3月22日のコロンビア戦、26日のボリビア戦に向けて招集された今回の日本代表には4人の初選出選手がいる。鈴木武蔵(札幌)、鎌田大地(シントトロイデン)、安西幸輝(鹿島)、そして畠中槙之輔(横浜FM)だ。中でも畠中は昨年夏にJ2の東京ヴェルディから横浜F・マリノスに移籍したものの、J1でのプレー経験もほかのメンバーに比べて乏しい。その招集は、まさに大抜擢と言うべきもので、本人にも招集には少なからず驚きがあったという。初めて参加するA代表の合宿二日目を終えて、畠中が取材に応じた。

上写真=代表合宿2日目。トレーニングする畠中槙之輔(写真◎J.LEAGUE)

一番下のほうのプレーヤーだと思う

 東京Vのユースに所属していたころから優れた技術を評価されていた。アンダーカテゴリーでは代表も経験している。だが、今回のA代表入りは、本人にとっても予想外であった。

「自分が思っているよりも正直、早かったです。このタイミングで呼ばれるか、というのもあったんですけど、呼ばれたというのはすごくうれしいこと。ここまでの努力が間違っていなかったということでもあると思うので」

「このタイミング…」と本人が感じるのも当然だった。昨年夏に横浜FMに加入したが、昨季のリーグ戦出場はわずか5試合のみ。今季は開幕から4節までスタメンを張るものの、それでもJ1経験は9試合に留まる。トップリーグの経験という点では、今回の招集メンバーの中で最も少ないということになるだろう。

「(東京Vや町田で)J2にいたときはもちろん、(代表は)手の届かないところだと思っていました。目標ではあったんですけど、まだまだ自分に足りものがあると。正直いま呼ばれても、周りの選手に比べたら一番下のほうのプレーヤーだと思っています。でも呼ばれたからには日の丸を背負うということですし、しっかり責任をもって、マリノスの責任ももって戦いたいと思います」

 自分の立場を客観視した上で、まだ早いというのが招集を知ったときの率直な感想だった。とはいえ、そこに『通用しない』などという後ろ向きな考えはない。「早い」と感じたあとで、畠中は「なぜ自分が呼ばれたのか」ということにしっかり思いを巡らせていた。

「(監督とはまだ)話していないから細かいことまで分からないですけど、呼ばれたということは自分の特長であるビルドアップのところとかを求めているのかなとは思っているので、そこはしっかり出していきたいと思います」

 ビルドアップ能力や正確なパスに自信を持っている。所属する横浜FMでもその能力で好調を支える。そして、その力は代表の舞台でも生かせると考えていた。外から見ていた森保ジャパンの印象について尋ねたとき、畠中はきっぱりとこう答えた。

「やろうとしているサッカーは後ろからつないでいく、攻撃的なものだと思いますし、テレビで見ていると選手たちは実際にそうやっていた。アクセントを加えるとして、僕の持ち味はそこだと思っているので、できそうな部分もあるとは思いました。僕が見た試合では、そういうシーンが何回かはあったので」

 いつかは代表で、との思いが強かったから「自分ならどうするか」「自分が入ったらどうするか」という想像ができたのだろう。

「アジアカップは用事が重なったりして見れる試合は限られたんですけど、それでも見られるときはしっかり見ました。正直、試合を見ていた時点ではまさか3月に自分がそこに入るとは思っていなかったです。ただ、ここをこうすればいいとか、そういうイメージは持っていました。いつか自分が(チームに)入ったら、ここはこうできるかも、というイメージだけは」

 代表入りのタイミングは想像どおりではなかったかもしれないが、自分が加わってプレーする姿を思い描いてきた。代表入りするにあたって必要な準備は進めてきたのだ。

「(中澤)佑二さんがいなくなって、いまマリノスのCBの顔というのは(栗原)勇蔵さんくらいしかいないですけど、そこに自分が、日本人として並んでいけるように。まだまだ足りないことだらけですけど、目指していきたいと思います」

 日本代表を数多く輩出してきた名門マリノスのCBとしての誇りも胸に、今回の代表活動に臨んでいるという。マリノスのホームでもある日産スタジアムでコロンビア戦を迎えるが、勝手知ったるスタジアムで代表デビューを飾れるかどうか。

「もし出たとしたら自分の立ち位置を理解できる相手でもあると思うので、チャンスがあれば、積極的にプレーしていきたいなと思います」

 代表入りを目指していたこれまでと同じように、代表入りを果たしたこれからも、起こり得ること、実現したいことへの準備を怠ることはない。畠中はイメージし、それを一つひとつ実現していくーー。

取材◎佐藤 景 写真◎BBM


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