5月に開催される(5月20日―6月11日予定)、FIFA U-20ワールドカップに向けて、U―20日本代表候補選手たちが千葉県内で合宿を行った。今回は選考を兼ねた合宿の側面もあったが、アピールできた選手は限られた印象だった。

上写真=練習試合で2ゴールを決めた徳島のFW千葉寛汰(写真◎川端暁彦)

所属チームで試合に出ていない不安も…

 U-20日本代表候補が4月3日から4日にかけて“1泊2日”でのショートキャンプを実施した。

 5月にはU-20ワールドカップが予定されているだけにそのメンバー選考を兼ねての合宿が行われたわけだが、参加メンバーはわずか14名。3日の全体練習に参加したのは7名で、4日に行われた関東大学選抜(U-20)との練習試合はほぼ“ぶっつけ本番”という形だった。

 当然ながら、監督の考える『候補選手』を広く招集し、大規模な合宿を行いたいタイミングではある。ただ、反町康治技術委員長が「シーズン中にキャンプをやるのは難しい部分がある」と認めるように、3月のU-20アジアカップでJクラブの協力を仰ぎ、5月にはまたリーグ戦開催中に世界大会があるとなると、これ以上の拘束は困難だ。そのため期間も人数も最小限に絞っての形式になった。

 今回選ばれたメンバーは3月のU-20アジアカップで主力ではなかった、あるいは選外だった選手たちが中心だ。「どういうメンバーが選ばれたのかは分かっている」とMF保田堅心(大分トリニータ)が語ったように、“サバイバル候補合宿”という色合いの濃いキャンプだった。

 もう一つの隠れた狙いは90分ゲームを通じて選手を見極めることにある。「今回選ばれた選手のほとんどが所属チームで90分の試合をしていない」と冨樫剛一監督は語ったが、高卒2年目の選手たちが中心となるこの世代の選手の多くが、所属チームで主力ではない。そうしたシーズンを送る中でゲーム体力や試合感覚自体を喪失してしまい、パフォーマンスが下がっていく傾向がある。

 一方で、評価されているがゆえの難しさもある。MF笠柳翼(V・ファーレン長崎)は「ベンチには入っているので、そうなると試合に出ている選手たちと同じような軽いメニューをずっとこなしている形になる」と言う。笠柳は今季リーグ戦で3試合57分というプレー時間しかないが、練習自体は「試合に出ているメンバー」の基準となってしまっている。「まったく出ていない選手は別にやっている」とのことで、「15分の切り札」として機能することを期待されるがゆえに、逆に90分戦う選手としての体力がなくなってしまっている現状があるのだ。

 そもそも試合に出ていない選手を評価するのは難しいが、その中でもコンディションを維持して高いパフォーマンスを出せる選手もいるはずで、そうした選手たちを見極める機会が必要だった。候補選手を90分間の練習試合に起用し、世界大会に向けた選手選考の材料にする狙いも今回の合宿にはあったのである。

 4日に行われた練習試合は、前述の懸念を悪い意味で裏付ける内容となった。前半は寄せ集めながら士気高く臨んだ選手たちが好内容のチームパフォーマンスを披露。FW登録で唯一招集された千葉寛汰(徳島ヴォルティス)の2得点でリードを奪って折り返した。だが、後半は「足が止まってしまった」と複数の選手が振り返ったとおりの内容に。前後半で選手を入れ替えてフレッシュになった大学選抜に完全にペースを握られて、2失点。2ー2のドローという形に終わってしまった。

 その後のPK戦で勝利したとはいえ、あらためて高卒でJ入りした選手たちの試合経験不足という課題が浮き彫りになった。これは今回招集外の主力と期待されている選手たちについても言える課題だ。

 2ゴールを記録して点取り屋としての個性を示したFWの千葉、左右両サイドバックで試されて攻守に持ち味を発揮し、「自分の良さを出せた部分はあった」と手応えも語ったDF西久保駿介(ジェフユナイテッド千葉)など、「俺を選べ」というポジティブなメッセージを出せた選手もいるが、多くの選手が口をそろえて「やっぱりチームで試合に出ないとダメ」と語ったように、課題の方をより深刻に捉える機会になった。

 同様の候補合宿はもう一度行われ、首脳陣はあらためて試合に出ていない選手たちに「90分ゲーム」を体感させながら選考の材料としつつ、少しでも選手たちのゲーム体力と試合勘確保につなげたい考えだ。

 再びベストメンバーの招集に至るのはW杯開幕の約1週間前。欧州組も交え、アジア予選と同じく “ぶっつけ本番”で大会に臨むこととなる。

文・写真◎川端暁彦


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