昨季、関東大学リーグで鮮烈なデビューを飾ったルーキーは枠を超えて活躍。東京五輪世代のU−20、U−21代表に選出され、国際舞台でも存在感を示す。根っからのストライカーは、いかにして点を取るかを常に考えている。今年は大学2年生となり、法政大のエースとしての風格も漂ってきた。

今年のトゥーロン国際大会にも出場。ポルトガルから2ゴールを挙げ、その得点能力を見せた 写真◎Getty Images

「チームを勝たせるFWが一番。勝利に導くゴールを多く決めたい」

 昨年、一躍大学サッカー界の話題の人となった。関東大学リーグでは1年生ながら、いきなり12得点をマーク。夏の総理大臣杯では優勝に導く決勝点を含む3ゴールを挙げて、法政大の35年ぶりの大会制覇に貢献。今年4月に大学2年生になったばかりの19歳は、FW論には一家言を持つ。

「僕はチームを勝たせるフォワードが一番だと思っている。チームが勝たないと評価されない。得点ランクや記録はどうでもいい。勝利に導くゴールをたくさん決めたい」

 シンデレラボーイの勢いは止まらなかった。昨年12月、東京五輪世代となるU−20代表のタイ遠征で初選出されると、国際舞台でも持ち味を存分に発揮。先発出場した北朝鮮戦では前半に得意の裏への抜け出しで初ゴールを挙げると、後半はクロスに飛び込むヘディングで2点目をマークした。3月のパラグアイ遠征でも招集され、全3試合に出場。森保一監督の評価は高い。5月にはトゥーロン国際大会に臨むメンバーにも選出された。

「僕の特徴を買ってもらい、選んでもらっていると思う。誰でもできるプレーをしていたら意味がない。自分にしかないものを出さないと」

 年代別代表に初めて選ばれても、臆するところはない。言葉には自信がにじむが、謙虚に足元も見つめている。J1で活躍する選手たちが多く招集されたパラグアイ遠征では、新たな課題を見つけた。

「(チームメイトの)プロはテンポが違う。僕の走るタイミング、走る場所が味方と合わなかった。パスを呼び込めなくて…。僕はまだ青かった」

 法政大ではエースとして君臨しており、自身のタイミングで裏に走っても、パスの出し手が合わせてくれる。しかし、代表では勝手が違った。

「プロの選手たちに合わせないと、きっとプロの舞台でもやっていけない。まだまだ僕の裏の取り方が甘いってことでしょうね」

 いかにして裏を取るかは、昨年から試行錯誤してきたテーマの一つ。鹿島学園高から法政大に入り、苦労なくゴールを重ねてきたわけではない。点を取れない時期には、自らの動きを徹底的に分析した。

「無意識のうちに動きが、ワンパターンになっていた。この選手が持てば、こう動くとか。だから、あえて違う動きを取り入れたり、あらゆるパターンを試した。動き出しの選択肢が増えれば、裏を取れる確率も高まる」

 お気に入りのコロンビア代表FWラダメル・ファルカオを見るときも、裏への抜け出しに目がいく。現状に満足することなく、向上心は尽きない。

「相手とよーいドンで裏に走っても、勝つ自信はあるけれど、できれば置き去りにしたい。自分の足を生かす走り方、コース取りは常に考えている」

 幼い頃から「裏抜け」のスペシャリストが好きだった。海外サッカー好きの父の影響で自宅では、いつも欧州リーグの試合が流れていた。心を奪われたのは元アルゼンチン代表のエルナン・クレスポなど、ゴールを量産する選手ばかりだ。

「ワンタッチで決めるのが、いいフォワードだと思っている」

 根っからの点取り屋は、ワンタッチゴールへのこだわりも強い。昨季の関東大学リーグでは12得点中9ゴールが、まさにそれ。ゴール前での駆け引きが絶妙で、一瞬でマークを外してクロスに飛び込んでいく。

「僕はワンタッチで決めるのが、いいフォワードだと思っている。こぼれ球を押し込む、『ごっつあんゴール』が多い選手も、たまたまそこにいるのではない。狙っているから決められる。ファルカオもそうだと思う。少し消えていると思いきや、急に現れてゴールを奪う」

 ゴールに取りつかれたのは小学校1年生の頃だ。練習試合で初めて点を決め、サッカーの楽しみを知った。チームメイトたちに祝福され、肩を叩かれた感触まで覚えている。「これが点を取るということか」と。

 それ以来、点を決めるための練習しかしなかった。シュートの特訓はもちろんのこと、ゴール前でのドリブルなどにも打ち込み、幼い頃はパス練習をほとんどした記憶がない。いまもゴールへのこだわりは人一倍強い。

「点を決めると、みんなに喜んでもらえるから。チームメイトも、ベンチも、応援している人たちも、笑顔になるので。そうすると、僕もうれしくなってくる。もし点を決めて、誰も喜んでくれなければ、そんなものは意味がない」

 だからこそ、勝利を呼び込むゴールに価値を見いだし、ブレずに理想のFW像を追求していけるのだろう。

 大学4年生で迎える2020年の東京五輪。本人はまだおぼろげだと言うが、日本中を喜ばせる日がくるかもしれない。

文◎杉園昌之

上田綺世[FW/法政大/2年]
うえだ・あやせ◎1998年8月28日生まれ。鹿島ノルテジュニアユースから鹿島学園高へ進み、3年時には高校選手権に出場。法政大では1年生から主力FWとして活躍し、昨季はリーグ戦12ゴールを記録。現2年生。東京五輪を目指すU-21日本代表。182cm、76kg


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