上写真=長崎U-18のキャプテンを務めるGK朝長(写真◎サッカーマガジン)
■2019年7月24日 第43回日本クラブユース選手権(U-18)大会 グループステージ(35分ハーフ)
長崎U-18 1-1 C大阪U-18
得点者:(長)長尾泰成 (C)桃李理永
「僕にはキャプテンとしての存在意義があるのかな?」
大会1、2日目の涼しい気候とは打って変わって、群馬県前橋市下増田町の『前橋フットボールセンター』には夏の暑さが戻った。試合時間は前後半35分ハーフ、プレーが止まるたびに選手たちは給水しながら、勝利を目指してピッチを走り回った。長崎U-18には、そんなフィールドの仲間を支える守護神がいる。
「僕は全然走らないし、(相手を)マークしているわけでもない。そのぶん周りがよく見えるので、タイミングとボリュームを意識しながら、出来るだけ(味方選手が)分かりやすいようにコーチングするよう、心掛けています」
GK朝長心優は最後尾からしきりに声を出し、味方選手のプレーを後押しする。マークの指示、周囲の状況説明、もちろん鼓舞する言葉も欠かさない。10人の味方選手のうち、誰に、どのような言葉を送るべきか。フィールドの一人ひとりの状態を見極めながら、より効果的に声を出すように努める。
朝長はチームのキャプテンを担っている。試合が終わると、真っ先にチームの重そうな荷物をベンチから運び出す。先頭を切るキャプテンの姿を見た他の選手たちも後に続く。
「僕は頭を使って動けるほうではないし、サッカー以外の普段の生活でもテキパキ動けるタイプではない。だから、僕にはキャプテンとしての存在意義があるのかな? と、たまに思ったりもします。チームの雰囲気づくりとか、そういったことでしか(チームを)引っ張れないので、意識してやっています」
その姿勢はいたって謙虚だ。67分に見せたビッグセーブについては「自分ができることと言えばシュートストップくらいなので、止められる範囲では確実に止めるように準備をしています」と話す。相手のプレッシャーを受けながら、味方の選手にロングパスをつないだシーンも「正直、ビルドアップが一番苦手なので、受ける前の準備だったり、(味方選手を)見ることを意識して、怖がらずに(パスを)つなげられるようにどんどんチャレンジしていきたい。でも、(うまくパスがつながったのは)あのシーンだけですよ」と振り返る。
ただ、昨年にはクラブがドイツのレバークーゼンと育成業務提携を結んだことで、“GK大国”への留学も経験した。朝長は世界的名手を数多く生み出してきたドイツの地で、さらなる進化を遂げた。
「ドイツはノイアーとか、テア・シュテーゲンとかを輩出している国で、日本で学んできたセオリーとはちょっと違うところがありました。例えばポジショニング一つにしても、相手とボールの状況がこうだったら、こう(ポジションを)取ったほうがいいよね、と。すごく勉強になりましたね。それによって、ピンチのときでも落ち着いて周りを見られるようになりました」
決して自らの能力を過信することがないからこそ、真摯に指導者の言葉を受け止め、日々のトレーニングに打ち込み、成長へとつなげているのだろう。
「キャプテンという立場を与えてもらったり、昨年はドイツに行かせてもらったり、すごく良い経験ができています。ここで3年間やれてよかった。もうクラブユース選手権は終わってしまったけれど、プリンスリーグからプレミアリーグへの昇格、そしてJユースカップ優勝という次の目標があるので、それに向けてまた一日一日を大事にしていきたい。この大会は3試合だけでしたけれど、全国でもやっていけると、ここに来た全員で感じられたと思うので、これから自信を持って取り組んでいきたいです」
長崎U-18と、チームをけん引する謙虚なキャプテンは、夏の経験を糧にさらなる高みを目指す。
取材◎小林康幸