1年生のときから順天堂大の攻撃を引っ張る浮田 写真◎飯嶋玲子/関東大学サッカー連盟
9月15日から関東大学リーグの後期がスタートした。巻き返しを狙う名門のキーマンを直撃した。
「タイトルを取れば、評価はあとから付いてくる」
いつも隣には大学屈指のストライカーがいる。相棒の旗手怜央はU−21日本代表に選ばれ、すでに川崎Fに内定。その能力は大学サッカー界では頭一つ抜けている。1年生のときから2トップを組み、コンビでゴールを量産(旗手は9点、浮田は6点)。一躍、脚光を浴びる存在になったが、浮田は葛藤していた。
「レオ(旗手)には負けたくない。あいつよりも点を取らないと」
2年生になると、その気持ちが空回りした。旗手が全日本大学選抜、U-20日本代表に選ばれるのを横目で見ながら人知れず悔しさを募らせた。2年目のシーズンは、不本意な結果に終わる。18試合に出場し、2ゴールのみ。一方、旗手は得点ランク2位となる14ゴールを挙げていた。一人になったときに、己を見つめ直した。
「レオよりも点を取ることばかり考えて、自分を見失っていました。これではいけないって。自分の形を作り、ゴールを取ることに集中しようと。人の得点数は気にしないようにしました」
気持ちが吹っ切れた3年目の今季。シーズン序盤からコンスタントに得点を積み重ね、前期は10試合で7ゴールを記録。肩の力が抜け、持ち味を存分に発揮している。185センチの体を生かしたポストプレーで周囲を生かし、自らもクロスに飛び込んでいく。堀池巧監督の厳しい指導のもと、ニアサイドで合わせる形に磨きをかけた。相手を背負っても、うまく反転して得意の左足で鋭いシュートを放つ。今季は旗手にマークが集中すると、浮田がゴールネットを揺らす。
「昨季よりも自分の形が出ています。でも、7点ですごく取っている実感はないですね。まだ取れます」
相棒であり、ライバルであり、友人でもある旗手の存在は心強いという。試合後、練習後にも2人でよく話し、助言を受けている。
「すごく役に立っています」
思い悩んだ時期もあったが、考え方を変えてから、気持ちが楽になった。
「これほどいい選手と一緒にできることはそうない。こんな環境はないと思うんです。レオのプレーを見て、話をして、学べるところは学びたい」
切磋琢磨する仲間であることには変わりないが、いまは旗手の存在が大きなプラスに働いている。
「個人タイトル(得点王)、チームタイトルを取れば、自分の評価はあとから付いてくると思います」
静かに闘志を燃やす男は、後期もゴールを積み重ねることを誓う。
取材・文◎杉園昌之
浮田健誠[順天堂大3年/FW]
うきた・けんせい◎1997年6月12日生まれ、柏U−18出身。柏U-18時代には2種登録され、トップチームで練習。順天堂大では1年時からレギュラーとなり、6ゴールをマーク。U-20全日本大学選抜。185cm、78kg