日本サッカー協会(JFA)は3月23日、宮本恒靖専務理事が会長に就任したことを発表した。選手、監督としてJリーグを戦い、ワールドカップに出場した経験のある初めての会長の誕生だ。47歳の若さで日本サッカー界のトップに立ち、その発展の先頭に立って語った言葉をお伝えする。

上写真=田嶋幸三前会長(右)からバトンを受けた宮本恒靖会長(左)が日本サッカー界を引っ張っていく(写真◎サッカーマガジン)

3つの大きな目標

「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する」

 日本サッカー協会が掲げる理念だ。宮本恒靖会長はこれを実現させるために、全身全霊を尽くしていくことになる。

 昨年12月24日の臨時評議員会で「会長予定者」として信任されて会長に「内定」していた宮本氏は、この日、同じく新しく選任された理事による互選を経て正式に会長に就任した。

 3月23日の就任会見は、モニターに資料を投影しながら報道陣に立ったまま語りかけるプレゼンテーションスタイル。立候補にあたって立てたマニフェストの中から、会見では主に3つについて解説した。

画像: 会見はプレゼンテーションスタイルで(写真◎サッカーマガジン)

会見はプレゼンテーションスタイルで(写真◎サッカーマガジン)

・競技面での成果
・女子サッカーの拡大
・商業価値を高める

 競技面については、日本代表がワールドカップで過去最高の順位を達成することを掲げた。「ベスト16という壁を越えてベスト8、さらにその先に行けるように、選手たち、チームは大きな野望を持っていまやっています。そこをしっかりサポートしていく」

 なでしこジャパンについても、再び世界一になることを挙げた。ここに結びつく形で、女子サッカーの拡大を目指して、2031年の女子ワールドカップを招致することを目標にした。WEリーグ、なでしこリーグの地位向上もここに含まれる。

 そして、商業価値を高める目標については「公益財団法人が儲けてはいけないという空気もありますが、そうではなくて、収益を上げたものを再投資して社会や国民、地域に還元していくことで国民生活を豊かにしていくことが大事」と発想の転換を強調する。2023年の決算は299.2億円と発表され、さらなる収入増、パートナー企業と新たな価値を共創すること、サッカーを通じて社会の課題を解決することで、実現させたい意欲を示した。

新会長の「ワクワク」

 田嶋幸三前会長からは「ミスを恐れずに、自分らしくやってほしい」とエールを受けた。その田嶋前会長も8年の在任期間において、周囲のサポートに深く感謝しながらも「最後は孤独に決断しなければならなかった」と吐露した。今度は宮本会長がその厳しさを味わうことになる。ガンバ大阪や日本代表でキャプテンを務めてきた経験を生かして、新しいリーダーはどう立ち向かっていくのか。

「その決断の重みというものは、会長として仕事をこなしていく中で初めて理解できるものだという風に思います。例えば監督の立場で決断する際には、チームが勝つためのところからの逆算でした。では、会長という立場としては、どちらが社会のために良くなるのか、そんなものをこれから自分の中で見つけていかなければならない」

 公開されているマニフェストの中では、岡田武史副会長と対談していて、「みんながワクワクするようなJFAにしてくださいよ」と注文がついた。改めて、正式に会長という立場に就任したいま、その「ワクワク」をどんな形でサッカーファミリーに伝えていくつもりだろうか。

「ワールドカップを日本で開催しましょう、というときに、そこへの取り組みや、みんなを巻き込んでいくというのは2002年以降、なかなかなかったようなところだと思います。経済状況などいろいろありますが、そういうものをみんなで語ってやっていけたらと思っています」

 その一つの発露が、2031年の女子ワールドカップ招致ということになる。さらには、2005年に日本協会が発表した「JFA2005年宣言」の中にある「2050年にワールドカップを日本で開催し、日本代表が優勝チームになる」という「JFAの約束」に向けて、引き継いだものを失わずにさらに積み上げていくことが、新会長の仕事になる。

「熱狂がいつも近くにあるような、社会を元気にすることをこれからも目指していきたい」

 カタール・ワールドカップでドイツやスペインを破って味わった興奮を、何度も味わえるように。究極の目標はそこになる。

「これは一人ではできません。いろいろな人を巻き込んでいきたい」

 サッカーファミリーすべての人が、そこに当てはまるだろう。

◎Profile
日本サッカー協会第15代会長
宮本恒靖(みやもと・つねやす)

1977年2月7日生まれ、大阪府出身
●選手歴/ガンバ大阪ユース(92〜95年)-ガンバ大阪(95〜06年)-レッドブル・ザルツブルク(オーストリア/07〜09年)-ヴィッセル神戸(09〜11年)
●主な代表歴/93年U-17日本代表(U-17世界選手権 ベスト8)、97年U-20日本代表(ワールドユース選手権 ベスト 8)、00年U-23日本代表(シドニー・オリンピック ベスト16)、00〜06年日本代表(日韓ワールドカップ ベスト 16、中国アジアカップ 優勝、ドイツ・ワールドカップ 出場)
●主な出場記録/ J1通算337試合出場8得点、国際A マッチ通算71試合出場3得点
●指導歴/ガンバ大阪ジュニアユース U-13 コーチ(15年2月〜12月)-ガンバ大阪ユース監督(16年2月〜12月)-ガンバ大阪 U-23 監督(17年2月〜18年7月)-ガンバ大阪監督(18年7月〜21年5月)
●その他/同志社大学経済学部卒業、FIFAマスター修士課程修了、公益財団法人日本サッカー協会専務理事


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