AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準々決勝第2戦。アウェーでの第1戦をスコアレスドローで終えた鹿島は、ホームで必勝を期して臨んだ。しかし、40分に広州恒大にコーナーキックを与えると、FWアンデルソン・タリスカに決められて失点。痛恨のアウェーゴールを献上してしまう。後半は序盤から攻め込み、51分にMFレオ・シルバのシュートがMFセルジーニョに当たり、コースが変わってゴールネットが揺れる。1-1の同点に追いついた。その後も逆転を狙って、FW土居聖真やレオ・シルバがチャンスを作るものの、勝ち越しゴールを奪えずタイムアップ。2試合とも引き分けの結果に終わったが、広州恒大にアウェーゴールを許した前回王者の鹿島は準々決勝で姿を消すこととなった。

上写真=元ブラジル代表MFパウリーニョとマッチアップする小泉(写真◎Getty Images)

■2019年9月18日 AFCチャンピオンズリーグ・準々決勝第2戦
鹿島 1-1 広州恒大(中国)
得点者:(鹿)セルジーニョ (広)アンデルソン・タリスカ

悔しさ募る敗退。「負けていないけれど、負けた」

 鹿島の右の翼は、90分間にわたって激しい上下動を繰り返した。

 右サイドバックの小泉慶は、タッチライン際を何度も果敢に駆け上がってオーバーラップを仕掛け、ボールを持てば「今日はあまりバックパスをしないで、なるべくクロスを上げたり、強引にでもドリブルを仕掛けてコーナーキックを取りに行ったりしました。全部の判断が良かったわけではないかもしれないけれど、僕が相手ディフェンダーだったら、バックパスばかりだと怖くないので」と、前への意欲を体現した。

 また、相手のポゼッション時には重心を低く構えてボールを狩った。対峙したパウリーニョに対しては「やられない守り方」を意識。筋骨隆々の元ブラジル代表MFを相手に「思い切り体と体でぶつかっても勝てないと思っていたので、ある程度の距離を取って、ボールを触らせて、隙があったら取りに行こう」と、頭脳的な守備の仕方を心掛けた。その結果、チームとして広州恒大のシュートを5本に抑えるなど、相手に自由を与えなかった。

 ただ、一本のコーナーキックからの失点が命取りとなり、アジアの舞台からの敗退を余儀なくされた。「何回かあったチャンスを決め切れなかったし、前半に失点してしまった。(2試合を通じて)負けていないけれど、ACLという大会にはアウェーゴールのルールがあるので、負けた。アウェーゴールの痛さを痛感しました」と、唇を噛む。

 小泉は今季、柏でJ2リーグに1試合しか出場できず、シーズン途中の7月に鹿島へと加入した。ボランチを主戦場としながらも、大岩剛監督に右サイドバックで起用され、ACLでも第1戦に続いて、2戦目も先発出場。水を得た魚のように躍動し、チームとともに“4冠”を目指して走り続けた。それだけに、一つの大会からの敗退を強いられ、ただただ悔しさが募る。

「ACLのタイトルを懸けて戦っている中で、僕は移籍してきた。正直、すごく(タイトルを)取りたい大会でした。だから、まだ悔しさは残っている……。チームは史上初の4冠を本気で狙っていたし、僕もその波に乗って、(4冠を)取りたかったので、それを達成できなくなってしまったのは本当に悔しい」

 ただ、「下を向いている暇はない」と、小泉は静かに口を開く。常勝軍団の一員として、すぐに気持ちを切り替え、残された3つのタイトル獲得へと向かっていかなければならない。1週間後には横浜FMとの天皇杯ラウンド16(9月25日・カシマスタジアム)が待ち構え、10月には川崎Fとのルヴァンカップ準決勝も控えている。チームとして“王座奪還”を目指すJ1も大詰めだ。残り8試合で首位FC東京を逆転し、3年ぶりのリーグ・タイトルを狙う。いまだプロでの優勝経験がない小泉自身の“初タイトル”への挑戦は、これからも続いていく。

「今日の試合で反省すべきところは反省して、今後に生かさないといけない。ただ、チームとしてプラスになったところはあると思うので、そこは絶対に自信を持って、ここからまた強くなっていければいいなと思います。次は天皇杯ですけれど、まだタイトルを取れる大会が3つあるので、これを糧に、何としても取らなければ。4冠を成し遂げられなかったぶん、3つのタイトルを取りたいですよ」

 一つの敗北によって、鹿島はさらなる強さを求める。そうして幾多のタイトルを獲得してきた常勝軍団の今季は、まだ終わったわけではない。深紅のシャツに袖を通してから2カ月が経つ小泉も、どん欲に勝利を追い求める。

取材◎小林康幸

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