上写真=浦和はアルヒラルに敗れ、3度目のアジア王者になることができなかった(写真◎Getty Images)
■2019年11月24日 AFCアジアチャンピオンズリーグ決勝第2戦
浦和レッズ 0-2 アルヒラル
得点:(ア)サレム・アルドサリ、バフェティンビ・ゴミス
※2試合合計3-0でアルヒラルが優勝
前に行くしかなくなった
浦和は試合の開始直後から攻撃姿勢を見せたものの、高い位置で相手ボールを取り切れず、チーム全体の重心が次第に下がっていった。それでも相手の拙攻にも助けられ、前半は無失点で耐えしのぐ。
しかし埼玉スタジアムに集ったサポーターの大声援を背に、懸命にゴールを目指した後半も、状況は好転しなかった。クロスに合わせた関根貴大のシュートも、青木拓矢のミドルも、ファブリシオのヘッドもネットを揺らすには至らない。
時間の経過とともに相手に押し込まれる時間が長くなり、決定的なシュートを何本も浴びた。相手のミスやGK西川周作の好守で失点は免れ続けたが、74分のことだった。長澤和輝に代えて柏木陽介、ファブリシオに代えて杉本健勇を投入し、攻めに出た直後。カウンターを浴びると、簡単にパスをつながれ、最後はエリア内からサレム・アルドサリに決められてしまった。
この時点で2試合合計0-2。浦和が優勝するには3点が必要な状態となる。
その後も懸命に相手ゴールを目指した浦和だったが、リードを奪って余裕の出たアルヒラルにテンポよくボールを回され、時計の針を巧みに進められてしまう。それでも前に行くしかない状況に陥ると、アディショナルタイムにカウンターを浴びてゴミスに追加点を許した。結局0-2で敗戦。2試合合計でも0-3。文字通りの完敗を喫した。サポーターが作り上げた最高の雰囲気の中で逆転優勝を狙ったものの、その思いは成就せず、悔し涙を流すことになった。
「一戦のビハインドをしっかりと返そうという形で入りましたけども、前半に一つ取れなかったことで、そのあと少しずつゲームが前に行かなければならないという流れになった。1点を取られた時点で前に行くしかなくなり、2点目はああいう流れに」
大槻毅監督は前半にゴールを取り切れなかったことが大きかったと話した。プランが崩れて状況が悪化の一途をたどったのは確かにその通りだった。自陣でボールを奪って攻撃に転じても焦ってミスを犯し、易々と相手にボールを渡した。これでは攻撃にリズムが出ない。遅攻でもビルドアップがままならず、相手のプレッシャーに晒されて味方のいないスペースにパスを出す場面が散見した。
浦和は決勝まで勝ち上がって地力のあるところを示したが、最後の最後に力の差をまざまざと見せつけられたと言える。3度目となるアジア王者の称号を手にできず、Jリーグ勢としての3連覇を果たせず。何とも悔しい準優勝。
「僕はトーナメントからチームを率いましたけども、表裏の中で、1戦目を終わって2戦目というところで、1戦目の準備からそれを上回る2戦目の準備というところで成果というか、そういうものは出せたと思っています。アルヒラル戦に関しては、選手には言いましたが、一生懸命やったことに感謝しているし、それを導くようなところで僕自身が、彼らのもうちょっと先を出してあげられなかったと思っています」(大槻監督)
その言葉には悔しさがにじんだ。それでも敗戦は次につなげなくてはならない。
「(ACLでは)資金力のあるクラブと戦いました。選手のクオリティだとか、とくに外国籍選手とか、そういったところで難しいものはありました。また、西アジアへの移動に関して、環境への適応という部分でクラブで取り組めるところがあったのかどうなのか。今までは決勝に進んだときに、1戦目の前に少しキャンプをできたたけども、今回はできなかった。そういう部分もまた、(今回のことが)クラブの蓄積になったと思います。こういう経験が次に生きてくるのかなと。難しいところにチャレンジして、それがわれわれだけではなくて、日本のサッカーの経験として蓄積されていくことが重要。とくにこういうクラブ単位の大会で経験を蓄積していくことは重要だと思います」
そう大槻監督は大会を総括した。浦和はJリーグで唯一、現行のフォーマットになったACLを2度制しているクラブだ。決勝で味わった初めての敗戦から何を学び、この完敗をいかに未来に生かすか――。問われるのはそこだろう。
写真◎Getty Images