上写真=初タイトルに喜びを爆発させる慶応理工A。1・2年生だけのチームでの快挙となった(写真◎高野徹)
どちらが勝ってもおかしくない決勝
サッカーマガジンカップ(通称:マガ杯)は1982年に第1回が開催された歴史ある大会で、今年で42回大会を迎えた。近年は大学の準体育会、同好会、サークルの「日本一」を決める大会と位置付けられ、昨年の41回大会では、中央大学サッカー同好会が参加64チームの頂点に立っている。今年は66チームが参加し、5日間の長丁場で参加チームの全順位が決まる。
大会最終日となる5日目、参加した全66チームが最後の1試合を戦った。決勝トーナメントの決勝に先駆けて行なわれた3位決定戦の同志社大学四ツ葉キッカーズ対東北学院大学Liberoは、同志社四ツ葉が前半に先制点を奪われるも、後半に追いつき勝負はPK戦へ。そのPK戦では準々決勝でも活躍した守護神がまたもPKストップし、同志社四ツ葉が勝利した。
13時からは、いよいよ参加66チームの頂点を決める決勝。菅平高原が誇るメイングラウンド、アンダーアーマー菅平サニアパークの天然芝ピッチで行なわれた。
栄えあるファイナリストは、慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A(慶応理工A)と、中央大学 MAPLE A(中央MAPLE A)。どちらが勝っても初優勝という新鮮な顔ぶれであり、それだけに初タイトルを懸けた情熱のぶつかり合いとなった。
どんなレベルの大会でも、決勝という舞台では「絶対に失点はしたくない」という気持ちがピッチにも現れやすいもの。この日の決勝もまさに固い試合展開となった。どちらのチームも守備の寄せが速く、中盤でのボール奪取の攻防は目まぐるしいもの。慶応理工Aの中盤で、攻守に馬車馬のように駆け回った星拓希が「とにかく良い守備から入ろう、絶対に失点0で行こうとチームで共有していた」という通り、ピッチに立つ全員が集中し、かつ足が止まることがないため、お互いチャンスらしいチャンスすら生まれない展開で時計の針が進んでいった。
0-0のまま前後半を終え、10分ハーフの延長戦に入る。5日間の大会で疲労はピークに達しているはずだが、それでも足は止まらない。互いにセットプレーから辛うじてシュートチャンスを得るも、ネットを揺らすことはできずに延長合わせて80分間の試合を終える笛が鳴った。
そして迎えたPK戦。先攻の慶応理工Aの2人目のシュートが枠をとらえず失敗。後攻の中央MAPLE Aは4人目まで全て成功させ、最後の5人目が決めれば優勝が決まるシーンで、慶応理工AのGK岩崎和也が起死回生のストップ。土壇場でイーブンに戻した。サドンデスに入った1人目、慶応理工Aは冷静に決めると、中央MAPLE Aのシュートはゴール左ポストに弾かれ、その瞬間、長い長いマガ杯に終止符が打たれた。慶応理工Aの歓喜の雄叫びがピッチに響き渡った。
献身続けたチームへのご褒美
延長戦も含め0-0のPK戦。有体に言えば、どちらに勝利が転がり込んでもおかしくなかった。そんな拮抗した試合で勝敗を分けたのは何だったのか。慶応理工Aを率いた星はこう振り返る。
「ピッチに立つ11人だけじゃなく、チーム全員で戦えたこと。例えば自分も延長でベンチに下がったけど、その後もピッチの選手を大声で鼓舞したり、水出しの準備をしたり。そうやってベンチもマネージャーも、周りの応援も、チームが勝つために自分に何ができるか、今何をすべきかを考えるチームでした。優勝は、そんなチームへのご褒美だったんじゃないかと思います」
結果的に敗れた中央MAPLE Aを率いた岡田佳也は「エースとして、キャプテンとして、自分に力が足りなかった」と己を責めつつ、勝敗を分けたエピソードを明かした。
「延長の途中、自分が足首を痛めてしまって…。本来はPKの5人目のキッカーをする予定だったんですけど、ケガのこともあったので、信頼できる後輩にキッカーを譲ったんです。止められた後輩は何も悪くない。もし自分が蹴っていたらと思うと…。それも含めて自分の責任です。この悔しさは、きっと来年、後輩たちが晴らしてくれると信じています」
実力が拮抗したチーム同士の戦いで、何が勝負を分けるかは誰にも分からない。第42回サッカーマガジンカップ・オープン大会2024は、最後まで仲間を信じ、己を信じ切った慶応理工Aの初優勝で幕を閉じた。同時にまた、どのチームにとっても、来年のマガ杯への舞台が開幕した瞬間でもある。
大会最終結果
優勝 慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A
準優勝 中央大学MAPLE A
3位 同志社大学四ツ葉キッカーズ
4位 東北学院大学Libero
5位 中央大学サッカー同好会
6位 青山学院大学理工サッカー部
7位 中央大学体同連フースバルクラブ B
8位 中央大学MAPLE C
9位 早稲田大学HUMAN FC A
10位 早稲田大学理工サッカー部 A
11位 早稲田大学理工サッカー部 B
12位 中央大学サッカー同好会マイムマイム
13位 明治大学Groovykids A
14位 中央大学MAPLE B
