雨が降りしきる中、互いにゴールネットを揺らすことはできず、スコアレスドローに終わった。ただ、得点は生まれなかったものの、両チームとも勝利への意欲を見せ、局面で激しい攻防を繰り広げた。金沢は前後半を通して連動したプレスで大宮に自由を与えず、攻撃ではボールを奪ってからの速攻でゴールに迫った。柳下正明監督は「最後まで粘り強くプレーできたことで勝ち点1を取れたので、良かったと思う」と、チームの出来への手ごたえを口にした。

上写真=金沢の最前線で献身的な働きを見せた垣田(写真◎J.LEAGUE)

■2019年6月29日 J2リーグ第20節
大宮 0-0 金沢

「うちのサッカーは守備から」

 金沢の長身FWが、最前線でチームに活力を与えた。味方からロングパスが送られたときも、相手にボールを回されているときも、垣田裕暉は全力疾走をやめない。

「一番前の選手が(相手の)裏を取らなければいけないし、前線からの守備も大事だと思っています。うちのサッカーは守備からなので、前から良い守備ができないと後ろが苦しくなりますから」

 この日は特に、守備面での貢献度が高かっただろう。ディフェンスラインからパスをつないで攻めようとする大宮に対し、2トップを組む小松蓮とともに、ボールを追い続けた。ときにはマークについていた相手選手を捕まえるために、最終ラインまで下りてくる場面もあった。

 交代した89分まで手を抜くことはなく、勝利への執念をピッチ上で体現した。1997年7月生まれの21歳。東京五輪世代ではあるが、来年に控えたビッグイベントよりも、いま目の前にある試合だけを見つめながら戦っている。

「自分はチームのためにサッカーをしている。自分が得点を取れればうれしいけれど、(同世代の小松)蓮が点を取ろうが、他の誰が点を取ろうが、とにかくチームが勝つことがベスト。たとえ自分が全然ダメなプレーをしたとしても、チームが勝てればいい。チームのために、泥臭く働ける選手になりたいと思っています」

 金沢は2位の大宮から、敵地で貴重な勝ち点1を獲得。プレーオフ圏内の6位まで勝ち点3差とした。「アウェーで(順位が)上のチームから勝ち点1を取れたのは良かった」と垣田は話すが、「これを(勝ち点)3にできるように」と、あくまでも勝利にこだわる。そのためには、やはりゴールを奪うことが必要となるだろう。垣田自身、今季20節を終えて、いまだ2得点。もちろん、この数字には「満足はしていない」と言う。

「チームとして、もっと良い形を作っていかないと、得点は生まれないのかなと。(シーズンの)最初は良い感じで得点を取れていたけれど、対戦相手もたぶんうちのことを分析して臨んできている。今は得点力が課題ということもありますが、ここでまたどうにかゴールを取れるようになれば、また一つ成長につながるんじゃないかなと思います」

 チームの目標である『一ケタ順位』と、J1昇格圏内へ――。10番を背負う大きな背中が、これからも最前線でチームを引っ張っていく。

取材◎小林康幸


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