上写真=ベルギーへの挑戦が決まった天野(写真◎J.LEAGUE)
■2019年7月6日 J1リーグ第18節
横浜FM 1-0 大分
得点者:(横)エジガル・ジュニオ
成長が遅くなったと感じていた
「2、3カ月悩んで、お腹も痛くなって。めちゃめちゃ腹を下しながら考えたこともありました」
冗談めかして話したが、天野は笑ってはいなかった。
小学生の頃から横浜FMの下部組織で育ち、順天堂大学を経て、再びトリコロールのユニホームに袖を通した。今季からは3人で務めるキャプテンの一角を務めている。「苦渋の決断」。ホームページでのコメントでも、この日の会場でファン・サポーターの前でも絞り出した言葉に、偽りはないだろう。
それでも、変化の必要性を感じていた。この日の試合も、そんな思いの一端をしのばせた。
2018シーズン、さらに昨季と2年連続でリーグ戦で5得点。決定的な仕事ができるようになっていた。
だが、今季はリーグ17戦出場で無得点。先発を外れる試合もあった。
この日の試合でも、シュート2本は放ったものの、“決定的”な仕事をする違いを作り出す存在だったかと言われれば疑問符がつく。むしろ、チームのために攻守に走り、周囲を支える姿が印象に残った。
「数年前に感じていたような成長の速度が、遅くなったと感じていて。何か変えないとな、と思っていた」
そんな状況で届いたオファーを逃すことはできなかった。「まさか、海外移籍するまでの選手になるとは、6年前には想像つかなかった」。その言葉もまた、本音だろう。
ルーキーイヤーは、リーグ戦出場ゼロに終わった。その後も2年間、レギュラーをつかむには至らなかった。だが昨季には、ついに日本代表として、国際Aマッチの舞台に立つまでになった。「一歩一歩積み上げてきたものだと思うので、海外でも一つひとつ積み上げていきたい」。これまでの自分を信じて、海を渡る。
「もっと相手にとって危険な選手になりたい。前で違いを作る。それが本来の持ち味だと思っているので。いまが一番脂がのっている時期。安パイなプレーではなく、危険な選手、見ていて楽しい選手になりたい。ベルギーでそういう自分を見せていきたい」
憧れだったトリコロールの背番号10も一旦返上し、もう一度軽やかに舞うつもりだ。
取材◎杉山孝 写真◎J.LEAGUE