上写真=103分、林幸多郎が右足を伸ばして先制点を決めた(写真◎Getty Images)
■2025年11月16日 天皇杯準決勝(観衆25,961人/@国立)
町田 2-0(延長)FC東京
得点:(町)林幸多郎、オ・セフン

初志貫徹の2ゴール!
FC町田ゼルビアはキックオフから「戦術デューク」。右シャドーの位置で待ち構えるミッチェル・デュークをめがけて、繰り返し繰り返し、ハイパントで届けていく。ただ、その先がつながらない。セカンドボールへの反応に遅れを取ることが多く、誰かが蹴って、デュークが跳んで、で終わってしまう。
こうなると、例えば相馬勇紀の切れ味鋭いドリブル突破を発揮する機会も少なくなって、持ち味が持ち味を消すような格好になった。
セカンドボールへのリアクションはFC東京のほうが鋭く、最終ラインを中心にロングボールに粘り強く対応してスキを与えないものの、こちらもその先の攻撃につながらない。
前半は町田が36分に左から、45分に右から相馬が送ったクロスにデュークがヘッドで狙ったのが目立ったぐらい。どちらにも決定機らしい決定機はなく、静かなまま終えた。
町田は後半開始からも大きく手を加えることはなく、続けてデュークへと蹴り込む戦い。FC東京も町田の5バックを崩す効果的な方法を持たずに、ともに攻めあぐねてじりじりとした展開が続いていった。
町田はスタイルはそのままにターゲットをオ・セフンに変え、FC東京もマルセロ・ヒアンが最前線に入ってロングボールに競り合うキック合戦に。後半途中からは疲労も重なって足が重くなり、1点勝負を見込んだかのような堅い展開が続くことになった。そして、0-0のまま延長戦へ。
だが、ここでついに動いた。愚直にやり続けたことが、最後の最後に形になったのは町田だ。103分、ロングキックにオ・セフンがヘッドで触り、前にこぼれたところに走り込んだ林幸多郎がDFとGKの間に右足をねじ込むようにして押し込み、ついに均衡を破った。
すると、延長戦後半の109分にも、左深くまで入ってナ・サンホがヒールで戻してから相馬が縦へ勝負、小さくマイナスに折り返したところをオ・セフンが蹴り込んで、決定的な2点目を決めた。これで勝負あり。このまま逃げ切った町田が初めての決勝進出を果たした。
敗れたFC東京の松橋力蔵監督は「相手のやることに対して守備のプレーは満足できるところはあります」と、延長前半途中までは失点をしのいでいたところまでは評価した。しかし、「こういうゲームの中で一瞬のチャンスをつかみとるかどうか。残念ながらこちらが取ることがなく町田さんに取られた」とスキを見せたことを悔やんだ。
町田の黒田剛監督は「延長に入ったときも、選手たちは自分たちのサッカーを切れずにやるということで、しっかりと焦らずに、そしてあまり高揚感を出しすぎることなく、落ち着いて迎えることができました」と平常心の強さを実感。そして、「デュークやオ・セフン(へのロングボール)をすごく嫌がっている印象を受けたので、そこは絶対に狙い目だということで狙い続けました」と初志貫徹が招いた勝利を喜んだ。
クラブ史上初めてのメジャータイトルまで、あと1勝。相手はヴィッセル神戸に決まった。
