上写真=この日はベンチから戦況を見つめた長友(左)と堂安
写真◎Getty Images
■AFCアジアカップUAE2019 グループステージ第3戦
日本 2-1 ウズベキスタン
得点*(日)武藤嘉紀、塩谷司
(ウ)エルドル・ショムロドフ
先発10人を入れ替える
勝てば1位突破(グループF)が決まるグループステージ第3戦のウズベキスタン戦。すでに決勝トーナメント進出を決めている日本は先発をオマーン戦から10人入れ替えてこの一戦に臨んだ。
むろん、この日と同じアルアインで戦えるとの理由から意図的に戦力ダウンを図り、2位抜けを望んだわけではない。
中3日での試合が続く中で主力を休ませる狙いが一つ。それと同時に、ここまで出場機会を得ていない選手たちに実戦感覚を取り戻させ、チームとして「総力戦」に臨むべく態勢を整える意図もあった。決勝までの7試合を勝ち抜くために、チーム全員の力が必要になると繰り返してきた森保一監督は、腰の痛みのために別メニュー調整を続けている東口順昭以外の全選手をプレーさせたことになる。
そして、チームは勝利をつかみ取った。この日、ベンチから戦況を見つめていた長友佑都は言った。
「素晴らしかったと思います。総力戦で、誰が出てもいいプレーができる、いい試合ができるというのを証明した試合でしたね、今日は」
崩れるわけにはいかなかった(青山)
先制したのはウズベキスタンだった。前半40分、完全に守備網を突破されてしまう。昨年1月に中国で行なわれたAFC U-23選手権で日本を4-0で下した立役者の一人、ハムダモフのスルーパスで抜け出したショムロドフにゴールを決められた。槙野智章と三浦弦太がカバーに走って挟み込む形になったが、抑えきれずにシュートを許した。
最後は相手1人に対して、GKのシュミット・ダニエルも含めれば、3対1の状況になっていた。それでも、止めることができなかったことに、「失点は、ちょっとポジションのミスがあってニアが開いてしまった」と、この日、先発の機会を得たシュミット・ダニエルは試合後に反省を口にしている。
ただ、そのシュミットを含め、日本は失点しても気落ちすることも塞ぎこむこともなかった。そのことはこの試合の収穫の一つと言える。先制を許しても強い気持ちを保てたのは、決勝トーナメントに進むチームに「勢いをつける」上で重要な試合であると選手全員が理解していたからだ。
「あれで崩れてしまうのは簡単だと思うけど、自分たちは崩れるわけにはいかなかった」
キャプテンマークを巻いた青山敏弘は、失点直後の心境をこう振り返った。連勝で16強入りを決めたチームの勢いを、ここで止めるような真似はできない。「どんな不細工な試合をしようが、勝って、その先へ自分たちでつなげていく」(青山)との強い決意が、失点から3分後、すぐさま形になった。右サイドで室屋成が相手を切り返しでかわし、深くえぐってマイナスのクロスを上げると、ドンピシャのタイミングで武藤嘉紀が飛び込み、ヘッドを叩き込んだ。
パスミスや連係ミスを見せていた日本だが、室屋と武藤が組織の中で個の力を発揮し、前半のうちに追いついた。さらに後半に入ると、チームの連動・連係の質も向上。決定的な場面を何度も生み出し、58分に勝ち越しゴールを手にすることになった。
忘れられない1日になった(塩谷)
決勝点を挙げたのは、地元クラブのアルアインに所属する塩谷司だった。この日はボランチを務めたが、セットプレーの流れから、ボックスの外に流れてきたボールを左足で叩き、見事にゴール右に突き刺した。
「頭が真っ白になった。チャンスあればボランチだったのでミドルシュートを打ちたいと思っていた。セットプレー崩れからでしたけど、自分の良さを一つ出せたのではないかと。(今日は)家族も来ていたし友人も来ていた。自分にとって忘れられない1日になった」
地元で代表初ゴール。しかも、そのゴールはグループFの1位突破を決める、値千金の決勝点になった。
「(出場した選手は思いが)相当に強かったと思う。今日の試合で自分たちがふがいないプレーをすると、今後過密日程になる中で選手を替えることが難しくなってくる。自分たちもやれるんだというのを示さなきゃいけない試合だった」(塩谷)
日本にとってはこれまでベンチを温めてきた選手たちが活躍し、勝利をつかみ取るという最高の展開になった。この勝利の意義について、8年前の、日本にとって最後の優勝を知る長友は次のように話している。
「(チームが)締まってきているなと思います。(優勝した)2011年のときもそうでしたが、試合に出ていなかった選手が、出たときに本当に活躍して、チームの士気を上げていくというのは、本当に2011年に被るものがあるなと。なんかこうチームが一つになる、なったような気がします」
1戦1戦成長し、全員でアジア王座をつかんだ2011年大会と、現在の状況が似ているという。
「相手チームとしても(日本が)怖いと思いますよ。(今日の選手の活躍で)誰が出てくるか分からないでしょうし。言ったら、チームの色を変えられますよね。今日もし、(日本が)良くなければ、たぶん次の試合、誰が出てくるか、相手も読みやすかったと思うんですよ。今日の試合でこれだけ良ければ、次の試合誰が出てくるか、分からないと思う。どういう戦術で来るかも分からないというところで、(日本の)色も読めないし、カメレオン戦術じゃないですけど、そういうったチームに一気になったと思うんですよ」(長友)
アジアカップは、ここからが本番。次戦は1月21日(日本時間20時開始)、相手はサウジアラビア。『カメレオンになった』日本が、負ければ終わりのノックアウトステージに臨む。
取材◎佐藤 景 写真◎Getty Images