上写真=ジャンピングボレーで先制点をスコアしたテオ・エルナンデス(写真◎Getty Images)
■2022年12月14日 カタールW杯 準決勝(アルベイト)
フランス 2-0 モロッコ
得点者:(フ)テオ・エルナンデス、ランダル・コロムアニ
破壊的な攻撃対堅い守備の対戦
支配する側だったフランスと支配される側だったモロッコが相まみえた準決勝。歴史的な背景からも注目された一戦は、フランスが王者の強さを見せつけたーー。
スタジアムは9割近くをモロッコサポーターが埋めた。決勝トーナメントに入り、同じく歴史的に因縁のある相手、スペイン、ポルトガルを撃破。5試合で1失点で、その1失点もオウンゴール。ケガ人を複数かえる中でも堅い守りを武器にしぶとく勝ち上がり、サポーターの期待は最高潮に高まっていた。
対するフランスは前回王者らしく、盤石の戦いぶりで階段を一つひとつのぼってきた。準々決勝のイングランドとの試合は先行しながら一度、PKを与えて追いつかれたが、再度突き放している。ゲームの流れをスパッと断ち切る攻撃力はさすがのひと言。イングランド戦は相手のミスに助けられた面もあったにせよ、勝負強さはやはり際立っていた。5試合11得点の破壊力は、本物だ。
モロッコは開始から5-4-1システムでブロックを組み上げ、フランスの攻撃力に対抗していく。そしてボールを奪うや攻撃に転じた。そのスタイルは徹底されていたが、機に臨み、一気に敵陣に攻め入るのはフランスも得意とするところ。ある程度、モロッコに持たせてビルドアップを遮断し、お手本のようなカウンターを繰り出した。
目まぐるしく攻守が入れ替わるテンポの速い展開の中で、最初にネットを揺らしたのは攻撃力でまさるフランスだった。
ヴァランのスルーパスをボックス手前で受けたグリーズマンがそのまま前進してクロスを供給。ゴール前にはモロッコ守備陣の人数がそろっていたものの、混戦となりボールがボックス左にこぼれると、そこにはテオ・エルナンデスが待っていた。GKボノにコースを塞がれるも瞬時に体勢を整え、ジャンピングボレーで右脇を抜く。フランスに先制点をもたらした(5分)。
追いかける立場になったモロッコは21分に5バックの中央に入っていたCBサイスが負傷でMFアマラーと交代。以降は最終ラインを4枚に変更し、4-1-4-1(4-5-1)でゴールを目指すことになる。
後半開始直後からはモロッコはサイドを何度も攻略し、クロスからゴールを狙う。特に右サイドを何度も突破したが、フランスも中央は固く、ジルーに代えてテュラムを投入し、フランスにとっての左サイドを『手当て』してからは守備が安定した。
すると79分、テュラム、エムバペとつないでボックス内に進入すると、エムバペのシュートはDFに当たったものの、こぼれ球にコロムアニが詰めてフランスが追加点。モロッコを突き放すことに成功した。
モロッコも最後まで攻めの姿勢を示し、サポーターとともに戦ったが、持たせて仕留める王者フランスのしたたかさ、強さが際立つ一戦となった。
これでフランスは連覇に王手をかけた。イタリア、ブラジルに続く史上3チーム目の偉業を達成する権利を得た。決勝は12月18日、アルゼンチンと『3度目の優勝』をかけて対戦する。
取材◎佐藤 景