第3節を終えて未勝利だった韓国の慶南は、アウェーで鹿島を破り初勝利。63分、邦本宜裕がジョードン・マッチのクロスに左足で合わせて先制点を奪うと、守備では鹿島の攻撃を完封した。

上写真=攻守に存在感を放ち、試合のマン・オブ・ザ・マッチに選出された邦本(写真◎J.LEAGUE)

「俺を見てくれ」

 試合終了の笛が鳴ると、慶南の邦本宜裕は両手でピッチを叩き、喜びを爆発させた。久々となる日本での公式戦で、自らの決勝ゴールで鹿島を撃破。ACLでの初勝利ともなり、「やっと勝利できた。結果が出たというのは、自分にとってもチームにとっても、すごくプラスになったかなと思います」と笑顔で語った。

 2017年5月に福岡を退団し、昨年から韓国に活躍の場を移す。チームに在籍する日本人は邦本ただ一人。今ではチームの“核”とも呼べるほどの存在感を放つ。この試合でもチームメイトがボールを持つと、まずは邦本にボールを預け、そこから攻撃が始まっていた。

「(周りの選手が)ボールを持ったら『俺を見てくれ』と言っている。(パスを)出さないときとかに言い合いになったりもするけれど、それでも、みんなは自分の意見を聞いてくれます。もちろん僕もみんなの意見を聞くし、コミュニケーションをよく取りながらやれていると思います」

 決勝ゴールの場面では、直前の選手交代でポジションを中央から左サイドへと移した。「正直、サイドはあまり好きじゃない。どちらかというとインサイドでやりたい」と言うものの、「チームの方針なので仕方ないことだし、それまではなかなか上がっていく機会がなかったので、サイドでプレーするからにはアシストか得点はしたいなと思っていた」と、すぐに自身の果たすべき役割を認識した。そして、「あのワンチャンスを物にできて良かった」と、満足げな表情を浮かべる。

韓国での変化

 守備でも、猛然とボールホルダーにプレスをかけて、相手の攻撃を阻止する場面があった。「前回(第3節)は残り少ない時間帯で3失点している。だから今回はみんな意識して、前回よりも早くプレッシャーに行っていたし、クロスへの対応も良かった」と、チーム全体の出来に手ごたえをつかみ、「自分も頑張って大外に戻っていけた。みんなの気持ちが勝利につながった」と胸を張る。この試合でも見せた“守備の意識”は、邦本が韓国で成長したところだ。

「なんか、いろいろなことを学ばせてもらっていますね。自分はアビスパにいたときに、あまりディフェンスをしていなかったと思っています。(ディフェンスを)したとしても、そんなにきつく行くわけではなかった。でも、自分が(ディフェンスを)したほうが、チームも楽になれるなと。(プレースタイルを)自分で変えたつもりはないんですけれど、自然と体に染みついたというか。Kリーグ(韓国)が激しいんですよ。一発でドンとくる感じがあるし、レッドカードもよく出ている。それだけ1試合1試合に、日本の選手もそうだとは思いますけれど、韓国のサッカーはより気持ちが出ているなと思います」

 元々、ボールを操る技術に長け、攻撃面で輝く選手だった。それゆえに、守備面の成長は、韓国に渡ったことでしか得られなかったことなのかもしれない。「日本でもいろいろなことを学びましたけれど、違う国に行けばまた違ったスタイルがあるので、サッカー選手として楽しんでやろうと思っています」と、異国の地でのプレーに充実感を抱いている。

 そして、邦本は今日も、多くの目標を胸に戦い続ける。その中には、日の丸への思いもある。

「一つだけではなく、いろいろな目標が自分の中にはあります。チームとしてはKリーグで勝ち続けること。ACLはまず、今回の試合で勝利するという目標を達成できたので、残りの(グループステージ)2試合でしっかり勝って、決勝トーナメントに行くこと。個人的な目標としては、東京五輪代表に1度でも呼んでもらえるように活躍して、そこで結果を残したい」

 韓国に渡って2シーズン目。21歳はこれからも、高みを目指して走り続ける。

取材◎小林康幸


This article is a sponsored article by
''.