上写真=試合後にゴール裏で喜びを爆発させる高木、FW三平和司、先制点を決めた伊藤(右から)。天皇杯でのベスト8進出は6年ぶり(写真◎石倉利英)
■2019年9月18日 天皇杯ラウンド16
広島 1-1(PK9-10) 大分
得点者:(広)ハイネル
(大)伊藤涼太郎
「何とか一つでも止めれば」
34分にFW伊藤涼太郎の天皇杯2試合連続ゴールで先制した大分に対し、広島も80分に交代出場のMFハイネルが、鮮やかなオーバーヘッドシュートを決めて同点。1-1で迎えた15分ハーフの延長戦では両チーム得点なく、ベスト8を懸けたPK戦に突入した。
ここでも双方譲らず、次々にキックを成功させていく。5人ずつが蹴っても勝負は決まらず、6人目以降も続いていく中で、大分のGK高木はストップする難しさを感じていたという。
「ウチも含めて、キッカーがすごくうまかった。芝が短くてピッチが硬く、(キッカーが)蹴りやすかったと思うし、加えて僕たちも新しいルールで前に出られず(※改正されたルールで、PKの際にGKは少なくとも片足をゴールラインか、ラインの上方に置いていなければならず、ラインの後方にいることはできなくなった)、出たらイエローカードが出ると言われたので、慎重になっていました。難しさがありましたけど、(相手のキックが)甘くなったところを何とか一つでも止めれば、と思っていた」
PK戦は続き、8人目、9人目もお互いに成功。自分が蹴る11人目が徐々に近づき、この試合に向けたPK練習でキックを外していたという高木は「自分まで回ってきたらどうしよう、と考えていた」と振り返る。しかし一方で、千葉に所属していたときに、同じような経験をしたことも思い出していた。
「千葉での公式戦デビューが天皇杯の柏レイソルとの試合で(※2014年の第94回大会・3回戦)、PK戦になったんです。GKまで回り(※高木は11人目でキックを成功)、13人目に僕が止めて、味方が決めて勝ったんですけど、そのときも1本も止められなかったので。今日も『PKは難しいな』と思っていました」
だが10人目、広島MF柴﨑晃誠のキックを、ついにストップする。「たぶん相手も駆け引きしてきて、蹴る瞬間に急にストップした感じになり、我慢した方がいいかな、と思って我慢しました。ちょうどそこに蹴ってきたので、止められた」。その後に大分はDF鈴木義宜が決め、長い戦いに終止符を打った。
高木はPK戦だけでなく、的確な位置取りと安定した足技を生かしたビルドアップへの参加でも持ち味を発揮したが、チーム全体の出来については「今日は試合運びが全然良くなかった。後半から相手にずっとボールを持たれたので、改善しなければいけない」と反省点を口にした。大分の天皇杯ベスト8は2013年の第93回大会以来、6年ぶり。過去最高のベスト4を目指す神戸との準々決勝を見据え、「なかなか、こういうチャンスはない。天皇杯は勢いがリーグ戦に影響してくるし、メンバーが変わり、いろいろな選手が出ることで、チームが活性化することにもなる。いいチャンスなので、一つでも上に行けるように、という思いがある」と決意を新たにしていた。
なおラウンド16の残り2試合、浦和-Honda FC、鹿島-横浜FMは9月25日に開催。準々決勝は10月23日(水)、準決勝は12月21日(土)で、決勝は来年1月1日、東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場のこけら落としとして行なわれる。
取材・写真◎石倉利英