Jクラブのスカウトが熱視線を送る、プロ入り確実と言われる逸材をピックアップする。
第1弾で紹介した石川とともに、桐蔭横浜大でコンビを組むアタッカーに迫る。
「走る湘南」に鍛えられた
スタミナは底なしか。夏の太陽が照りつけるなかでも、最後まで足は止まらない。さすが、大学3年生から厳しい練習を課す「走る湘南ベルマーレ」で鍛えられているだけはある。
「もともとは苦手だったんですけど、走れるようになりましたね」
苦笑いを浮かべながら曺貴裁監督への感謝を口にしていた。湘南仕込みのプレスは目を見張る。ガツンと音が聞こえるくらいの勢いで186センチの体を相手へぶつけていく。スピードには定評があり、その突進は迫力満点。
曺貴裁監督からは多くの助言をもらっている。ボールを受ける前の動きもその一つ。プロの舞台を見据えて、現状に満足せず、FWとして生きていくための努力を惜しまない。
湘南の練習に参加することで、プロの心得を知った。特に大槻周平(今季ヴィッセル神戸へ移籍)からは準備の大切さを教わったという。誰よりも早く練習場に来て、入念に体をケアする姿には驚いた。ルーティンも崩さず、クラブスタッフから体調管理も徹底していることを聞かされた。
「プロであれだけ実績がある人でも懸命に努力するんだと知りました」
継続的に湘南の練習に参加しており、相思相愛の関係。鈴木のクラブへの思いは強い。幼い頃に平塚競技場へ足を運び、加藤望、坂本紘司(現スポーツダイレクター)らのプレーを見て育った。中学時代は湘南U−15で技を磨き、トップで活躍することを夢見てきたがU−18に昇格できずに涙をのんだ。それでも神奈川県の相洋高でサッカーを続け、大学を経由してようやくプロの世界が見えてきた。
毎試合のように湘南の試合をチェックし、躍動するアカデミー出身の若手たちからも刺激を受けている。18歳で出場している齊藤未月、石原広教らのプレーを見て、驚きながらも対抗心を燃やす。
「僕も結果を出して、認めてもらう」
憧れだった緑のシャツを来て、ピッチを駆け回るイメージはできている。
大学サッカー界で、ゴールを奪ってもおごることはない。
「個の部分をもっと上げていかないといけない。1人でゴールを取り切るくらいになりたい」
チームメイトにも良きライバルがいる。10番を背負う石川は意識する存在。「負けたくない思いはある」と胸の内を隠そうとはしない。プロになっても、その思いは変わらないが、いずれはまた一緒のチームでプレーしたいと言う。
「そうなれば、最高ですね」
【プロフィール】
すずき・くにとも/1995年7月3日生まれ。神奈川県出身。湘南U-15で育ち、相洋高校へ。桐蔭横浜大で才能が開花し、プロ注目の存在となった。186センチ、78キロ。
※サッカーマガジン9月号掲載の大学支局を再構成し掲載しています。