今回の女子ワールドカップ期間中、WEBサッカーマガジンでは日々野真理さんによる現地リポート「なでしこ観察日記リターンズ」をお届けします。連載第6回は、イングランドとのグループステージ第3戦に敗れた後、ラウンド16のオランダ戦に向かう、なでしこに密着しました。日本時間の明日26日早朝、いよいよ負けたら終わりのトーナメントが始まります!

上写真=世界一を懸けた戦いは決勝トーナメントへ。W杯は、ここからが本番!(写真◎日々野真理)

[6月19日]
2位なのか? 3位なのか?

 イングランドとのグループステージ第3戦。すでに決勝トーナメント進出は決めたものの、グループ1位を狙って…という試合でした。同グループのもう一つの試合、アルゼンチン-スコットランド戦の結果次第で、負ければグループ3位もあり得る状況で、日本は0-2とリードを許す展開。しかも試合終了間際になって、0-3とリードされていたアルゼンチンがすごい勢いで追い上げて、3-3になっている!?

 そちらの途中経過を追いつつ、インタビューポジションで待機していました。日本は0-2で敗れましたが、インタビュー直前に2位が確定。1位通過はならなかったものの、次のラウンド16までは中5日となり、コンディションを整えたり、ケガ人が復帰するための時間をしっかり取れることは、プラスに考えたいところです。
 
 ただ、試合内容は課題が多く残るものだっただけに、このままではいけません。「次までに修正できるポイントを話し合わなければ」と熊谷紗希キャプテン。ラウンド16の対戦相手はオランダもしくはカナダで、翌日に決まります。

[6月20日]
初出場への笑顔

 この日はイングランド戦に出場しなかった、または出場時間が短かった選手たちが、グラウンドでトレーニングを行ないました。ケガからの復帰が期待される籾木結花選手は「コンディションは上がってきています」と語り、離脱期間中については「ケガをしてチームに貢献できず、迷惑をかけてしまっていましたが、それで自分だけがつらい感じを出しても、迷惑をかけるだけ。チームのサポートに回ること、自分の立場でしかできないことをやってきたつもりです」と振り返りました。そして「一つのシュート、一つのプレーで違いが出せるように頑張りたいと思います」と、ワールドカップ初出場に向けて笑顔を見せていました。期待しましょう!

 取材の後はホテルに戻り、次の相手が決まるオランダ-カナダ戦に注目! オランダに決まりましたが、強そう…。

 そういえば、フランス語なので細かい内容は分かりませんが、ハーフタイムや試合後に放送されているワールドカップの討論番組が面白くて、すっかりはまっています。連日、識者が女子サッカーについてスタジオで討論する様子が、うらやましい。日本でもこんな番組ができないかな…。

画像: フランスーブラジル戦の展望を語り合う現地の番組。ぜひ日本でも…(写真◎日々野真理)

フランスーブラジル戦の展望を語り合う現地の番組。ぜひ日本でも…(写真◎日々野真理)

[6月21日]
「ヒョウのような」スピードに要注意!

 ラウンド16の相手がオランダに決まり、リヨンのチームメイトで、仲良しのファンデサンデン選手との対戦について質問される熊谷選手。以前リヨンを訪ねた際も「おしゃれで、面白い人。人間的にも、選手としてもすごく尊敬する、大好きな選手です」と話していたことを思い出しました。

 彼女のスピードは脅威。髪をヒョウ柄に染めていて、より速く見えてしまうのは気のせいかな? オランダでは、岩渕真奈選手の親友で、若くして絶対的エースとして君臨するミーデマ選手も警戒すべき選手です。

 この日は練習後、鮫島彩選手と高倉麻子監督が、戦術ボードを使いながら話し込んでいました。疑問やお互いの考えはしっかりその場で話すのが、このチームのやり方。選手同士もコミュニケーションを大切にしています。

 午前の練習を終えて、チームはチャーター機でニースからレンヌに移動しました。我々も撮影を終えてから、夜の便で移動。スコットランドとのグループステージ第2戦を戦い、慣れ親しんだ? レンヌに戻ってきました。

