上写真=パナマ戦で代表デビューを飾った冨安。大器がいよいよA代表のピッチに立った(写真◎嶋田健一)

 冨安健洋が東京五輪世代で最も期待されているCBの一人であるのは間違いない。各カテゴリーで代表に名を連ねてきた逸材は、この日のパナマ戦で、ついにA代表でデビュー。指揮官の言う「世代融合」を進め得るプレーを見せたが、本人の評価はは厳しいものだった。

攻守両面で持ち味を披露

 17歳の時、高校ながらアビスパ福岡でJリーグデビューを飾り、昨年はU-20ワールドカップも経験。世代を代表するCBとして、冨安健洋は大きな期待を集めてきた。今年1月にはベルギーのシントトロイデンに移籍して徐々に頭角を現すと、新シーズンを迎えたチームで現在はレギュラーとしてプレーを続けている。

 持ち味は対人の強さと正確なサイドチェンジ、攻撃を前進させる縦パスだ。パナマ戦でも、才能の片りんを随所で披露している。だが、本人は試合後、驚くほど冷静に19歳にして初キャップを刻むことになったA代表デビュー戦を振り返った。

「(特別な感慨は?)特にはなかったです。でも本当に、なんでか分からないけど、試合が始まる前までボーッとしていたというか、今までにない感覚だったんで、不安でしかなかった。けど、始まってみると、意外にも入れたので、ホッとしていますね。槙野さんもそうですし、いろんな先輩方からどんどん思い切ってやれと声かけてもらって、槙野さんは常に試合中も声かけてくれていましたし、楽しんでやれと言ってくれたので、思い切ってできた」

 およそデビュー戦とは思えない印象的なプレーが見られたのはまず、9分。左サイドの原口元気へのサイドチェンジのパスを通し、遠い場所を見る『目』が備わっていること、ロングボールを蹴る力があることを示した。続いて、39分。敵の背後をうかがう大迫に鋭い縦パスを通してチャンスを創出。最後のところで南野のシュートは相手DFに阻まれたが、攻撃を前に一気に進める起点としての能力の高さを示している。

 ただ、本人の分析はこれまた冷静だった。

「僕サイドからの方が入れやすかった状況でしたし、数的優位もつくりやすい状況だったので。縦パスはベルギーでも求められているところでもあるし、ベルギーよりもより少し運びながらという風にはやりましたけど、感覚的には悪くはなかった。でも今後もっと難しいシチュエーション出てくると思うし、もっともっとよくできるようにしていきたい」

 一方の守備面はどうか。3-0と、スコアは無失点で完勝。65分過ぎには、相手のカウンターを全力で冨安が自陣に戻って防ぎ、ピンチを救った。勝利に貢献した一人だ。だが、本人には満足するところがない。口をつくのは反省と、なお向上せんとする意欲。

「まずは無失点に抑えられた。常に求めているところなので良かったと思う。細かいミスもあったし、また映像とか見返しながら反省して次につなげたい」

 10代でのA代表デビューは、2012年5月に宮市亮が記録して以来のこと。快挙に違いないが、本人はどこまでも冷静だった。

「まだ1試合やっただけですし、これでどうこうという分けではないと思う。また練習からアピールしないといけないですし、立場というのは変わらないと思います。もちろん、勝って、無失点に抑えてホッとした部分はあるけど、勝ったからこそポジティブに反省できるし、これで終わりというわけでもないので、また切り替えてやらないといけない。(10代デビューについては?)堂安も同い年ですし、誕生日が僕が来ていないだけなので、同世代にたくさんいい選手がいて、そういう選手の活躍も刺激になっているし、負けないようにと思いながらやっているので、切磋琢磨しながらやっていければいいな、と思います」

 最終ラインから前線にグラウンダーのパスを送り、一気に攻撃を進展させるCBが森保サッカーで重要であるのは、これまで指揮官が率いてきたチームのスタイルを見ても明らか。それ一辺倒ではないが、パナマ戦に至るまでの合宿でも指揮官は、その重要性を説いていた。若きCBは、その点からも適材と映る。

 冨安は、A代表定着をアピールできただろうか。東京五輪世代でもあり、スケジュールの問題もあって今後すべてのA代表の活動に、というわけにはいかないかもしれない。ただ、この日の試合を見る限り、ファーストインプレッションは、◎(=二重丸)ではないだろうか。

取材◎佐藤 景 写真◎嶋田健一


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