12月28日、茨城県神栖市のサッカータウン波崎で開催されていた「第28回波崎ユースカップ」の全日程が終了した。大会最終日はカテゴリー1の準決勝と決勝が行われ、鹿島アントラーズユースが大会3連覇を達成した。

上写真=鹿島ユースが3連覇を達成。新チーム最初の大会で全勝を果たした(写真◎髙野徹)

準決勝2試合は接戦に

 全国各地から45チームが参加している第28回波崎ユースカップは12月25日に開幕し、28日に最終日を迎えた。大会はカテゴリー1からカテゴリー3に分かれて35分ハーフの試合を行い、各チームの主力が出場するカテゴリー1では、最終日に準決勝と決勝が行われた。

 準決勝は同時刻に開始し、矢田部サッカー場Aコートでは鹿島アントラーズユースと湘南工科大学附属高(神奈川)が顔を合わせた。スコアレスで折り返した後半18分にMF物井慈元のコーナーキックにDF元砂晏翔仁ウデンバが合わせて鹿島ユースが先制すると、後半29分にはMF滝澤周生が追加点。試合は2-0で鹿島ユースの勝利に終わったが、敗れた湘南工科大学附属も自陣からビルドアップして好機を作るなど、強豪相手に善戦を演じた。

 Bコートでは武南高(埼玉)と東京実業高(東京)が対戦し、前半に武南のMF小山一絆が2ゴール、東京実業のFWオビオラクリスティアンチノンソ龍が1ゴールと点の取り合いに。後半も一進一退の展開が続く中、武南はDF大久保航大が3点目を奪って引き離し、東京実業も後半32分の小野寺陽のゴールで再び1点差に詰め寄ったが一歩及ばず、武南が逃げ切りに成功した。

画像: 鹿島ユースが湘南工科大学附属高を下して決勝進出(写真◎髙野徹)

鹿島ユースが湘南工科大学附属高を下して決勝進出(写真◎髙野徹)

画像: 決勝点となる3点目を奪った武南のDF大久保航大(写真◎髙野徹)

決勝点となる3点目を奪った武南のDF大久保航大(写真◎髙野徹)

エースが3得点1アシスト

 約2時間のインターバルを挟んでキックオフを迎えた決勝は、今大会の頂点を決めるにふさわしい一戦となった。

 鹿島ユースはGK新垣祥大、DF熊澤結人、元砂晏翔仁ウデンバ、倉橋幸暉、福岡勇和、MF柿沼伶音、大貫琉偉、岩土そら、滝澤周生、FW土井空芽、吉田湊海が先発し、システムは伝統の4-4-2。MF柿沼とFW土井はジュニアユース所属ながら先発の座を勝ち取った。

 一方、武南のシステムは4-2-3-1。先発メンバーにはGK金昶銖、DF大久保航大、今平啓太、山﨑滉太、八百川尚輝、MF小川慈生、小山一絆、鞭馬小太朗、田中楓真、渡邉悠、FW岩澤柾吾が並んだ。

画像: 決勝に臨んだ鹿島ユースの先発メンバー(写真◎髙野徹)

決勝に臨んだ鹿島ユースの先発メンバー(写真◎髙野徹)

画像: 武南は登録メンバー全員で試合前に写真撮影(写真◎髙野徹)

武南は登録メンバー全員で試合前に写真撮影(写真◎髙野徹)

 試合は鹿島ユース有利と見られたが、先制したのは武南だった。前半8分、FW岩澤が相手DFと競り合いながらドリブルで切り込み、こぼれたボールに反応したMF小山が右足を一閃。インサイドでコースを突いたシュートがゴール右スミに吸い込まれた。

 出鼻をくじかれた鹿島ユースは失点直後、左SBに入っていたDF福岡を本職のボランチに戻し、レフティーのMF岩土が左SBへ。高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルにも出場したMF大貫、福岡のボランチコンビで中盤の強度を高め、徐々に押し返していくと、前半24分、エースのFW吉田がドリブルで持ち運んで右足シュートを突き刺し、同点に追いつく。

 吉田は前半33分にもU-17日本代表の実力を見せつける。ピッチ中央付近で受けたボールを左サイドのMF滝澤へ大きく展開し、そこからスペースへ走り込んでリターンパスを受けると、飛び出してきたGK金をかわして無人のゴールへシュート。圧倒的な個の力でスコアをひっくり返し、武南ベンチの内野慎一郎監督も思わず苦笑いを浮かべるしかない様子だった。

画像: 吉田湊海の2点目の場面。得点感覚が凝縮されたゴールだった(写真◎髙野徹)

吉田湊海の2点目の場面。得点感覚が凝縮されたゴールだった(写真◎髙野徹)

 前半のうちにリードを失った武南だったが、顔を下げなかった。後半、再びギアを入れ直して攻撃のスピードを上げると、立ち上がりの後半5分に同点弾を奪う。左サイドからの攻撃は一度カットされるも、素早い切り替えで即時奪回に成功し、岩澤が相手DFを1人かわしてシュートを蹴り込んだ。

 再び振り出しに戻り、以降は武南ペースの時間が続いた。しかし好守を連発した鹿島ユースのGK新垣の牙城を崩せなかった。特に圧巻のセーブだったのは後半12分。ショートコーナーを受けた小山がゴール左スミへ完璧なシュートを放ったが、新垣の両手がこれを阻んだ。

 すると今度は鹿島にチャンスが訪れる。後半18分、途中出場のMF物井からのパスを受けた吉田がペナルティーエリア内に侵入し、折り返したボールに物井が滑り込みながら足を合わせて3点目を奪う。直後の29分には、スルーパスに抜け出した吉田が左足でニアサイドを打ち抜き、リードを2点に広げた。

画像: 途中出場からゴールを奪った鹿島ユースのMF物井慈元(写真◎髙野徹)

途中出場からゴールを奪った鹿島ユースのMF物井慈元(写真◎髙野徹)

 試合はそのまま4-2で終了。決勝で3得点1アシストの活躍を見せた吉田の活躍もあり、鹿島ユースが大会3連覇を達成した。キャプテンマークを巻いてチームをけん引し、大会MVPに選ばれた大貫は「出る大会は全部優勝しないといけないと思っているので、3連覇できてホッとしています」としながらも、「本当はもっと圧倒したかったです。今年3冠(クラブユース選手権、Jユースカップ、プレミアリーグ)できたからといって、来年も優勝争いができるわけではないと思うので、一人ひとりがまたイチからスタートする気持ちが大事になる。新チームが始動したばかりなので、これからもっと練習していきます」と、新シーズンに向けて気を引き締めた。

 今年の高校年代日本一のチームである鹿島ユースを相手に、一方的に圧倒されることはなかった武南は、敗戦の中にも確かな手応えを得た様子。敢闘賞を受賞した小山は「今大会では得点の部分にこだわっていたので、決勝でも取れたのは自信になりました」と語り、内野監督も「ドリブルで剥がすことはできていたと思います。身体能力、切り替え、判断のスピードといったトップレベルの基準をこのタイミングで体感できたことはよかった」と大会を総括した。

 決勝を戦った両チームにとって、新チームで臨む最初の大会となった波崎ユースカップ。ほかの参加チームにとっても、ここで得た課題と収穫を胸に、それぞれの新シーズンがすでに動き出している。

優勝:鹿島アントラーズユース

画像: 優勝:鹿島アントラーズユース

準優勝:武南高校

画像: 準優勝:武南高校

MVP:大貫琉偉(鹿島アントラーズユース)

画像: MVP:大貫琉偉(鹿島アントラーズユース)

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