優勝報告会見に臨んだヤングなでしこの選手たちと池田監督。池田監督のクセである手と拳を合わせるポーズで記念撮影(写真◎BBM)

 8月26日、世界一に輝いたUー20女子代表(ヤングなでしこ)が、フランスから帰国し、都内で記者会見を開いた。これまで日本は、2011年にフル年代の女子代表、14年にU-17女子代表がワールドカップ優勝を果たしていたが、今回、Uー20女子代表が世界一の称号を手にし、史上初めて女子ワールドカップの三世代制覇を成し遂げた。2020年の東京五輪、そして2023年に自国開催を目指すW杯での優勝という日本サッカー協会が掲げる目標に向けて、大きな一歩を踏み出した。

世界から称賛された戦いぶり

アメリカとスペインという強豪が同居するグループCを2位で突破した日本は、試合のたびに成長し、準々決勝以降は安定した戦いを披露した。グループステージで敗れたスペインとの決勝は、3-1と快勝。見事に栄冠を手にした。スピードに乗った攻撃と優れた技術を駆使したパスワーク、組織だった守備とハードワークという攻守両面でスキのない戦いは、世界から称賛を集めることにもなった。

この日の優勝報告記者会見には、池田太監督以下、全選手が出席。笑顔がはじける報告会となったが、指揮官は偉業を成し遂げた今回のチームについて、こう述懐した。

「きょうのこの日に、このトロフィーと一緒に帰国できたことを大変うれしく思います。そしてそのトロフィーを勝ち取ってくれた選手、スタッフを非常に誇りに思っております。このチームは一言でいうと、雰囲気がよく、ごはんもよく食べ、よく寝て、よくおしゃべりをして、そしてよくトレーニングするチームでした。なので、私はそのエネルギーを、ピッチでどう表現してもらうかというところにパワーを使いました。本当に選手たちの持っている力を、ピッチで出してもらうことが私の役目だと思って指導してきました。 立ち上げから一つ一つのキャンプ、AFCの大会(アジア予選)を通じて選手たちが本当に選手たちが成長してくれましたし、自チームの活動や今まで育ててくれた指導者の方、関わってくださった方への感謝を忘れずに今まで過ごしてこれたと思っております。そうした力の塊が、このトロフィーだと思っています」

 会見で印象的だったのは監督に続いて今大会を振り返った選手たちのコメントにも「感謝」の言葉があふれたことだ。

「このチームで1年半の集大成として、W杯で優勝できてすごくうれしく思います。このチームは試合を積み重ねていく中で成長していけるチームでした。この素晴らしいスタッフと、素晴らしいメンバーで優勝することができて、本当に幸せでしたし、このチームのキャプテンができて誇りに思います」(南萌香)

「たくさんの応援ありがとうございました。このメンバーで最高の舞台で、最高の結果を出せて良かったです。この結果を出せたというのは、多くの方々の応援とサポートの結果だと思っています。今後も感謝の気持ちを忘れず、この結果を第一歩として、もっと成長していきたいと思います」(宮澤ひなた)

「このメンバーで世界一という最高の景色を見れてうれしかったです。この大会を通してたくさん成長することができました。これからも感謝の気持ちを忘れずに、もう一度最高の景色を見られるように頑張りたいと思います」(宝田沙織)

「まずは世界一という目標を達成することできて、非常にうれしく思います。大変でつらいこともありましたけど、素晴らしいチームメイトとスタッフとここまでこれて、本当によかったと思います。応援ありがとうございました」(長野風花)

 5得点3アシストの活躍でシルバーボール賞を受賞した宝田も、ブロンズボール賞に輝いた主将の南も、感謝の言葉を忘れなかった。それは池田監督がことあるごとに、口にしてきたことでもある。指揮官の下で選手たちは成長し、そしてチームとして結束していった。南が明かす。

「(池田)太さんと出会ったのは、このチームが発足した当時なんですけど、太さんはそのときから『熱男』で(一同爆笑)。自分が一番印象に残っているのは、試合前のミーティングです。自分たちもモチベーションは上がっているんですけど、太さんが誰よりも熱男で、このチームに対する思いを毎回伝えてくれて。これから試合に臨むんだなという気持ちになると同時に、この素晴らしい監督を、世界一にしたいという気持ちにしてくれました」

