上写真=馬場晴也(右)は韓国戦で輝いた鈴木唯人とともにこの充実の表情(写真◎AFC)
「あいつなら決めてくれるだろう」
馬場晴也には大きな魅力がいくつもあって、まずはもちろん、センターバックとしてのハードな守備。
U-21日本代表が2つ年上の世代となるU-23韓国代表を寄せつけず、3-0で完勝を奪った準々決勝。馬場は豪快な守備でクリーンシート達成の中心になった。特に後半は日本の右サイドから鋭いクロスを何度も放り込まれたが、冷静にはね返した。
「サイドからスピードのある選手が来たので、(半田)陸のカバーを自分が行くのか、それともボランチに行かせて自分はクロスに対応するのか、前半もやられていたので後半はより話し合いました。ピンチは作られたけれど、最低限、ゼロで抑えられたので良かったです」
本人としては満足の守備ではなかったようだが、それでも危なげなかった。センターバックのパートナーのチェイス・アンリ、GK鈴木彩艶の中央の3人がとにかく堅かった。
「まだまだやれると思いますけど、相手にもいい選手がいる中でゼロで抑えられたのは自信になりますし、次につながると思います」
少し難しかったのは、開始間もない13分にチェイス・アンリがイエローカードをもらってしまったこと。「でも、気にせずそのまま強気でいってくれ、オレがカバーするから、と声をかけましたし、チーム全体にも、イエローを1枚もらったので、カウンターをつぶすのは他の選手にやってほしいと話しました」とすかさずチームに共通意識を持たせる行動に出たのは、さすがのキャプテンシーだった。
攻撃も魅力だ。馬場の今大会初出場となったグループステージ第3戦のタジキスタン戦では、11分に先制ゴールをアシストしている。左CKのこぼれ球を右に振って、松木玖生の豪快ボレーを引き出した。
「まずは頭で合わせるイメージで入りましたけど、思った以上にボールがニアに入ったので、セカンドボールを予測していたらちょうどボールが来てくれました。トラップがうまくいけば自分で打とうと思ったんですけどちょっとずれてしまって、玖生が大声で何度も呼んでいたので、あいつなら決めてくれるだろうという感じでパスを出しました」
右足アウトサイドに優しく乗せて届けるようなパスだった。
韓国戦では19分に自陣からロングパスを右前に送り、細谷真大にぴたりと合わせてシュートまで導いている。
「ロングパスは自信もありますし、真大はスピードのある選手ですから。それに相手のディフェンスラインの足が揃っている印象があったので、一本入れようと思ったんです。思ったより感触が良くて、いいパスになったかなと思います」
自らも納得の一本だったが、味方のアクションはもちろん、相手を見て長距離のパスでチャンスを作ることができるようになった。「相手の体の向きや状態を見て出せるようになっている」と成長を実感するポイントだ。
韓国戦では最後尾からのビルドアップが安定したことも、自分たちのペースで試合を運べた要因だった。なにより、ボランチに並んだ山本理仁、藤田譲瑠チマとは東京ヴェルディのアカデミーからともに育ってきた仲だ。
「あの2人はもう全部特徴がわかっているので、何も言わなくても、いてほしいところにいてくれる印象です」
永遠のライバルへの完勝劇を演じたにもかかわらず、選手たちは大喜びしなかった。理由はもちろんある。
「僕たちは優勝を目指しているので、優勝してみんなで喜べればいいと思います」
そのときまで、あと2つ。