上写真=市立船橋では左右両方のサイドバックをこなす松尾
写真◎サッカーマガジン
転機となったのは“裏選手権”
グラスポ(市立船橋が高円宮杯プレミアリーグでホームとする施設)のピッチを疾風のごとく駆け抜ける。小学生時代から快足FWとして鳴らしてきた松尾の持ち前のスピードは、市立船橋の中でも群を抜いている。
昨年度の高円宮杯プレミアリーグEASTでは、2年生ながら16試合に出場。トップやウイングでプレーし、14節清水ユース戦(○2−1)では、途中出場で決勝ゴールをスコアした。
だが、その翌節の大宮ユース戦(○2−1)は前半のみで退くと、その後のラスト3節では出場時間が激減。「前線でプレーしていて正直、自分で限界を感じていたんです。実際に結果を残せていなかった(昨年度リーグ戦では1得点のみ)」と、壁にぶつかっていた。
そんな中で迎えた昨年の暮れ。市立船橋は千葉県予選で敗れて全国高校選手権に出られなかったため、年を越す前に新チームが始動した。その初陣となった『横山杯』で、新境地を開く。「(朝岡隆蔵)監督からいきなりサイドバックで起用されたんです。その大会ではまだFWとサイドバックを両方やっていたんですけれど、それが終わった後の“裏選手権”ことニューバランスカップからは、ずっとサイドバック起用ですね。そこからはもう前線ではプレーしていない」と“DF”にコンバートされた。
「それがハマりました」と、本人も手応えをつかむ。「自分の縦へのスピードを生かせるので、適性ポジションなのかなと思っています。どんどん裏へ走って攻撃的に出て行こうと考えながらやっているし、シーズンの最初はずっと右サイドだったけれど、最近は左右両方をやっています。右利きだけど、どちらでも、という感じです。左サイドに入ったらカットインしてどんどんシュートを狙っていこうと思うし、右サイドでは縦に行くことを意識しています。攻守においての1対1でも、誰にも負けたくない」と、FWとして感じていた壁を打ち破ったかのように、再びピッチを疾走し始めた。
その活躍は代表スタッフの目にも留まり、8月のSBSカップでU−18日本代表に初招集された。「選ばれたことはうれしかった。スピードが通用する部分はあったけれど、その他はまだまだだなって感じ。(周りは)パススピードが速いし、コントロールの位置だったり、ワンタッチの精度だったり、レベルが高い。自分も頑張らなきゃダメだな」と、新たな刺激を受けた。
サイドバックとしての戦いはまだ始まったばかり。名門校のサイドで躍動する韋駄天の進化は、これからも続く。
取材◎小林康幸
松尾勇佑[市立船橋 3年/DF #3]
まつお・ゆうすけ/2000年6月27日生まれ、ジェファ・FC出身。昨年12月にサイドバックに転向したスピードスター。左右両方のサイドをこなせる器用さも魅力。170cm、68kg