 宮澤の言葉も、選手と監督の関係性を表していた。

「太さん本当に熱血で、いつでも選手のことを第一に考えてくれて、太さんの下でサッカーできた時間はとても自分にとって貴重で、宝物になりました。アジア大会のときにもらった手紙がすごく自分の宝物になっていて、一人ひとりのメッセージは違ったと思うんですけど、その一言に太さんの思いがこもっているなと思って、太さんを世界一の監督にすることができてよかったなと思います」

 選手のプレーが素晴らしかったのはもちろんだが、池田監督を中心としたスタッフの仕事ぶりが素晴らしかったのも間違いない。選手の言葉を聞き、壇上で少し照れながら「ありがとう」と返した池田監督は、「まずは選手の元気に負けないこと。それから私だけではなく、スタッフワークも選手に負けない良さを出していこうということで。選手は色んな事を観察したり聞いていたりするものですから。準備期間も含めて、素晴らしいスタッフワークでやれたかなと。そこは大事にしていたところです」と、良好な関係を築けた要因を説明した。

 池田監督は今後、なでしこジャパン入りが期待される選手たちに、こんなエールも送っている。

「このチームはこの大会で一区切りで、U-20というカテゴリーは終わりますが、彼女たちには次のステップ、なでしこであったり、素晴らしい人生を歩んでいってほしいと思います。今回のようにすべてが成功で終わることばかりではないと思いますが、選手たちにはミーティングでも伝えましたが、明るさと努力と笑顔と、感謝の気持ちをもって、乗り越えて、それぞれのサッカー人生、それぞれの人生を歩んでいってほしいと思っています」

 今回、偉業を成し遂げたチームの礎になっていたのはチームワークだった。それは2011年になでしこジャパンが世界を制したときにも、2014年にUー17女子代表が頂点に立ったときにも、聞かれた言葉。世界の頂点に上る過程で『武器』になったと当時の選手、スタッフが言及していたのは、チームワークであり、団結力だった。そして世界を制すチームワークを育むには、指揮官の存在が大きいーー。そのことを、印象付けた今回の優勝だった。

■FIFA U-20女子W杯フランス・メンバー
(背番号・選手名・所属)
▼GK
1 鈴木 あぐり(マイナビベガルタ仙台レディース)
18 スタンボー 華(INAC神戸レオネッサ)
21 福田 まい(日体大FIELDS横浜)
▼DF
2 小野 奈菜(神奈川大)
3 高平 美憂(マイナビベガルタ仙台レディース)
4 南 萌華(浦和レッズレディース)
5 牛島 理子(INAC神戸レオネッサ)
6 高橋 はな(浦和レッズレディース)
13 宮川 麻都(日テレ・ベレーザ)
17 北村 菜々美(セレッソ大阪堺レディース)
▼MF
7 林 穂之香(セレッソ大阪堺レディース)
8 福田 ゆい(INAC神戸レオネッサ)
9 宮澤 ひなた(日テレ・ベレーザ)
10 長野 風花(仁川現代製鉄レッドエンジェルズ=韓国)
12 今井 裕里奈(日体大FIELDS横浜)
15 佐藤 瑞夏(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
20 遠藤 純(JFAアカデミー福島)
▼FW
11 宝田 沙織(セレッソ大阪堺レディース)
14 村岡 真実(オルカ鴨川FC)
16 児野 楓香(日体大FIELDS横浜)
19 植木 理子(日テレ・ベレーザ)

■FIFA U-20女子ワールドカップ・フランス2018 試合結果
▼8月6日 グループステージ第1戦
〇日本 1-0 アメリカ●
得点者:(日)林
▼8月9日 グループステージ第2戦
●日本 0-1 スペイン〇
得点者:(ス)メナジョ
▼8月13日 グループステージ第3戦
〇日本 6-0 パラグアイ●
得点者:(日)宝田3、植木3
▼8月17日 準々決勝
〇日本 3-1 ドイツ●
得点者:(日)遠藤、植木、宝田 (ド)ミンゲ
▼8月20日 準決勝
〇日本 2-0 イングランド●
得点者:(日)植木、遠藤
▼8月24日 決勝
〇日本 3-1 スペイン●
得点者:(日)宮澤、宝田、長野 (ス)アンドゥハル
(※日付は現地時間)


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