上写真=アルバレスの得点を祝福するメッシ(写真◎Getty Images)
■2022年12月13日 カタールW杯 準決勝(ルサイル)
アルゼンチン 3-0 クロアチア
得点者:(ア)リオネル・メッシ、フリアン・アルバレス2
アルバレスが2G、メッシは1G1A
アルゼンチンの選手たちは、クロアチアに対して、そしてモドリッチに対して怖れるところがまったくなかった。リスペクトをしていたかもしれないが、少なくともピッチ上では獰猛な戦士となって相手に襲い掛かった。
たとえばラウンド16で戦った日本の選手たちは世界トップクラスのプレーメーカー、モドリッチに対して『やられないこと』を選択していたように映った。当たりにいってもスッとかわされる危険があるからそれも当然で、多くのチームがモドリッチ対策に苦労する。
ブラジルのカゼミロやミリトンは同じレアル・マドリードでプレーしており、日々、モドリッチの凄さを体感している選手だ。そのためか激しくチャージする場面はなく、少々リスペクトが過ぎる印象も受けた。
相手に畏怖の念を抱かせるモドリッチという選手がそれだけすごいレベルにあるということだが、この日のアルゼンチンの選手たちにはまったくそれがなかった。
自チームにそれ以上に畏怖の念を抱く選手がいるからかもしれない。
メッシである。
そのメッシがこの日はチームのためにボールをキープし、要所で走り、体を張って戦い、ピッチ上で何度も違いを生み出した。同じチームに世界最高峰の選手がいる選手たちが相手を怖れるわけもない。
そして、その畏怖すべきチームメイトを、試合のたびに『仲間』としてきたのが、今回のアルゼンチンではないか。メッシのお膳立て役になりがちだった若き選手たちが自立し、自信をつけていった。
前半34分、アルゼンチンの先制点が生まれる。中盤でボールを回収したフェルナンデスが縦パスを送ると、抜け出したアルバレスが先に触るが、前に出てきた相手GKリバコビッチに倒され、PKを獲得した。
これをメッシは右上に蹴り込んで1点リードを奪う。相手GKはここまでPK戦で勝負強さを発揮していたリバコビッチだったが、メッシはコースを読まれても決まるであろう強く速いボールで先制ゴールを記録した。
次の1点もアルゼンチンがものにした。相手CKの盤面で見事な速攻を決める。相手の攻撃をはじき返しすと、メッシらがつぶれながらボールをつなぎ、ハーフウェーライン付近でボールを受け取ったアルバレスがパワフルなドリブルで中央を突破。そのまま持ち込んでシュートを決めた。
一連の過程ではメッシの献身も光ったが、後半、さらに助演を買って出る姿を見せる。69分、右サイドでボールを受け取ったメッシはマークに付くCBグバルディオルを切り返しと緩急自在のドリブルでかわし、ボックス内に進入。正面で待つアルバレスのマイナスのクロスを供給し、完璧なお膳立てをした。
試合はそのまま3ー0で決着。メッシのためのチームではない、メッシとともにあるのが今回のアルゼンチンだ。全員が助演も主演も演じてみせる。
そのことを証明したアルゼンチンが2014年以来、6度目となる決勝進出を決めた。彼らが狙うのはもちろん、メッシとともに3度目の優勝である。
取材◎佐藤景