上写真=日本代表の合宿初日はコンディション調整を兼ねた軽めのメニューが中心だった。先週土曜日に帰国した昌子も調整に努めた(写真◎BBM)
やられてばっかのフランスで強くなった
「(代表は)ワールドカップ以来ですし、それ以来の選手と初めての選手といて。(西)大伍くんとか安西(幸輝)は鹿島ぶりですけど、妙に懐かしい感じはしたなあと」
それが代表合宿初日を終えた昌子が最初に口にした感想だった。ロシア・ワールドカップで評価を高めたセンターバックは今年1月、鹿島アントラーズからフランスリーグのトゥールーズに移籍を果たした。今回は「海外組」として初めて代表に参加したことになる。
「まだ(海外に)行って3カ月くらいなんで。変な感じはしますけど」
W杯後に負傷したこともあってなかなか代表に招集されるタイミングがなかった。しかし、昨シーズンの終盤に復帰すると、鹿島アントラーズのACL優勝に貢献。そして移籍したトゥールーズでも出場機会を得ていることで今回、およそ8か月ぶりに青いユニフォームに袖を通すことになった。
「これまで僕はずっと国内でヨーロッパでやっている先輩たち見ていて、じゃあ(日本に)来て時差があり、すぐ試合して、でもコンディションもパフォーマンスも落とさずにやるというのは、やっぱりすごいこと。今回、コロンビアとやれるというのは光栄なことだと思いますけど、言い方は悪いですが何ということのない、強豪ではない国とも、戻ってきて時差の中でやるというのは……でも、それをしっかりやると。それはやっぱりすごいと思うわけです、僕らからしたら。
こうやって初めて(海外組として)経験するので、自分の体だったり、コンディションを整えることをより注意してやっていないといけないと思うし、自分自身、感覚というんですかね、そういういろんなものを経験して、いろんなチャレンジをして、やっていくことがこの合宿の大事なところかなと思っています」
海外組という立場を少しでも早く消化し、力を発揮できるように、昌子はどん欲に学ぼうとしている。それはもちろん、今後、代表の主軸を担っていく意欲を持つからに他ならない。フランスに渡ったのも当然、自分自身が成長するためだ。
「(フランスに)行って3カ月ぐらいですけど、やっぱ衝撃というか、何て言うんですかね、世界レベルというか。常に異国の人たちとやるというのは初めての経験で、この3カ月は色んな所で悔しい思いをした3カ月でした。そして残りのシーズンも、悔しい思いが続くだろうと思っています。でも、イラつくこともありますけど、この悔しい思いをずっとプラスに変えてきたサッカー人生だと思っているので、悔しい思いをしてまた成長していきたい。そういう思いをしている分、自分自身は強くなるので。気持ち的には鍛えられた3カ月かな。
技術とかは自分ではいまいち分からないですし、周りが見て、どう成長しているとかは分かるかもしれないですけど。僕自身はフランスリーグに行ってやられてばっかなんでね。ただ、メンタル的に落ち込んで自信を失うのが一番よくないと。どんだけやられても『自分ならできる』とずっと思ってやってきたので、それはこれからも変わらないですし、そういう強い思いは常に持ちながらやりたい。そういうところはより強くなかったかな、成長したなと自分では感じています」
結局10人の相手にしか勝っていない
昌子が代表から離れている間に、自身の立場は大きく変わったが、日本代表も様変わりしている。森保一監督が就任し、チームも大幅に若返った。現状のチームを、昌子はどう見ているのか。
「若い選手が多くなりました。僕が森保さんと一緒にやっていないので、戦術をどうこうというのは言えないですけど、若い選手の堂々としたプレーというのは僕自身も刺激になりました。ただ早く一緒にやりたいというのと、自分自身もトゥールーズに行ってポジションをしっかり獲得しないと代表も何もないと。ちょっと葛藤ではないけど、モヤモヤしたところがあったけど、こうやって呼んでいただいて、与えられた環境で、与えられたポジションで、しっかりと良いプレーが出来ればと思っています」
では、そんな若返ったチームにおける自分の役割についてはどのようにとらえているのか。
「年齢的に言うと、たぶん、ちょうど真ん中ぐらいだと思います。どっちかって言うと、自分より下が多い。上の年齢の人たちと下と、そのパイプ役というか、いろんな話ができたらと思っています。偏ってもいけないと思うし、満遍なく、いろんな選手と。初めての選手が多いので、色んな会話ができたらなと思います。
自分自身も代表の経験は、じゃあキャップ数が多いかというと全然やと思いますし。(香川)真司くんとか、そういう人らに比べたら全然ですし。だけど、自分が代表で経験したことというのはちょっとでも還元していければ。そう思っています」
今回招集されたメンバーの中で、92年生まれの昌子よりも年上の選手は東口順昭、西大伍、乾貴士、香川真司、佐々木翔、山口蛍、シュミット・ダニエル(92年2月生まれ)しかいない。下から数えたほうが早かったロシアW杯のときとはずいぶんと状況が変わった。キャップ数にしても昌子の「15」は香川の「95」、山口の「45」、乾の「34」、柴崎岳の「32」、宇佐美貴史の「26」につぐ6番目の数字。上と下をつなぐパイプ役となり、自身の経験を還元する立場というのは、なるほどその通りだろう。昌子はロシアW杯で主軸を担い、あのベルギー戦を戦った。経験を伝えていくとい役目を担う選手であり、そのことに本人も自覚的なのだ。
今回の3月シリーズの初戦では、ロシアW杯で日本が波に乗るきっかけになった相手、コロンビアと再戦する。昌子は「個人の意見」と断ったうえで、その意味について言及した。
「W杯と同じ雰囲気で、同じテンションでというのは正直、無理だと思うんですよ。彼らが僕らをどういう立ち位置で見ているのか分からないですけど、ただ僕らにとっては、すごい大事な試合だと思います。これは僕個人の感想、意見ですけど、結局、ワールドカップは10人のコロンビアにしか勝っていない。10人でもサッカーだというのはあるかもしれないですけど、11対11でコロンビアに勝つというのは大事だと思います。もちろんサッカーなんで、また相手が退場する、こっちが退場するとかあるかもしれないけど、しっかり11対11のコロンビアに勝つと。向こうはアウェーということもあるかもしれない。でも、11人のコロンビアに勝つというのは個人的に大事にしたい」
今度は11人の相手にきっちり勝って、チームと自分自身の自信を、さらに深めたいところ。それが昌子の偽らざる気持ちだろう。注目のコロンビア戦は3月22日、日産スタジアムで19時20分にキックオフされる。