コロンビア戦に勝利し、歓喜の雄たけびを上げる昌子(写真◎Getty Images)
満男さんが一度は経験したほうがいいと
コロンビア戦に先発したCBの昌子源は、高ぶる気持ちを抑え、「クールに熱く」プレーして勝利に大きく貢献した。相手FWラダメル・ファルカオと再三にわたって繰り広げられた攻防に「余裕はなかった」と言いつつも、同時にワールドカップという舞台で戦える幸福も感じていたという。
プラチナ世代ながら、代表とは縁遠い関係にあった男にとって、初めてのワールドカップはどう映っているのか。コロンビア戦後に聞いてみた。
「注目度もそうやし、スタジアムの雰囲気とか…なんやかんやクラブワールドカップとかACLの中国での対戦とかもすごいし、いろんなところを経験したけど、ワールドカップは比べもんにならんかった。すごかった。サポーターもそうやし、国を背負う戦いの感じとかやっぱり違う。
ほかの試合を見ていても感じましたよ。ブラジル×スイスとか。そんな中、今回は優勝候補と言われるような強豪国が苦戦していた。状況的には、僕らもそうやなと思っていました。言っても日本は強豪国ではない。ただ、そういう大会の状況を見て、コロンビアとは初戦やし、いけるなという感じてはいましたね」
かつて、夢のまた夢でしかなかった舞台は、やっぱり夢のような空間だった。そして、自分の力を存分に発揮できる場所でもあった。
「(俺らの世代は)宇佐美(貴史)やら(柴崎)岳やらが引っ張ってきた人がいて、俺なんか無名中の無名で、ようここまであがってきたと。プラチナ世代では初めて岳と俺が(W杯に)出たってなるけど、俺はプラチナに入っていないから。プラチナ世代は宇佐美とか岳とかのことやからね。端の端にいただけ(笑)」
それでも遅れてきたプラチナは、代表に選ばれるようになり、ワールドカップを現実の目標ととらえ始めたころに、尊敬する鹿島の大先輩にこんな質問をしていたという。
「(小笠原)満男さんにね、2年前くらいかな、『ワールドカップってどんな大会ですか』って聞いたら、『絶対、一度は経験したほうがいい』って。あの人がそう言うってよっぽど。どういうことなんやろってそれから思ってて、それが今日はわかった気がする。試合に出ても、メンバーに選ばれるだけでも、サッカー選手としてこの雰囲気は味わったほうがいいと思う」
誰もが立てる場所ではない。だが、サッカー選手が常に目指すべき場所だと感じたと話す。よく、ワールドカップはサッカー選手を一回りも二回りも成長させる場所と言われるが、昌子もそのことを強く感じたのかもしれない。
「もう、これを経験したらサッカーやめられんね」
セネガル戦、ポーランド戦と難敵との戦いが続くが、昌子にとってはそれも最高の舞台。プラチナの輝きを放つにふさわしい舞台だろう。
取材◎佐藤 景 写真◎Getty Images、福地和男/JMPA