上写真=矢形(11番)のホーム初得点を喜ぶC大阪の選手たち。ヨドコウ桜スタジアムには3000人近い観客が集まった(写真◎森田将義)
「一番アウェーだと感じた」
「初めてあんなに見に来てくださった。一体となっていたので、すごくテンションが上がって、空回りしないように気を付けていました。(声援は)めちゃくちゃ力になりますね。良いプレーをしたらコールをしてくれるので、やる気が出ます」
DF筒井梨香は試合後、記念すべき一戦をこう振り返った。18時からヨドコウ桜スタジアムで行なわれたグループステージ第2節は、C大阪にとってWEリーグ参入後初めての公式戦ホームゲーム。チームの船出を見守ろうと、2989人の観客が詰めかけた。
時折プレーに硬さも見られたが、熱い声援を受けたチームは7分に高い位置でのボール奪取から、MF百濃実結香がシュートを放つなど果敢にゴールへと迫った。36分には前線からのプレッシングで相手のビルドアップのミスを誘発。ボールを奪ったFW矢形海優がGKをかわしてネットを揺らし、ホーム初得点を決めて先制した。
追いかける展開を強いられたS広島Rだが、40分に中盤からのパスを受けたMF中嶋淑乃が左サイドを突破。MF瀧澤千聖を経由し、ゴール前に入ったボールをMF小川愛が決めて同点とした。
後半に入ると、前半は思いどおりにいかなかった守備を修正。「監督から『中盤が重たくならないように』と指示があったので、後ろから声をかけてボールに行くようにした」と振り返るのはDF近賀ゆかりで、良い守備から攻撃につなげるシーンを作り始める。53分には左サイドの高い位置で相手のバックパスに反応した中嶋が、ボールを奪ってドリブルで前進。エリア内に入ったタイミングでファーサイドに右足シュートを蹴り込み、逆転に成功した。
終盤は同点ゴールを狙ったC大阪に崩される場面もありながら、DF市瀬千里ら守備陣が体を張った守備で防ぐ。試合終了間際には筒井のロングフィードから、DF小山史乃観に決定的なシュートを打たれたものの、クロスバーに当たって難を逃れ、直後にタイムアップとなった。
2-1で勝利したS広島Rは、これでグループステージ開幕2連勝。中村伸監督は「完全に崩されても最後、本気でGKがゴールを守っている。最後の最後までGKをサポートしてあげようと表現してくれて、今日は2失点目、3失点目を防げた。我々がトライしている形は多くなかったですが、こういうゲームでも勝ち切れると示せた。今後につながるゲームでした」と収穫を口にした。
C大阪は、多くの観客が見守る中で先制点を奪いながらも悔やまれる結果となり、グループステージ1勝1敗に。鳥居塚伸人監督は「奪った後のつながりがなかったために(ボールを)ロストした。奪った後の精度が低いのと、勇気がなくプレーが遅れた結果、失う場面が多かったので、課題を克服して次節に挑みたい」と反省点を口にした。
とはいえ、3000人近い観客が集まったホームゲームの雰囲気は素晴らしく、大きなインパクトがあった。「WEリーグが始まって3シーズン目ですが、(これまでで)一番アウェーだと感じたし、逆に、ちょっとうれしくなりましたね。こういうのがスタンダードになっていくといいなと感じました」とコメントしたのは、海外でのプレーを含めて経験豊富なS広島Rの近賀。C大阪のWEリーグ参入は、日本の女子サッカー界に新たな文化を生むかもしれない。
取材・写真◎森田将義