上写真=UAEを率いてベスト4に進出したザッケローニ監督(写真◎福地和男)

 アジアカップ2019のベスト4が出そろった。日本がベトナムを下し、イランが中国を破って準決勝進出を決めた翌日、前回王者のオーストラリアは開催国UAEに敗れ、韓国は次回2022年のW杯開催国カタールに屈した。 これでベスト4が出そろい、アジア王者を決める戦いは、いよいよクライマックスを迎える。

難敵イランを乗り越えられるか?

 それにしても、負けない。アルベルト・ザッケローニのことだ。アジアカップでは依然として負け知らず。2011年にの日本を率いて、優勝を果たしたときは、決勝までの6試合で4勝2分け(引き分けのうちの1試合、準決勝の韓国戦はPK勝ち)。そして今回、UAEを率いて大会に臨んでいるが、ここまで3勝2分けで無敗神話を継続させている。

 日本がUAEと対戦するとすれば、それは決勝戦になる。日本の成長、進化を示すにはこれ以上ない相手と言えるかもしれない。しかもザックの不敗神話を止めるのが日本なら、起伏に富んだドラマの最終回として、出来過ぎと思えるほど劇的な結末だろう。

 ただし、日本もUAEも、決勝に到達するには乗り越えなければならない大きな壁がある。準決勝では難敵が待っているのだ。
 まずは日本。相手のイランはアジア最強と言われて久しい大陸きっての強豪国だ。1976年大会を最後に優勝から遠ざかっているものの、日本同様にヨーロッパでプレーする選手が多く、タレント力は出場国中でも随一だ。しかも、指揮官のカルロス・ケイロスが就任8年目を迎えており、チーム完成度が高い。先のロシア・ワールドカップでの粘り強い戦いを見せた主力がチームに残り、経験も豊富だ。FIFAランキングは29位で出場国の中で最も上位であり(日本は50位)、大会前から優勝候補の筆頭と見られていた。そんな相手に、日本はどんな戦いを見せるのか。

 ベトナム戦の翌日、先発メンバーがホテルでリカバリーに努める中、控え組はドバイで練習を行なった。取材に応じた槙野智章は、対戦が決まったイランの印象について「ボールを握れるし、フィジカルは強いし、走力があって、高さもある。ここまで対戦してきた相手の良いところをつまんだ(集めた)ようなチームだと思う」と話した。
 
 確かにチームとしてのバランス、柔軟性とも頭一つ抜けている印象がある。その上、今大会はここまで5試合で12得点を挙げ、無失点。スキはないように映る。ただ、出場停止のためにベトナム戦でプレーしなかった武藤嘉紀が「強いとは思うけれど、この戦いを制して決勝に進めれば」と言ったが、憶する必要はまったくない。
 武藤自身は2015年にイランと対戦した際にゴールを決めており、苦手意識はないとも語った。「(日本の)ディフェンスは安定しているし、ゼロに抑えてくれる。前の選手が決めれば。ここ数試合、(攻撃陣は)迷惑をかけているので」と、ゴールへの意欲も見せている。

 すでにベトナム戦で途中出場して試運転済みの大迫勇也も、おそらくイラン戦は初戦以来の先発を果たすだろう。希代のポストワーカーである大迫が前線にいることでボールの預けどころを得たチームは、本来の強みである連動性やパスワークをこれまでよりも発揮しやすくなるはずだ。ただ、大迫を基点とする攻撃を考える場合には、2列目以降の選手との距離を考えたいところ。指揮官がどのようなメンバー構成で臨むのか分からないが、得点に気の逸る若き才能は決勝で爆発してもらうとして、両サイドはロシアW杯モデルの右・原口元気、左・乾貴士とするのも良手と思われる。その理由はイランに対する『プレスの効き』や『球際勝負』を考えた時に、この2人のほうが適材と映るからだ。むろん、堂安律や南野拓実がその実力を発揮できればいいが、発揮させてもらえない状況で何ができるかを知る選手の価値が、サウジアラビア戦とベトナム戦で示されただろう。とりわけ、原口の粉骨砕身の働きぶりは、代表選手の「本分」を示していた。

勢いだけじゃないカタール

 UAEの相手となるのは、自国開催の2022年ワールドカップに向けて強化を進めるカタールだ。初のベスト4進出はフロックではない。快進撃を支えるのは、成長著しい若きタレントだ。昨年のU-23アジア選手権で3位に入った選手たちが順調に成長を遂げている。とりわけ7得点を挙げているアルマエズ・アリの活躍は目を引くが(そのUー23アジア選手権では得点王)、DFのアルラウィや守備の万能選手サルマン、MFのハジリ、FWのアフィフらは今大会でも主軸を担っている。
 若さによる勢いだけではないのは、サウジアラビアとのグループステージの熱闘や韓国に1-0で勝ち切った準々決勝の戦いぶりを見れば分かる。個々の選手の技術が高く、ひと昔前のカタールとは違って自らの役割を全うする愚直さも身に付けていた。

 開催国であるUAEも大声援を受けて、オーストラリア戦を乗り越えたが、相手のバックのミスを逃さずに得点したのは見事でも、セットプレーの際のマークミスなど、甘さも散見した。下馬評が、カタール有利なのも仕方ないところ。ホームアドバンテージを得て、どこまでその差を埋められるのか。ザックの手腕が注目される。

 日本とザックUAEの、ドラマのような『再会』は実現するだろうか。日本はイランと日本時間28日の23時に、UAEはカタールと日本時間29日の23時に、それぞれ対戦する。2月1日の決勝の舞台に立つのは、はたしてーー。

写真◎福地和男


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