上写真=仙台育英GK佐藤文太は1回戦で2本、3回戦でも2本のPKをストップして勝ち抜きに貢献(写真◎近藤俊哉)
夏も冬も期待に応えた『PK職人』
1月2日の2回戦、初戦で昨年度ベスト4の尚志(福島)と対戦した徳島市立(徳島)は、0-0で迎えた後半アディショナルタイムにGKを代えた。中川真から、米田世波へ。
19年夏のインターハイでベスト8に進んだ徳島市立は、1回戦から3試合まで、すべて0-0からのPK戦で勝ち抜いた。このときも試合終了間際にGKを中川から米田に代えており、期待に応えた『PK職人』米田はPKストップを連発。そして今回も、見事に2本を止めた。
夏に成功した〝勝利の方程式〟の再現。昨年度ベスト4の難敵を下す原動力となった。
エースを狂わせた、風のいたずら
12月31日、立正大淞南(島根)と富山一(富山)の試合は2-2で終了し、決着はPK戦に委ねられた。両チームとも2人目まで成功。だが3人目で、先に蹴った富山一はFW碓井聖生が大きく上に外してしまう。
立正大淞南の3人目は、J2松本への加入が内定しているMF山田真夏斗。伝統のエースナンバー17番を背負い、ボールをセットした。ところが、主審の笛が鳴って助走を始めようとしたとき、ころころとボールが前に転がっていく。
この日、会場の浦和駒場スタジアムには試合中から強風が吹き荒れていた。ボールの軌道が大きく変わるだけでなく、車輪付きの鉄製ベンチすら動いてしまうほど。助走をやめた山田はボールを置き直そうとするが、なかなか止まってくれない。
何とか止まって助走を始めたときには、最初の主審の笛から1分以上が経過していた。長い時間が、何かに狂いを生じさせたのだろうか。左を狙ったキックはコースが甘く、富山一GK中村純四郎に止められた。
その後、立正大淞南は5人目が右ポストに当てて失敗し、敗退。山田は応援団の前で、なかなか顔を上げることができなかった。
覚悟から歓喜へ、変わった涙
1月3日、仙台育英(宮城)と日大藤沢(神奈川)の戦いは0-0で両者譲らず、PK戦にもつれ込んだ。ここでも競り合いは続き、お互いに7人目まで全員が成功。スタジアムの緊張感が徐々に高まっていく。
8人目、先に蹴った仙台育英DF中川原樹のキックが、日大藤沢GK濵中英太郎に止められた。スタンドに詰めかけていた日大藤沢の大応援団が歓喜に沸く。中川原は敗退を覚悟したのだろう。センターサークルに戻りながら涙を流していた。
だが、日大藤沢の8人目のキックを仙台育英GK佐藤文太がストップ。救われた中川原の涙は歓喜のそれに変わり、センターサークルから佐藤への感謝を伝えた。
その後、仙台育英は10人目で先に決めると、相手のキックをまたしてもGK佐藤が止めて勝ち抜き。スタンドの応援団の下へ駆け寄る佐藤に、歓喜のフィールドプレーヤーが続いた。
文◎サッカーマガジン編集部 写真◎中島光明、佐藤博之、近藤俊哉