上写真=広島が狙いとする守備で主導権を握り、敵地でI神戸を下した(写真◎森田将義)
■2025年10月25日 WEリーグクラシエカップ・グループステージ第1節(@パナスタ:観衆1.009人)
I神戸 1-3 広島
得点:(神)井手ひなた
(広)中嶋淑乃、古賀花野2
「素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた」
2年連続でつかみ取ったカップウィナーの座を渡すわけにはいかない。MF小川愛が「3連覇が懸かっていて、いろいろなプレッシャーや緊張感がありますが、自分たちが今シーズン積み上げてきたものを試合の中でたくさん出したかった。あまり受け身にならず、全員で成長するために目の前の試合を戦うだけだと思っていた」と振り返った広島が、3連覇に向けて好スタートを切った。
目を引いたのはアグレッシブな守備だ。「チームの立ち上げから、前線からしっかりボールを奪おうと続けてきた。ボールを奪う目的は、やっぱりゴールを奪うため。じゃあ、できるだけ高い位置で奪った方がいいよねと、トレーニングの中で修正しながらやってきた。そこが前半からはまって、形として表れた」と赤井秀一監督が語ったように、この日は序盤から高い位置でのプレッシングを実践。こぼれたボールを小川やMF渡邊真衣が回収するだけでなく、抜け出そうとした相手にも粘り強く対応し、スキを与えない。
先制点も良い守備から生まれた。10分に中央から仕掛けたI神戸MF成宮唯のドリブルを、小川が体を張ってストップ。素早くMF伊藤めぐみに預けたボールを左に展開し、受けた中嶋がゴール前に入っていくと、左足で放ったシュートがゴールネットを揺らした。
一方、I神戸はWEリーグ前半戦を首位で折り返した持ち味が思うように発揮できない時間が続く。FW愛川陽菜は「中央に相手が多くいる状況で、自分たちもそこから崩そうとしていた。相手が中に集結していたので、サイドでボールを引き出したかったけどあまり、引き出せなかった」と反省を口にした。
サイドにボールが入れば、愛川やFW吉田莉胡がドリブルで打開できていたが、なかなかパスを受けることができない。中央へのボールもDF市瀬千里を中心とした広島の守備陣にはね返され、26分に吉田のパスからFW久保田真生が強引に突破して放ったシュートが、数少ないチャンスだった。
対照的に広島は後半立ち上がりの47分、ハーフタイムの交代で途中出場したばかりのFW古賀花野がゴール前に抜け出して追加点をマーク。2点差とされたI神戸は前半と同じように、自分たちのペースで試合を進めることができない。それでも宮本ともみ監督が「良いシーンをみんなで振り返った。同じ絵を描きながらつないでいこうと伝えた」と語ったように、徐々に主導権を握り、56分には左からゴール前に入ったボールのこぼれ球を吉田がシュート。59分にはエリア外左サイドで得たFKを成宮が直接狙ったが、得点とはならない。
我慢の時間が続いた広島は、62分に中嶋の左クロスを古賀が頭で合わせて3点目。その後も決定的なシュートを打たれる場面があったが、GK藤田七海が好セーブを披露し、無失点で試合を進める。後半アディショナルタイムにI神戸DF井手ひなたに決められ、完封勝利とはならなかったが、赤井監督が「リーグ戦上位のINAC神戸さんに対して、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた」と称える内容だった。
小川も「これまでの試合は前半を自分たちのペースで進めることができない試合が多かった。ただ、今日の試合は守備がはまっていたし、自分たちで前から行くことができていたので、ボールを奪ってからの良い攻撃につながったと思っています。大事なのは、こうした試合をずっと続けてやっていくことだと思う」と納得の表情。広島にとって大きな自信につながる試合となったのは間違いない。
取材・写真◎森田将義

