FIFA(国際サッカー連盟)は5月19日、カタール・ワールドカップに参加するマッチ・オフィシャル(レフェリー)のリストを発表した。日本からは山下良美国際審判員が選ばれ、ワールドカップ史上初の女性審判員の一人となった。一夜明けた20日、山下主審が喜びを語った。

上写真=史上初めての快挙を達成した 山下良美主審が笑顔で喜びを語った(写真◎スクリーンショット)

「試合が始まる笛には気持ちを込めたい」

「日本人の誇りと責任を胸に、大会の成功に向けて最大限の準備をいたします」

 そう切り出した山下良美主審は、満面の笑みだった。

 5月19日にFIFAがカタール・ワールドカップの担当審判員を発表、日本から山下主審が選出された。ワールドカップで女性審判員が選出されたのは史上初めてで、山下主審を含む3人の女性主審と3人の副審が選ばれている。FIFA審判委員会のピエルルイジ・コッリーナ委員長は、「彼女たちは常に高いレベルのパフォーマンスを発揮しているので、ワールドカップに参加する資格があります。パフォーマンスこそが私たちにとって重要な要素なのです」と期待を寄せている。

 1986年生まれの山下主審は学生時代に始めたレフェリーで、世界の頂点に立つ栄誉に浴すことになった。「夢のまた夢、夢にも思えない夢なので驚いたのが最初の気持ち」。前夜に国外のレフェリー仲間から祝福のメッセージが届いて初めて知ったといい、そのあとにニュースで事実と確認したという。まさにサプライズ選出になった。

 山下主審の強みに、扇屋健司審判委員長はスピードと芯の強さを挙げた。「男子に引けを取らないスピードですね。努力もあるが持って生まれたものがあって、そこが魅力的。レフェリーは自分が思ったもの、見たものを貫いてジャッジしなければいけないが、その芯の強さも山下さんの素晴らしいところ」と紹介している。

 山下主審は2015年に国際審判員に登録されると、19年女子ワールドカップ、21年東京オリンピックなど国際大会を経験。男子の試合では19年のAFCカップのほか、今年4月のAFCチャンピオンズリーグ、メルボルン・シティ(オーストラリア)対全南ドラゴンズ(韓国)でも、女性として史上初めて笛を吹いている。国内でも昨季からJ3を担当するなど、多くの場数を踏んでいる。扇屋委員長も、今後はワールドカップに向けて、Jリーグを含めた男子の試合でレフェリングを務める可能性にも触れている。

 山下主審は「ワールドカップが目標だったわけではない」と話す。

「ワールドカップを目標として考えたことはなかったけれど、すべてのサッカーをする人、スポーツをする人の夢であって、私もその一人です。だから、夢には思っていましたけど、ワールドカップに限らずこの大会に行こうという目標を置いて活動したことはありませんでした。とにかく目の前の試合を、という気持ちでやってきました。レフェリーの活動も、日本のサッカーが向上し、より強くなるように少しでも貢献できるようにと思って始めたので、自分のことというよりは、大きなことになりますけど、日本サッカーの向上が目標と言えば目標ですね」

 実際にワールドカップの舞台で担当が回ってくるかはわからないが、そのための準備は怠らない。そしてもし、そのときが来たら……。

「試合が始まる笛には気持ちを込めたいと思います。そこだけは、試合中のことを考えずに吹けますからね。集中して気持ちを乗せて吹きたい」

 高らかな笛の音とともに、日本サッカーもまた新しい時代の扉を開けるだろう。

【プロフィール】
山下良美(やました・よしみ)
生年月日:1986年2月20日
出身地:東京都
国際審判員登録:2015年
主な国際大会:
2015年 第28回ユニバーシアード競技大会(2015/光州)
2016年 FIFA U-17女子ワールドカップヨルダン2016
2017年 第29回ユニバーシアード競技大会(2017/台北)
2018年 AFC女子アジアカップヨルダン2018
2018年 FIFA U-17女子ワールドカップウルグアイ2018
2019年 FIFA女子ワールドカップフランス2019
2021年 第32回オリンピック競技大会(2020/東京)
2021年 AFC女子クラブ選手権2021 - パイロットトーナメント
2022年 AFC女子アジアカップ2022
2022年 AFCチャンピオンズリーグ2022
※2021年 Jリーグで初めての女性主審を務め(5月16日の明治安田生命J3リーグ Y.S.C.C.横浜対テゲバジャーロ宮崎)、2022年もJリーグ担当審判員を務める


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