大学でしっかりと成長し、愛する「古巣」へ復帰する。
千葉アカデミーが輩出した明大のセンターバックの言葉には、クラブ愛があふれていた。
ジェフ愛は誰にも負けない
アイドルは「ジェフユナイテッド市原」の阿部勇樹だった。部屋にはサインを飾り、ジェフのユニフォームを着て、足繁く市原臨海競技場に通った。
「中盤で相手をつぶして、パスをさばくところがすごくカッコよくて。風貌も雰囲気があったし、すべてがお気に入りでした」
イビチャ・オシム元監督のチームで躍動する若きボランチのプレーをつぶさに観察した。ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)を連覇したときは国立競技場まで足を運んだ。黄金時代を見てきた少年にとって、その中心にいた阿部は特別な存在なのだろう。
5月15日、練習試合で浦和レッズのクラブハウスに訪れたときには近くに憧れの先輩がいたものの、「緊張するし、恥ずかしくて」と話し掛けることもできずに遠くから眺めるだけ。同じアカデミー出身の阿部は浦和へ移籍しても「永遠のスター」に変わりはない。
プロの舞台で叶えたい夢がある。
「Jリーグの試合で阿部さんとユニフォーム交換ができれば、そんなうれしいことはない」
想像をふくらませながら、声を弾ませた。小学3年生からジェフのスクールでサッカーを習い、6年生になるとテストをパスしてジュニアチームへ加入。U−15、U−18と進み、大学へ進学したものの、心はずっとジェフにあった。チームの名称がジェフユナイテッド市原・千葉と変わっても、スタジアムが移転しても、愛は揺るがない。
黄色のユニフォームを着るイメージもすでにできている。クラブへの思いは、誰よりも強いと自負する。
「アカデミー出身として、クラブ愛を前面に出してプレーしたい。それで、チームを活性化していければいい」
22歳のセンターバックは、愛だけで通用するほどプロの世界が甘くないことも知っている。体の線の細さを補うために、ジェフのクラブハウスで最新のマシンで筋力アップに励む。持ち味であるビルドアップの質にこだわり、プロを見据え、意識してプレーする。ジェフの戦術も入念にチェック。練習に参加し、エスナイデル監督が取り組むハイラインも経験した。
「裏へのケアなど、自分のスピードを生かせる」と目を輝かせる。
U−18からトップ昇格こそ果たせなかったが、大学でしっかりと成長した。斉藤和夫スカウトは「たくましくなった。パス能力は高いし、ヘディングも強い。十分にできる」と即戦力として期待を寄せている。
(取材・文◎杉園昌之)
【プロフィール】
とりうみ・こうじ/1995年5月9日生まれ。千葉県出身。ジェフユナイテッド千葉のジュニアから生え抜きでU-18までプレーし、明治大へ進学。全日本大学選抜の経験あり。180センチ、69キロ。
※サッカーマガジン8月号掲載の大学支局を再構成し掲載しています。