グループステージを1勝2分けで突破し、決勝トーナメント進出を決めた日本代表。日本時間の6月4日、24時30分にキックオフされるラウンド16では、アジアのライバル韓国と対戦することとなった。宿敵を相手にどのような戦いで勝利をつかむか、大一番を前に展望する。

上写真=グループBを2位で通過し、ラウンド16に駒を進めた日本。日の丸の誇りを胸に、韓国戦に臨む(写真◎Getty Images)

アルゼンチン破り波に乗る韓国

 2003年大会以来、越えることができていないベスト16の壁。「その壁を壊す」(菅原由勢)べく、日本はグループステージ3戦目のイタリア戦(△0-0)から中5日を経て、ラウンド16に臨む。

 日本の前に立ちはだかるのは、アジアのライバル・韓国。奇しくも、前回ベスト8に駒を進めた03年大会でも、同じラウンドで対戦した相手だ。今大会では、初戦こそポルトガルに0-1と敗れたものの、2戦目以降はしり上がりに調子を上げ、2連勝でグループFの2位に滑り込んだ。特に第3戦では優勝候補に挙げられるアルゼンチンを2-1で下し、底力を示した。

 特に、第3戦でエース・ストライカーのオ・セフンに大会初ゴールを生まれた意味は、韓国チームにとって大きい。193センチの長身FWは、ストロングポイントのヘディングで先制点を決め、チームに勢いをもたらした。

画像: 韓国のイ・ガンインはスペインでプレーする。警戒すべき選手の一人だ(写真◎Getty Images)

韓国のイ・ガンインはスペインでプレーする。警戒すべき選手の一人だ(写真◎Getty Images)

 また、10番を背負うMFイ・ガンインも調子を上げている。スペイン・バレンシアですでにラ・リーガ・デビューも飾っている左利きのアタッカーは初戦から随所に才能の片りんを見せつつも、2戦目までは周囲とかみ合わず、孤立するシーンも散見された。ただ、アルゼンチン戦ではその卓越したキープ力とシュートまで持ち込む強引さが相手の守備組織に綻びを生じさせ、勝利につながるゴールの呼び水となったとも言えるだろう。

 強豪国を破ったことで自信と手ごたえを手に入れた韓国は、波に乗って日本戦に臨んでくることが予想される。

攻撃のキーマン2人を封じよ!

 そんな韓国を迎え撃つ日本は、どう戦うか――。

 言うまでもなく、ここまでのグループステージ3試合で見せてきた日本の特長を出すことに尽きる。中でも、第2節メキシコ戦(○3-0)での戦い方は、韓国を破るための見本となるかもしれない。

 メキシコには、ディエゴ・ライネスという絶対的エースがいた。日本戦はトップ下のポジションで先発。日本の最終ラインと中盤の間、あるいはサイドと中央の中間レーンで自由に動かれ、味方からパスを受けてはボールを前線へと運ばれた。4-4-2の並びでポジションを取る日本の選手は、そのライネスの動きに手を焼くかに思われた。

 ところが、日本は動じることなく、徐々に選手間の距離をコンパクトに保っていき、メキシコのエースを封殺。組織的な守備で主導権を握り、快勝につなげた。

画像: メキシコ戦で見せた組織的な守備を、韓国戦でも再現したい(写真◎Getty Images)

メキシコ戦で見せた組織的な守備を、韓国戦でも再現したい(写真◎Getty Images)

 そのライネスと韓国のイ・ガンインは、ともに左利き。キープ力やドリブルを持ち味とする点、チームの攻撃を自由に司る点など、共通項も多い。つまり、メキシコ戦での守備戦術は、“イ・ガンイン封じ”のヒントとなるだろう。ボランチの齊藤未月を中心とした連動性のある守備で、イ・ガンインの自由を奪いたい。

 また、その一戦では瀬古歩夢と小林友希の両センターバックが、巧みなラインコントロールを見せた。相手に背後へとロングボールを狙われる場面も多くあったが、不用意に最終ラインを下げることはなく、それが前線や中盤と良い距離感を保つ要因ともなった。韓国戦では長身FWオ・セフンが二人の前に立つだろう。瀬古と小林は優位なポジショニングを取って、局面での攻防を制したい。

日本の躍進支えるGK若原の安定感

画像: GK若原はグループステージ3試合で1失点と安定している(写真◎Getty Images)

GK若原はグループステージ3試合で1失点と安定している(写真◎Getty Images)

 韓国戦では、もう一人キーマンとなり得る選手がいる。GK若原智哉だ。イ・ガンインの特長である“強引なシュート”など、韓国の攻撃を止めるために、守護神の活躍は欠かせない。

 若原は、初戦のエクアドル戦(△1-1)でパンチングを味方に当ててしまう場面があったが、その後のPKストップをきっかけに本来のパフォーマンスを取り戻し、安定感を見せている。相手のシュートに対して常に準備を怠らず、的確なポジションを取って正面でセーブする場面が多い。グループステージ3試合ではオウンゴールによる1失点のみで、相手のシュートからはゴールを許しておらず、韓国戦でもその活躍に期待がかかる。

攻撃陣の駒不足を補うものとは?

 一方、日本にとって懸念事項なのは、攻撃陣の駒不足だろう。大会初ゴールを狙う中村敬斗、原大智、西川潤らへの期待は大きいものの、イタリア戦で負傷交代した田川亨介と斉藤光毅が韓国戦を前に帰国し、戦力を2人欠いている。さらに、メキシコ戦で2ゴールを決めた宮代大聖は、ケガの影響でイタリア戦前はウォーミングアップにすら参加していなかった。韓国戦まで中5日あるとはいえ、その回復具合が気になるところだ。

 そんな中でゴールを奪う術として期待されるのが、セットプレーだ。イタリア戦では、CKで山田康太がグラウンダーのボールを中央へ送り、菅原がニアサイドでスルーして斉藤光がシュートを放つパターンを見せた。ボールは枠をとらえなかったが、これにはイタリア守備陣も対応できておらず、精度を上げれば大きな得点源となり得る。

 セットプレーに関しては、イタリア戦後に菅原が「コーナーキックの一本目とか、いろいろと仕込んでいたことはあります。そこで(点を)取れていればと思いますけれど、そんな簡単にいかないのがワールドカップだし、もっと違う方法でも点を取らなければいけない。良い意味で課題が出た」と、さらなるバリエーションの増加を示唆していた。

画像: ゴールを奪うために、セットプレーは大きなカギとなるだろう(写真◎Getty Images)

ゴールを奪うために、セットプレーは大きなカギとなるだろう(写真◎Getty Images)

 ここまで挙げたように、攻守において韓国を上回り、ベスト8、それ以上へと進める実力を、影山雅永監督が率いる日本は有しているだろう。実際にグループステージの3試合で、それを示してきた。

“日韓戦”はお互いのライバル心がぶつかり合う特別な一戦であり、「決勝トーナメントは何が起きるか分からない」(齊藤未)。ただ、「次の(ラウンド)16の試合も、日本らしい戦いをして、しっかり勝ちたい」というイタリア戦後に放った齊藤未の言葉のように、日本の特長を発揮できれば、勝機は見えてくるはずだ。

 日本時間6月4日、24時30分にキックオフされる一戦で、若き日本代表に歓喜の瞬間が訪れることを期待したい。

文◎小林康幸


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