上写真=カタールに大差をつけられて完敗。UAEは96年大会以来の決勝進出を果たせなかった(写真◎福地和男)

■AFCアジアカップUAE2019 準決勝
 カタール 4-0 UAE
 得点=(カ)コーフィ、アリ、アルハイドゥース、ハリファ

 準決勝に勝ち上がってきたカタールとUAEは現在、政治的な理由から国交を断っている。前日、イランを破った日本と決勝で戦う相手がどちらになるかという点もさることながら、両国がセンシティブな関係にあることからも、この準決勝は注目の一戦だった。はたして結果は、4-0。予想外の大差がつき、カタールの圧勝に終わった。互いの意地がぶつかり、そして弾けた準決勝を振り返る。

ホームの大声援も力の差は歴然

 スタンドは地元UAEのファン・サポーターに埋め尽くされ、カタールの選手がボールを持つたびにブーイングが鳴り響いた。カタールにとっては完全アウェー。指揮官フェリックス・サンチェスも難しいゲームになることを覚悟していたと試合後に語ったが、フタを開けてみれば、攻撃面も守備面も、そして選手個々の質においても、カタールの方が上だった。 
 立ち上がりこそボールを握って五分の戦いを演じたUAEだったが、次第に押し込まれて、カウンターに活路を見いだすしかなくなっていく。時折、敵陣深くボールを運ぶことができても、ラストパスやクロスの精度が低く、決定機までは作れない。22分にはカウンターで攻め込みながらもイスマイル・アルハマディがボールを奪われて逆襲に遭い、カタールのボウアラム・コーフィに遠目からシュートを許した。
 距離もあり、GKカーリド・エイーサも反応できていたが、ボールは右に飛んだエイーサの手を弾いてあっさりゴールに吸い込まれた。

 カタールにとっては緊張を解く、そしてUAEにとっては攻め気を削ぐようなゴール。それでも大声援を受けて、再びファイティングポーズを取った開催国に、カタールが追い打ちをかける。37分には左サイドを突破して、アルモエズ・アリがゴールを決めた。
 UAEの守備陣には球際の激しさが足らず、連係のままならないために、カタールの攻撃をやすやすと許すことになってしまった。

決勝は日本対カタール

 UAEのベスト4進出はフロックだったのかーー。そんな考えさえ頭をよぎるような前半を経て迎えた後半、アブドゥル・ラフマンに代わってイスマイル・マタル、イスマイル・アルハンマディに代わってアフメド・カリールを投入したUAEは、カタールが2点のリードでやや引き気味になったこともあって攻撃の形を作り始める。サリフ・ラシドに代わってモハメド・アブドゥルラフマンが登場してからは、攻撃のギアが上がり、何度もカタールゴールに迫った。

 後半に放ったUAEのシュートは6本。カタールの2本を大きく上回る。ただ、相手GKサード・アルシェイブの好守もあって、ネットを揺らすことはできなかった。残り15分を切って以降は左右からクロスを上げまくる。しかし、そのほぼすべてをカタール守備陣に跳ね返されてしまう。攻めあぐねるうちに80分にはハッサン・アルハイドゥースに中央を突破されて、3失点目を喫した。

 このゴールをきっかけに、カンドゥーラ(白い衣装)を着てスタンドを白く染めていた観客が帰り始めた。ピッチにペットボトルを投げ入れる観客も出現する。イスマール・アーメド・モハメドがボールのないところでのラフプレーで退場になるという愚行を働き、最後は締まらない内容になってしまった。アディショナルタイムにもイスマイル・ハリファに4点目を決められて、惨敗と表現するにふさわしい結果を残すことになった。
 試合終了から程なくして、UAEの選手たちは涙に暮れ、険しい表情でピッチを去った。前回王者を準々決勝で破り、国内の期待感を一気に高めたチームの締めくくりとしてはあまりにも残酷なラストシーン。試合後、アルベルト・ザッケローニ監督は謝罪から会見をスタートさせた。

「スタジアムを埋め尽くしたファン、UAEの人々に謝りたい。すべての責任は自分にある。選手はよくやった。高いスピリッツで戦ってくれた。もちろん、アジアカップに優勝するのが目標だったが、これがサッカーだ」

 ザッケローニ監督と日本の再会はならなかった。2011年大会で日本を率いてアジアカップに臨んで優勝し、以来、同大会で負け知らずだったザックの不敗神話もこの敗戦で崩れることになった。
 結果、決勝で日本と対戦するのはカタールに決まった。日本とカタールのAマッチの通算成績は2勝4分け2敗とまったくの五分。アジアカップに限れば、1勝2分け1敗だ。そして日本の1勝は、ザッケローニ監督に率いられて優勝した2011年大会の準々決勝、伊野波雅彦が終了間際に決勝ゴールを挙げた、あの試合だ。何とも因縁めいた巡り合わせと言えるかもしれない。

 カタールは今大会の日本同様に若い選手が多く、自国開催の2022年ワールドカップに向けて強化を進めているチームだ。過去最高成績は前述の2011年大会のベスト8で、今大会はすでに歴史を塗り替えている。言うなれば、ひとまず目標をクリアし、失うものがないという状態。このチームで新たな歴史をつくってきたわけだ。

 2月1日、場所はアブダビのザイード・スポーツシティ・スタジアム。日本は5度目の優勝をかけて、そしてカタールは初優勝をかけて、ファイナルの舞台に上がる。歴史をさらに更新するのは、どちらの国になるのだろうか。

取材◎佐藤 景 写真◎福地和男


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