サウジアラビアとの第1戦に敗れた日本は、背水の陣で臨んだシリアとの第2戦も落としてしまった。先制され、一時は同点とするも突き放されて敗戦。内容も印象も悪い連敗で早々とグループステージ敗退が決まった。

上写真=敗戦に肩を落とす日本の選手たち

■2020年1月12日 AFC U-23選手権 グループステージ第2節
 シリア 2-1 日本
 得点:(シ)バラカット、ダリ (日)相馬勇紀

シリア戦の出場メンバー:GK大迫敬介、DF渡辺剛(77分、立田悠悟)、岡崎慎、町田浩樹、橋岡大樹、MF相馬勇紀、齊藤未月、松本泰志、森島司(86分、旗手怜央)、食野亮太郎(67分、田川亨介)、FW上田綺世

またも追いつきながら突き放される

 スコアが動いたのは、9分。背水の陣を敷いてこのゲームに臨んだはずの日本ではなく、勝ってグループ首位に立ちたいシリアの方だった。

 カウンターを浴びてシリアにCKを与えると、ゴール前に入ってきたボールに対して、町田が反応。しかし、シリアの主将アルナウトのヘディングシュートよりも遅れる形になり、振り上げた足が相手の頭をかすめてしまった。VARの末に、PKの判定が下る。バラカットに決められ、日本は試合開始早々にビハインドを背負うことになった。

 その後、得点を取って全体的に重心を下げたシリアに対し、日本は圧倒的にボールを持って攻めた。セカンドボールを何度も拾い、波状攻撃を仕掛ける。ゴールへの強い意欲が実を結んだのは、30分のこと。左サイドからカットインした相馬がエリアのすぐ外からシュート。一度は相手DFに当たるが、その跳ね返りを拾って、再び右足を振り抜くと、鋭いシュートがゴール左隅に決まった。

 追いついた日本は勢いを継続し、その後も相手を押し込んでゲームを進めていく。ボールを動かし、相手を走らせ、ゲームを支配した。だが、前半はスコアが動かず。1-1のまま後半へ折り返す。

 後半に入っても日本がシリアを押し込む展開が続く。素早い攻守の切り替えで、序盤に浴びたようなカウンターも許さない。鋭い予測と素早い寄せで次々とボールを回収する齊藤の存在も大きかった。

 しかし、ゲームを支配してもなかなか追加点が奪えない。ボールは回せる。縦パスも入る。リズムも悪くない。ただ、フィニッシュにつながるラストパスがズレたり、シュートが枠を逸れて、ネットを揺らすには至らない。

 高温多湿の気候もあり、60分過ぎからはいっそう消耗戦の様相を呈した。日本は食野に代えて田川を投入。活性化を図ったが、それでもゴールは遠いまま。

 77分に相手と接触して左足を負傷した渡辺が立田と交代。攻撃の勢いを増すために、旗手怜央の投入を考えていたベンチは急きょ、CBの交代を決断することになった。

 83分には右サイドから橋岡が送ったクロスに上田がジャストのタイミングで飛び込むが、シュートは枠の外へ。攻めあぐむ日本は、森島に代えてフレッシュな旗手をピッチに送って攻撃の圧力を強める手を打つが、交代から2分後に最も警戒していたはずの形で失点してしまう。相手ゴール前でシュートチャンスをうかがうも、分厚く築かれた人垣を前にシュートを打ち切れず、逆にボールを奪われてロングカウンターを許すことになった。最後はダリに振り切られて、決められた。

 4分間のアディショナルタイムに橋岡や旗手がシュートを放ったが、相手GKの好セーブにあって決め切れず。結局1-2で敗れて、3戦目を戦わずにグループステージ敗退が決まった。

「先制点を許したものの、勝利できたかもしれないという内容を2試合とも落としているので、勝負強さや最後のところを詰めていかなければいけない。(敗れた原因は)攻撃はあまり受けていないと思いますが、相手のカウンターをしっかり止められる、最後の時間帯で苦しくなったときに、しっかりしのぐということは試合前から言っていたところ。勝負勘というものを若い選手たちがこれから培っていってもらえれば。
(決勝まで戦うつもりが3試合だけになった。最後の試合をどう考えるか?)3試合になったとしても、われわれは全力を尽くして戦いますし、応援して下さる方々に最後まで戦う姿勢を見せたい。選手たちにも、この悔しさを次の成長の糧にしてもらえるように、もう1戦、頑張っていきたいと思います」

 森保監督は、フラッシュインタビューで悔しさを糧としたいと話した。

 今大会は海外組をほぼ呼べないタイミングで開催されており、立ち上げから海外組を組み込んでチームを作ってきたために編成上の難しさがあったのは確かだろう。実際、このメンバーがそのまま五輪に行くわけではない。また、他国が五輪予選の出場権を懸けて戦っている中、開催国で出場権を持つ日本と熱量の差があったのも否めない。

 ただ、そうした状況を考慮しても、2戦を終えて勝ち点ゼロでグループ最下位に沈み、しかも判を押したように先制され、追いつくも最後に突き放されるという展開で敗れた事実は重い。指揮官は「勝利できたかもしれない内容」と語ったが、ではなぜ勝利に導けるはずの試合で敗れることになったのか。攻めながらゴールを取り切れずカウンターに沈むというありがちな失態を、なぜ避けられなかったのか。少なくとも選手の「勝負勘」だけが原因ではない。

 この大会が本番に向けた選手選考の場である一方、気候も日程も本大会に似ている言わば『プレ五輪』であると考えれば、指揮官の手腕を示す場でもあったはずだ。サウジ戦では試合の終わらせ方に失敗し、シリア戦では引き分けゲームを勝ちに持っていく術を見せられなかった。勝ち点を取る手立ては、何ら示されなかった。

 五輪イヤーは、2連敗でスタートした。結果で見る者の不安を拭い去る大会になるはずが、逆に不安をあおる形になってしまった。


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