JFAアカデミー福島U-18と秋田U-18の試合は、立ち上がりの11分に秋田U-18が先制する。原田拓真のクロスに鐙彗隼が右足で合わせ、リードを奪った。しかし、その後はJFAアカデミー福島U-18の攻撃を止められない。17分、加藤聖に直接FKを決められ同点に追いつかれると、その1分後には三戸舜介に逆転ゴールを許す。さらに、後半にも2失点を喫し、グループステージ2連敗。秋田U-18は24日に行なわれた3戦目も落とし、敗退となった。

上写真=秋田U-18のDF高橋聖和。JFAアカデミー福島U-18戦ではキャプテンマークを巻いた(写真◎サッカーマガジン)

■2019年7月22日 第43回日本クラブユース選手権(U-18)大会 グループステージ(35分ハーフ)
JFAアカデミー福島U-18 4-1 秋田U-18
得点者:(J)加藤聖、三戸舜介2、植中朝日 (秋)鐙彗隼

初の日本クラブユース選手権。「すごく貴重な経験を得ている」

 秋田U-18のメンバー表の前所属欄に、一人だけ「ベガルタ仙台ジュニアユース」と記載されている。「出身は秋田なんですけれど、中学は仙台でプレーしていました」と、センターバックを務める高橋聖和はJ1クラブの育成組織へ越境し、自身のプレーを磨いていた。

 ところが、「中学のときにケガが多かったこともあり、(仙台の)ユースには上がれなかった」。それだけに、「このクラブユース選手権にベガルタ・ユースも出ているから、それよりも上に行って、『あいつらよりも上だぞ』というところを見せたい気持ちもあった」と本心を明かし、結果的に「それはできなかった……」と悔しそうな表情を浮かべる。

 仙台から秋田に戻った理由は、もう一つあった。「うちに来ないか?」と、秋田U-18を指揮する熊林親吾監督からチームへの誘いを受けた。

「自分が今まで指導を受けてきた監督の中でも、全然いなかったタイプ。自分が気づかなかったことや、(熊林)親吾さんの選手時代の経験を自分たちに落とし込んでくれている。あと、オンとオフがしっかりしている方ですよね。やるときはやって、リラックスするときはして、といったような。あの人の指導を受けられて、自分たちは幸せです」と、帰ってきた故郷での充実ぶりを語る。

 チームには同じ生年月日で、同じ名字を持つチームメイトがいる。MF高橋夢斗とは、「ただ誕生日が一緒」だというが、秋田県内での高橋姓の多さを強調する。「(秋田は)『高橋』という名字の人が多い感じはしますね。『佐藤』と『高橋』は、特に多い。仙台にいた中学時代は、『あれ、“高橋”が少ないな』と思っていたけれど、秋田に帰ってきたら『やっぱり、“高橋”は多いな』と。たぶん秋田は『高橋』が多い地域なんじゃないですかね」と続ける。一度、故郷を離れたからか、地元秋田の話になると舌が回る。

 この夏、秋田U-18のチームメイトやスタッフとともに、チームとして初めて全日本クラブユース選手権に臨んだ。結果こそ3連敗で終わったものの、「東北や、秋田県内では、なかなかこのレベルの相手はいない。こういう(全国レベルの)相手とできるクラブユース選手権で、自分たちはすごく貴重な経験を得ています」と、出場したことの意義を話す。

「いつも出来ているビルドアップが全国のレベルになると出来なくなり、まだ力不足だと痛感しました。(JFAアカデミーU-18戦は)もっと相手を見ながら、ボールを回すだけではなく、隙があればそこを突いて、素早くゴールに行くサッカーをやろうと思っていたんですけれど、相手の連動したプレスが自分たちよりも上で、思うように出来なかった。競り合いでも、相手は自分よりちょっとだけ身長が低かったけれど、落下地点に入るポジショニングだったり、競る前の体の使い方だったり、あと飛ぶタイミングもすごくうまくて、勉強になりました。だから、自分はこの身長(181センチ)で飛ぶタイミングを磨けば、空中戦に強くなれると思う。まだまだ自分にも伸びしろがあるのではないかなと、感じました」

 クラブユース選手権で得た課題と収穫を糧に、高橋は次の戦いを見据える。

「秋のJユースカップでは、チームとしてまだ初戦を突破できていないので、そこに照準を合わせて、まずは勝利したい。他のチームに比べれば小さな目標かもしれないけれど、自分たちにとってはそれが大きな目標でもありますので。このクラブユースの全国大会で出来たこと、出来なかったこと、そして自分の弱点なども分析しながら、次はJユースカップに向けて頑張っていきたいです」

 高橋と秋田U-18の挑戦は、これからも続いていく。

取材◎小林康幸

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