[6月22日]
審判団も「日本代表」として

 この日から決勝トーナメントが始まりました。ドイツ-ナイジェリア、ノルウェー-オーストラリアをテレビ観戦。やはり決勝トーナメントに入ると、試合のテンションも一層高くなる印象で、緊張感が高まります。

 ちなみにドイツ-ナイジェリアは日本の審判団、山下良美主審、手代木直美副審、坊薗真琴副審が担当、こちらも日本を代表してピッチに立っています。
 
 ドイツとノルウェー、ヨーロッパ勢が勝ち進みましたが、アジアの仲間としては、オーストラリアがPK戦までもつれ込んだ末に敗退したのが残念です。サム・カー選手のプレーがもっと見たかった…。

画像: 移動に使われるチームバス。日の丸があしらわれたデザインだ(写真◎日々野真理)

移動に使われるチームバス。日の丸があしらわれたデザインだ(写真◎日々野真理)

[6月23日]
マルタから、魂のメッセージ

 決勝トーナメントから使用するボールが変わることもあって、選手に確認。横山久美選手と山下杏也加選手に聞いてみましたが、どちらも「特に変化なく、違和感もないです」とのこと。完全非公開のトレーニングでは、PKの練習も組み込まれていたようです。

 フランス-ブラジルの注目の一戦は、延長までもつれ込む緊迫の展開。開催国フランスが勝利し、ブラジルは敗退となりましたが、注目が集まったのは試合後、ブラジルのマルタ選手のインタビューでした。私もテレビで見ていましたが、画面を通しても普通ではない感じで、ものすごい迫力で何かを訴えかけています。言葉は分からないものの、心を揺さぶられました。

 あとで聞いたところ、彼女が力説していたのは、ブラジルの子どもたちへのメッセージでした。ワールドカップという舞台、そこに立つ選手たちの覚悟、偉大さを、あらためて痛感。マルタがマルタたるゆえん、レジェンドであるゆえんを見た気がしました。

[6月24日]
やはりオランダ、背が高い!

 いよいよオランダ戦前日。なでしこジャパンの練習は冒頭15分間のみの公開でしたが、雨の降る中、選手たちは元気いっぱいトレーニングに励んでいました。

 練習後、取材エリアでの選手たちの言葉からは『やるぞ!』という思いが伝わってきます。特に今大会、頼りになる存在の菅澤優衣香選手の表情が、ひと際力強い。最年少の遠藤純選手も「自分らしく、足を振り抜きます」と引き締まった表情を見せていました。頼もしい!

 午後にスタジアムで開かれた公式会見で、高倉麻子監督は「いよいよノックアウトステージ。ゲームの流れ、入り、締め方など、臨機応変な戦い方、ゲームを読む力、変化させていく力を、選手自身がピッチで表してくれたら。ゲームをコントロールできたらいいと思います」とコメント。初めて公式会見に出席した清水梨沙選手は「オランダは良い選手が多いので、まず自分のところで負けないことも大事ですが、数的優位を作り、そこでボールを取り切ることも大事だと考えています」と語りました。

 スタジアムからフジテレビの夜のニュースの中継リポートをした後、オランダの選手たちがピッチをチェックする様子を取材。ファンデサンデン選手の髪がヒョウ柄ではなく、金髪に変わっている? 選手たちの背の高さを目の当たりにすると、分かっていても驚かされました。

 なでしこジャパンの戦いは今回も、フジテレビ系列で地上波生中継されます。キックオフは日本時間26日4時! 私も勝利のインタビューに向けて緊張が高まってきました。ベスト8に向けて、日本から大きな声援をお願いします!

画像: 前日練習でリラックスした様子のオランダの選手たち。みんな背が高い…(写真◎Getty Images)

前日練習でリラックスした様子のオランダの選手たち。みんな背が高い…(写真◎Getty Images)

文◎日々野真理 写真◎日々野真理、Getty Images


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