11月17日に福岡県北九州市のミクニワールドスタジアム北九州で行なわれた2019Jユースカップ(第27回Jリーグユース選手権大会)決勝では、名古屋U-18がG大阪ユースから4ゴールを奪い、2011年大会以来2度目の優勝。チームを勢いづける先制点を挙げたのは、高校から名古屋にやってきたドリブラーだった。

上写真=優勝へと近づく先制ゴールを決めた榊原(写真◎サッカーマガジン)

■2019年11月17日 2019Jユースカップ決勝(ミクニワールドスタジアム北九州)
G大阪ユース 0-4 名古屋U-18
得点者:(名)榊原杏太、村上千歩、牛澤健、松本皐誠

「勝てば勝つほどプレッシャーがかかる」

 時計の針が前半30分を回った頃、G大阪ユース陣内で相手選手のパスミスを奪った名古屋U-18のMF榊原杏太が、ドリブルでペナルティーエリアに進入。相手DFを一人かわし、飛び出してきたGKと交錯した次の瞬間に、主審のホイッスルの音が鳴り響く。

「絶対にゴールを決めてやろうという気持ちで、勢いよく、(ドリブルで)抜いて行って、(相手GKに)足を引っかけられてPKをもらえました。ラッキーだったなと思います」

 主審がペナルティースポットを指さすと、榊原は何やら味方に声をかけ、ボールを手に取った。

「千歩(FW村上)が得点王を狙っていたし、瑛琉(DF新玉)も狙える位置にいたので、(PKキッカーは)その二人になる可能性もあった。でも、僕がもらったので(二人に)『蹴る』と言って、蹴らせてもらいました」

 ゆっくりと助走をとって相手GKと駆け引きし、G大阪ユースのGK駒井幸弘が飛んだ方向と反対のゴールネットに沈めた。

「Jユースカップの試合前は、必ずPKの練習をしていました。(来季)トップチームに昇格する三井大輝とか、ジョン(東)とか、レベルの高いキーパーを相手に毎週練習しているので、自信を持って蹴ることができました」

 こうして、32分に名古屋U-18のゴールラッシュの口火を切る先制点が生まれた。それはまた、『優勝』の二文字を手繰り寄せるゴールでもある。試合を動かす、大きな価値を伴った得点を奪った榊原は、試合後に『MVP』に選ばれた。

「(MVPを)少し狙っていたし、(手応えは)ありました。(今大会の)チームにはケガ人もいて、『僕がやらなければいけない』という強い責任感を持って臨んだ大会でした。そういった中で、調子がいいと見られよかった。そして、(MVPを)取れたことはうれしいです」

 榊原は中学時代、清水エスパルス・ジュニアユースでプレーし、高校入学と同時に名古屋グランパスの門を叩いた。それだけに、福島県・Jヴィレッジで行なわれた準々決勝広島ユース戦(〇3-1)の後には、同じ会場で試合に臨んだ清水ユースのスタッフから声をかけられる場面もあった。

「エスパルスの人たちに、とても感謝しています。今でも僕の様子を聞いてくれたり、すごく支えてもらっている。だから、グランパスの人達にも、エスパルスの人達にも、恩返しをできればいいなと思っています」

 多くの人への感謝を抱いて、大会MVPの称号を得た。「1試合1試合、勝てば勝つほどプレッシャーがかかり、今も感じたことのないようなプレッシャーがある」と、“常勝”の難しさを実感しつつも、「それを楽しみながら、これから続く(高円宮杯プレミアリーグでの)負けられない試合も絶対に勝つ」と意気込む。

「またプレミアリーグも優勝できるように頑張ります」

 名古屋U-18の「8番」を背負うレフティーは、“ユース3冠”という偉業達成に向けて、これからもどん欲に勝利を求める。

取材◎小林康幸

関連記事

サッカーマガジン 2019年12月号


This article is a sponsored article by
''.