11月20日の最終節で、JFL(日本フットボールリーグ)に入会して4年目のシーズンを終えたFC神楽しまね。夏以降に選手・スタッフへの給与未払いが続き、経営危機を抱えたままオフに突入した。加入2年目のFW遊馬将也(ゆうま・まさや)も苦悩の時期を過ごし、将来への葛藤を抱えている。

クラブの先行きは不透明

 神楽しまねはリーグ戦が再開した第19節以降、勝ち点を伸ばして降格圏を脱出。選手・スタッフは奮闘していたものの、クラブの経営危機は変わらず、8月25日、9月25日、10月25日にも給与は支払われなかった。

 11月20日の最終節(第30節)、神楽しまねはホームで鈴鹿ポイントゲッターズと対戦。鈴鹿のFWカズ(三浦知良)への期待もあり、会場の松江市営陸上競技場にはクラブのホーム史上最多となる3644人の観客が詰めかけた。

 控えスタートとなった遊馬は、3-0とリードして迎えた72分から交代出場。前線からの守備で献身的にボールを追い、得点機をうかがった。試合終了間際にはエリア外左から右足でミドルシュートを放ったが、クロスバーに当たって惜しくも決まらず。それでも神楽しまねは3-0で4試合ぶりの勝利を飾り、12位でシーズンを終えた。

「あのシュートを決めていれば、良い形でシーズンを終われたと思いますが、勝てたことが一番。ファン・サポーターの皆さんも笑って終わることができて、苦しいシーズンでしたが、よかったです」

 遊馬は試合後、安堵したような表情で振り返った。試合後のセレモニーの間、メインスタンドに多くの人々が集まっている様子を見て「たくさんの温かい人たちに応援してもらえたんだと思うと、感情的になって、涙が出そうだった」という。

 神楽しまねは、奈良クラブを契約満了になったときにチャンスを与えてくれたクラブ。実信監督にはFWだけでなく2列目でも起用され、プレーの幅が広がった実感がある。「監督の親しみやすさで、いろいろなことを教えてもらいました。勝負の世界なので、もちろん勝つためにプレーするのですが、サッカーを楽しむことの大切さを植え付けてもらったと感じています」とも語り、メンタル面も成長している手応えをつかんだ。

 恩義を感じている神楽しまねで成長を続け、Jリーグ参入を目指すクラブに貢献したい思いはある。ただ神楽しまねは現在、来季のリーグ参加に向けて経営再建策をJFLに提示している段階。12月6日に残留の可否を判断する理事会が開かれるが、先行きは不透明だ。すでに3カ月以上、未払いの給与がどうなるのかも決まっていない。

「チームメイトや実信監督、スタッフに本当に感謝していますが、来季も契約してくれと言われたら正直、考えてしまうと思います。クラブの力になりたいですけど…」

 給与未払いに端を発した苦悩の日々と、それに続く葛藤。未来が見えない中で、遊馬には一つだけ決めていることがある。

「サッカーは続けます。上を目指すこと、うまくなることを毎年毎年、毎日毎日、大事にしてやってきましたから」

取材・写真◎石倉利英


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