序盤からホームの横浜F・マリノスが浦和レッズを押し込むと、38分にティーラトンのパスから遠藤渓太が決めて先制に成功。後半に挙げた追加点を巡って判定が二転三転し、試合が中断するなど後味の悪さも残ったが、横浜FMがホーム無敗を継続し、勝ち点3を積み上げた。

上写真=新しい挑戦の中で成長を続けるティーラトン(写真◎J.LEAGUE)

■2019年7月13日 J1リーグ第19節
 横浜FM 3-1 浦和
 得点者:(横)遠藤渓太、仲川輝人、エジガル・ジュニオ (浦)オウンゴール

難しいけれど、やっていて楽しい(ティーラトン)

 38分の先制点は、浦和のDF橋岡大樹が足を滑らせたことがきっかけだった。対峙していたティーラトンが瞬時に反応してボールを拾うと、すかさず正確なボールを遠藤に送った。

 攻撃時はタッチライン際に張っていることが多い遠藤は「ブンちゃん(ティーラトンの愛称)なら良いボールをくれると思ったので、あそこにいられた」と先制点の場面を振り返る。ゴール前で足元にボールを収めるや否や素早く反転して、逆サイドの隅を射抜いたのだった。

 パスを出したティーラトンは「マリノスのスタイルは、瞬発力が必要になる。90分間それをできるか、毎試合試される。練習からハードワークしている結果」と謙虚に語ったが、遠藤の言葉からすでに仲間の信頼を得ていることがうかがえる。

 この場面以外にも横浜FMの背番号5は、攻守に躍動した。前半終了間際には、ルーズボールに素早く反応し、体格で上回る橋岡をフェアな接触プレーで弾き飛ばした。シュート場面で仲川はオフサイドの位置にいたためにゴール判定を巡って物議をかもすことになったチームの2点目についても、横浜FMが守備に回った際に体を張って相手の反撃を送らせ、チアゴ・マルチンスのパスカットを誘発している。

 現チームのサイドバックは、ただサイドライン際を上下動するだけではなく、中央エリアに進出してビルドアップに加わり、そのまま攻撃に参加することを求められる。今季から加入したティーラトンは「合流して早々にケガをして、治ってもすぐにチームに入れなかったし、自分の中ではこのスタイルは正直に言って苦手だった。神戸ではずっとサイドに開いていたけれど、中央に入ったり外に開いたり、さらに前に出たりするこのやり方は、すごくやりづらかった」と率直に、チームになじむまで苦労したと語った。

 だが、「日々の練習をこなして、5月に入ってから続けて試合に出られるようになって試合勘をつかんだ。仲間との連係やタイミングが取れるようになってきた」。その言葉を証明するように先発に定着した5月以降、自身が出場したホームゲームは全勝と、チームとともに波に乗る。

 自信がさらに、自らの背中を押す。28分の相手ゴール前でのFKの場面では、扇原貴宏ら数人でボールをセットしながらも、臆することなく左足を振った。「セットプレーを担当するアーサー・パパスコーチが『お前ならできる。自信を持って蹴れ』と言ってくれて、自分でもやる気になって蹴れるようになっている。試合では、自分がやるんだと自信を持って蹴っている」。ベルギーへと戦いの場を移した同じレフティーの天野純の後継者にも、積極的に担うつもりだ。

「このスタイルは難しいけれど、やっていて楽しい」」とティーラトン。タイ語で「コップンカップ」と謝意を伝えて手を合わせる取材陣に、「アリガトウゴザイマス」と笑顔で返して、スタジアムを後にした。

取材・文◎杉山孝

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