北海道コンサドーレ札幌の大卒ルーキーが開幕戦で大きなインパクトを残した。明治大から加入した小柏剛だ。横浜FC戦で5ゴールを記録したチームの攻撃を活性化させたそのプレーぶりは、今季の活躍を予感させるものだった。

上写真=開幕戦で先発を飾り、ピッチで躍動した小柏剛(写真◎J.LEAGUE)

■2021年2月27日 明治安田生命J1リーグ第1節(@札幌ド/観衆11,897人)
札幌 5-1 横浜FC
得点:(札)駒井善成、金子拓郎2、アンデルソン・ロペス、チャナティップ
   (横)クレーベ

プレスと抜け出しで勝利に貢献

 抜群の抜け出しと寄せの速さは元より高く評価されてきた。明治大で10番を背負った小柏剛は、大学サッカーでは知らぬ者のいない存在だった。3年時にはユニバシアード代表として優勝に貢献(2019年)。同大会では、一足先に札幌に加入し、プロの世界に入った田中駿太、金子拓郎、高嶺朋樹や、昨季J1で大ブレイクを果たした川崎Fの三笘薫とチームメイトととしてともに戦っている。

 すでに2020年シーズンに特別指定選手としてJ1デビューを飾り、言わば鳴り物入りで今季から札幌に加わった。だが、それでも開幕スタメンを予想できた人はどれだけいるだろうか。札幌の前線はますます層が厚くなっているからだ。ただ、横浜FC戦のピッチで躍動する姿を見て納得した人は多いだろう。実にスムーズに、そして効果的にプレーしていたからだ。

 1トップのアンデルソン・ロペスや2シャドーを組むチャナティップとの距離感を考えつつ、状況に応じてプレーを選択していく。前線でアグレッシブに相手にプレッシャーをかけたかと思えば、攻撃の局面では鋭い走りで相手守備陣の脅威になった。ビルドアップの局面でも機に応じて短いドリブルを挟みつつ、正確なパスで攻撃をスピードアップさせた。

 チームはこの日、5ゴールを記録したが、いずれも小柏がしっかり関与した。まず、試合のすう勢を決めた駒井善成が先制点。小柏はプレスでアシストした。右サイドからの金子のクロスは相手に当たってこぼれたが、即座に反応。小川慶治朗にクリアをさせず、足に当てたボールが駒井へとつながり、ゴールが生まれた。さらに貢献は続く。2点目は小柏自らが中央をドリブルで持ち上がり、相手を十分に引き付けて右の金子へパス。ボックス内に斬り込んで放った金子のシュートは相手DFに当たり、そのままゴールに吸い込まれることになった。

 そして3点目だ。中央で短くドリブルして、右の田中へ展開。田中がボランチの駒井善成に戻したときには、最終ラインと駆け引きできる位置へと入り込んだ。駒井からチャナティップにパスが出ると、タイミングを見計らい、チャナティップから浮き球を呼び込んで裏へ飛び出す。フリーでパスを受けた小柏は、より確実なプレーを選択し、中央でフリーのA・ロペスに右足インサイドで優しいパスを送った。

「本当に練習でやっている形だったので、自分も含めて、公式戦でコンビネーションがうまくいったのは自信になりますし、もっともっと磨きをかけて、もっともっとコミュニケーションを取っていい連係をつくっていきたい」

 前半終了間際にA・ロペスのシュートのこぼれ球を拾って金子が決めたチームの4点目はフリーランニングで味方のサポートを欠かさなかった。後半に記録したチームの5点目、チャナティップによるゴールも、右サイドで田中、駒井、小柏、金子、駒井と流れるようなパス回しによって相手の最終ラインを攻略し、その折り返しを中央に走り込んだチャナティップが決めた。つまりはゴールに至る過程にしっかり関与している。この日の小柏は、およそ大卒ルーキーとは思えない働きぶりだった。

 惜しむらくは後半、自身に訪れた決定的なチャンスを逸したことか。61分、左からの駒井のパスに反応し、ゴール前に飛び込んだものの、わずかに合わず、シュートに至らなかった。さらに65分。抜群の動き出しで駒井の縦パスに合わせて裏へ飛び出し、GKと1対1の状況を迎えたが、左足のシュートはわずかにゴール左に外れた。試合後には本人も反省の弁を述べた。「僕が動き出すタイミングは、チームメイトが見てくれるので、今回は駒井さんが出してくれましたけど、自分が決めるだけという場面で外してしまった。次への反省点だと思っています」。

 もちろん、決めていれば申し分なかったが、そうかといって勝利への貢献がかすむわけではない。それほどにこの日の小柏のプレーは鮮烈であり、印象的だった。82分に交代で下がる際に、スタンドから降り注いだ拍手の大きさがそれを物語っていた。

 昨季は大卒ルーキーの三笘が、話題をさらった。まだ今シーズンは1試合終えただけだ。されど、小柏をネクストブレイク候補に挙げるファン・サポーターは、開幕前よりも確実に増えたに違いない。


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