15位 早稲田大学荒友キッカーズ A
16位 中央大学サッカー同好会56期
17位 早稲田大学稲穂キッカーズ A
18位 指定蹴球共同組合Hechimers
19位 法政大学工体連サッカー部 A
20位 明治大学生田サッカー部蹴友会 B
21位 同志社大学三ツ葉キッカーズ A
22位 明治体同連三田村支部
23位 中央大学体同連フースバルクラブ A
24位 明治大学生田サッカー部蹴友会 A
25位 早稲田大学FC GUSTA A
26位 明治学院大学白金FC
27位 早稲田大学稲穂キッカーズ B
28位 早稲田大学HUMAN FC B
29位 立教大学サッカー愛好会 A
30位 慶應義塾大学Vermüle
31位 明治大学Groovykids B
32位 立教大学FC立教 B
33位 法政大学学団連サッカー部
34位 所沢麦乳愛好会
35位 慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部D
36位 早稲田大学FC GUSTA B
37位 慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部B
38位 早稲田大学理工サッカー部 D
39位 立教大学サッカー愛好会 B
40位 早稲田大学理工サッカー部 C
41位 中央大学体同連フースバルクラブC
42位 明治大学体同連サッカー部 A
43位 青山学院大学理工サッカー部 B
44位 法政大学工体連サッカー部 B
45位 慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部C
46位 慶應義塾大学慶應キッカーズ A
47位 立教大学FC立教 A
48位 上智大学サッカー愛好会イーグルA
49位 矢上ユナイテッド
50位 早稲田大学稲穂キッカーズ D
51位 中央大学サッカー同好会プリンス
52位 明治大学生田サッカー部蹴友会C
53位 同志社大学三ツ葉キッカーズ B
54位 早稲田大学荒友キッカーズ B
55位 早稲田大学FC GUSTA C
56位 立教大学サッカー愛好会 C
57位 中央大学体同連フースバルクラブD
58位 早稲田大学HUMAN FC C
59位 早稲田大学親友キッカーズ
60位 明治大学体同連サッカー部 B
61位 早稲田大学稲穂キッカーズ C
62位 明治大学生田サッカー部蹴友会D
63位 法政大学工体連サッカー部 C
64位 慶應義塾大学慶應キッカーズ B
65位 青山学院大学理工サッカー部 C
66位 上智大学サッカー愛好会イーグルB
★個人表彰
MVP
佐野 大知 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
得点王
小松 光 (東北学院大学Libero)
新人賞
渡邉 和 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
【大会優秀選手(18名)】
1.山本 皓大 (中央大学MAPLE A)
2.星 拓希 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
3.小柳 涼 (早稲田大学理工サッカー部A)
4.牧野 遥太 (中央大学MAPLE A)
5.佐藤 春樹 (東北学院大学Libero)
6.佐藤 陽大 (中央大学サッカー同好会)
7.佐野 大知 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
8.小亀 将治 (同志社大学四ツ葉キッカーズ)
9.関 総一朗 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
10.網中 智哉 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
11.豊倉 博人 (早稲田大学HUMAN FC A)
12.窪田 有真 (同志社大学四ツ葉キッカーズ)
13.小松 光 (東北学院大学Libero)
14.菅原 律希 (東北学院大学Libero)
15.松原 颯也 (同志社大学四ツ葉キッカーズ)
16.石原 悠人 (青山学院大学理工サッカー部A)
17.赤坂 爽也人 (早稲田大学FC GUSTA A)
18.岡田 佳也 (中央大学MAPLE A)
【1年優秀選手】
1.岩崎 和也 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
2.南雲 結人 (中央大学サッカー同好会)
3.白田 結人 (中央大学MAPLE A)
4.市野沢 大成 (明治大学Groovykids A)
5.新村 温也 (早稲田大学理工サッカー部A)
6.西山 礼央 (早稲田大学理工サッカー部A)
7.対馬 輝 (中央大学体同連フースバルクラブA)
8.佐々木 映太 (中央大学MAPLE A)
9.アピッチ大翔 (明治大学生田サッカー部蹴友会A)
10.渡邉 和 (慶應義塾大学理工学部体育会サッカー部A)
11.菅井 友喜 (早稲田大学FC GUSTA A)