上写真＝悲願の初優勝を目指す大津の田原（右）と、清水に加入する森重（写真◎森田将義〈田原〉、川端暁彦〈森重〉）
［記者プロフィール］
川端暁彦（かわばた・あきひこ）／『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。
森田将義（もりた・まさよし）／テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。
※サッカーマガジン2023年2月号掲載の記事を再構成
前編はこちら！
https://soccermagazine.jp/_ct/17596065
田原ほか好選手がそろう大津、森重は『DFW』で注目
――Jクラブに加入しない選手でも、注目株は多いです。
森田 大津（熊本）のMF田原瑠衣（たばる・るい）の名前は挙げておきたいです。以前は、やんちゃでムラのあるタイプでした。名願と同じで、ボールを持っているとき以外に課題がありましたが、前回の選手権から守備をしっかりやるようになり、今年度はボールを奪い切れるようになっています。
川端 大津はサイドの選手層が厚いので、先発から控えへの交代で、しかもタイプが違う選手を起用できますよね。交代枠が5人になった時代に、かなり大きな強みだと思っています。
森田 だから田原もバテるまで全力でプレーして、スイッチできますよね。サイドのMFは右に田原、左に中馬颯太（ちゅうまん・そうた）がいて、岩﨑大翔（いわさき・ひろと）、香山太良（かやま・たいら）もいる。FWも小林俊瑛（こばやし・しゅんえい）がいて、山下基成（やました・もとなり）も良い選手ですから、メンバーがそろっていますよ。
川端 守備も、平岡和徳総監督は「4バックが良くなった」と言っています。右から坂本翼（さかもと・つばさ）、野田翔升（のだ・かける）、碇明日麻（いかり・あすま）、田辺幸久（たなべ・よしひさ）。左SBの田辺は良い選手ですよ。左足のキックというすごい武器がありますから。
――そのほかの注目選手は。
川端 清水に加入する日大藤沢（神奈川）のFW森重陽介（もりしげ・ようすけ）は外せません。198センチの長身で、FWとDFでプレーしている点も注目ポイントです。登録ポジションがどちらになるかは分かりませんが、闘莉王みたいにDFWでいいんじゃないですか（笑）。
森田 本人も両方でプレーしたがっていますよね。
川端 練習からFWとCBでプレーしていて、本人も直前までどちらで起用されるか分からないそうです。試合中も、FWでゴールを決めてからCBに移ったり、CBで先発して、点が取れないとFWに移ったり。
森田 ２年と３年の夏に見ましたが、もともと大型なのにアジリティーがあったところから、さらに強化して、しなやかに動けるようになっている。CBでボールを運ぶこともできるし、すごく可能性を感じます。
川端 最終ラインからの展開力があって、本人も「僕の売りはロングフィードです」と言っています。将来的にはCBでプレーすることになるのでは。
――インターハイで優勝している前橋育英（群馬）は、夏冬２冠を目指して選手権に臨みます。
川端 MF徳永涼（とくなが・りょう）は、しっかりしたキャプテンですよ。すごく大人の選手で、ピッチ内外でいろいろなところが見えている。プレーでは守備が良くて、ボールを奪えるし、危ないエリアにしっかり帰ります。前橋育英のような攻撃型のチームにとっては、すごく重要な選手です。
森田 昨年のプレミアリーグプレーオフで退場してしまったのですが、試合後は報道陣にきちんと対応して、冷静に分析している姿が印象に残っています。今年度のキャプテンを任されるだけのことはありますね。
――インターハイの上位校では、ベスト４だった昌平（埼玉）にＪクラブ加入内定選手が２人います。
川端 MF荒井悠汰（あらい・ゆうた）はFC東京への加入が内定していて、今季すでに特別指定選手としてルヴァンカップに出場しています。下部組織のFC LAVIDAから昌平に進んで成長してきましたが、藤島崇之監督も言うように、力強いドリブル、当たられても倒れない強さなど、昌平っぽくない個性を持っています。
DF津久井佳祐（つくい・けいすけ）は、うまさがあるCBで、鹿島に加入します。うまさは昌平らしいのですが、ゴール前で粘れる、最後の危ないところに顔を出して止める、というCBのベースがあるところが、従来の昌平の選手とは違う個性です。その上で、ビルドアップで特徴を出せるところが評価されている。鹿島の椎本邦一スカウトは「羽田憲司のような選手」と言っていました。
森田 荒井はインターハイで見せていたプレーは、『ゴリゴリ』という表現が一番しっくりする感じ。ただ、違いは見せていましたがゴールが少なくて（5試合2得点）悔しがっている姿が印象的でした。そのぶん選手権でやってくれるじゃないかな、という気がしています。
川端 柏に加入するFWオウイエ・ウイリアム（日体大柏＝千葉）も注目ですね。千葉で市立船橋と流通経済大柏を抑えて全国へ、という挑戦を続けてきて、ついに結果を出したチームの得点源です。190センチの大型ストライカーで川崎Fのアカデミー育ちですが、当時はDFやMFでプレーしていました。
森田 FWになったのは2022年の1月ですから、1年もたたずにプロに行くことになりますね。
川端 パワー系の選手に見えますが、プレーに幅があるんですよ。FWの経験が浅いんだな、というプレーをすることも、たまにありますけど。
森田 サイズとスピードが目立ちますが、本人はキックに自信があるそうです。しなやかで質が高い。リーチも長いですね。
――関西では、どうですか。
森田 C大阪に加入する東山（京都）のMF阪田澪哉（さかた・れいや）に注目です。今年は年代別代表の活動やC大阪への練習参加で忙しく、肉体的にもメンタル的にもバテていて、夏までは良くなかったんです。でも選手権が近づいてきたら、ようやく持ち味のスピードを生かした突破が戻ってきました。
川端 阪田の速さは魅力ですよね。一見の価値があります。
※後編に続く
