の予選に代わり、鳥取県が独自に開催した県高校総体の代替大会は、東部、中部、西部の3地区に分かれてトーナメントで争われた。20日の西部地区大会決勝に勝ち進んだのは、準決勝で『絶対王者』米子北高を3-2で下した米子東高と、昨年11月の新人戦に続く決勝進出となった境高だった。

 序盤のチャンスの数は米子東の方が多かったが、境も徐々に反撃に転じる。そこに立ちはだかったのが米子東の守護神、GK奥山秀人だった。12分(35分ハーフ)には左サイドから抜け出した相手にフリーでシュートを打たれたが、鋭い反応ではじき出す。

 2009年11月の新人戦からインターハイ予選、選手権予選と合わせて県内3大会で負け知らずだった米子北を下した準決勝は、3-0から2点を返され、何とか逃げ切っての勝利だった。「フィールドプレーヤーにたくさん助けられたので、今日は自分がチームを勝たせるという強い気持ちで臨んだ」という意気込みを体現するプレーは、1点を先制して迎えた後半も続く。60分、65分に相手のミドルシュートが枠を捉えたが、右に左に鋭い反応を見せてセーブ。「体が軽かった」と振り返るプレーは躍動感にあふれていた。

 奥山にはもう一つ、この試合に懸ける強い思いがあった。

「この大会を最後に引退すると決めていました」

 受験準備のため、インターハイが終わったら部活動を引退するつもりだった。だがインターハイが中止になり、その予選である県総体も中止に。「全国大会を目指すのが本当の目的だった」という中で、難しい状況になったものの、その後に代替大会が開催されることになり、最後の舞台に向けて「このチームで最後に優勝したいという思いで、毎日練習してきた」という。

 試合終盤、足をストレッチするような仕草を見せていた。足がつりそうになっていたのかと思いきや、「ものすごく緊張していたので、心を落ち着けるためだった」。その成果もあってかプレーは最後まで落ち着いており、体を張って境の攻めに立ちはだかるフィールドプレーヤーとともに、そのまま1-0で試合終了。高校サッカーの『引退試合』で見事な完封勝利を飾った。

 試合後、チームメイトから「神だったな!」と声を掛けられた。「悔いのない結果で終えることができて、本当にうれしい。最高です!」と笑顔を浮かべた奥山は、高校サッカーをやり切った充実感を胸に、ゴール前から机の上に戦いの舞台を移す。

文◎石倉利英 写真◎石倉利英


This article is a sponsored article by
''.