『AFC U17アジアカップ2023』に出場中のU-17日本代表はグループステージを首位通過し、26日に『運命の』準々決勝に臨む(19時開始)。相手はオーストラリア(豪州)。勝てば、U-17ワールドカップ出場権が与えられる大一番。敗れれば当然、世界行きを逃すことになる。若き日本代表はいかに戦うのか?

上写真=D組を首位通過したU17日本代表は26日、C組2位のオーストラリアとW杯出場をかけて対戦する(写真◎AFC)

この準々決勝から逆算して準備してきた

 現在タイで開催されている『FIFA U-17ワールドカップ』予選を兼ねるAFC U17アジアカップ。その最大の山場となるのが、26日に行われる準々決勝だ。

「U-17、U-20のAFCの大会は、この1試合が重すぎるんだよね……」と、何かを思い出したかのような表情で苦笑いを浮かべたのは、日本サッカー協会の育成ダイレクターであり、今回はアジアサッカー連盟のテクニカルスタディグループの一員として大会の視察をしている元U-20日本代表監督、影山雅永氏だ。

 U-17、U-20のワールドカップにおけるアジア枠は「4」。このため、原則として大会のベスト4に入れば世界大会の出場権が与えられ、入れなければ脱落となる。

 必然、「準々決勝」の価値が飛び抜けて高くなるわけだ。サッカーという偶発性の高いスポーツで、完全な一発勝負によって世界大会出場チームが決まるのだから、地力を持ちながら敗れるチームも珍しくない。各国代表監督にとっては、何とも胃の痛い1日になる。影山氏が思い出していたのも、そんな日の記憶だろう。

 現在、U-17日本代表を率いる森山佳郎「監督」にとっては3度目となる「世界大会決定戦」だ。過去2度は共に快勝しているが、その経験があるからこそ、慎重に構えている。

「本当に簡単じゃない。中2日の連戦を重ねて迎えるのでコンディションも難しいし、選手たちのメンタルも難しい状態になる」(森山監督)

 グループステージはすべてこの準々決勝からの逆算で組み立てていたと言っても過言ではない。大会前から指揮官は「試合の流れとは異なる選手交代もあると思う。『何でアイツを下げるんだ?』と思うかもしれないけど、一部の選手に出場時間を集中させると確実に準々決勝までに疲弊しきってしまう。しっかり時間をシェアしながら戦っていく」と断言していた。

 その言葉どおり、2試合をこなした段階で早くもGKを除くフィールダー全員をピッチに投入し、3試合目までに23人中20人が先発を経験するという「時間をシェアする」戦い方でタイの酷暑の連戦を乗り切った。

 また、「負傷や体調不良の選手も出て来るかもしれない」という予想も残念ながら的中し、複数の選手がタイの環境にやられる形で体調不良となり、予定どおりの選手起用も難しくなった。ただ、そうして離脱していた選手も徐々に復帰し、「状態が上がってきてくれた」と、この大事な試合には間に合った。

 グループ割りと日程の妙で、日本が中2日で臨むのに対し、相手のオーストラリアは中3日で決戦に臨む。準備期間の差はあるが、主軸選手を温存しながら戦うことで、この一戦に万全とは言わないまでも、それに近いオーダーを組むことはできる状態に仕上がっている。

 相手のオーストラリアは3トップの攻撃力を生かして殴り勝つスタイルで勝ち上げってきた。暑さを含めたタイの環境面には手こずっている印象もあるものの、個々のタレント性はかなり高い。

 特に17番のFWネストリー・イランクンダは森山佳郎監督も要注意人物に挙げるスーパースター候補。17歳ながらオーストラリアのプロリーグでも結果を残しており、A代表のキャンプにも帯同するなどオーストラリアサッカー界の未来を担う存在として期待を集めている。

 バイエルン・ミュンヘンなど欧州ビッグクラブへ移籍の噂も絶えない選手の映像を観た日本の選手たちも衝撃を受けているようで、「僕たちも17番のことばかり話していますよ」とDF柴田翔太郎(川崎フロンターレU-18)も笑う。圧倒的なスピードとシュートレンジの広さは驚異的で、柴田いわく「自分がマッチアップすることになると思うんですけど、一人で止めようとするのではなく、連係して対応しないといけない」相手となる。

 他にも身体的特長を持つ選手がそろう好チームだが、攻撃的スタイルと裏腹に守備のスキは多く、実際、グループステージの3試合で5失点を喫している。柴田が「相手DFのアジリティはそんなに高くない。日本の良さは生きると思う」と語るように、チャンスは十分に作れそうだ。

 森山監督も「相手の攻撃を怖がって守備を増やすような戦い方はしない」と明言。「守備に回ると日本の選手たちの良さが出なくなる。打ち合い上等じゃないけれど、積極的にいきたい」と攻撃的なオーストラリアに対し、こちらも攻撃的なスタイルで挑む考えだ。

 この『AFC U17アジアカップ』は延長戦なしでPK戦となるレギュレーション。この点も大きなポイントになる。カタールW杯での敗戦後、年代別日本代表のトレーニングでPK強化を推し進めてきた反町康治技術委員長は「もしPK戦になったら、その成果が出てくれれば」と期待を込めていた。

 いずれにしても、「勝てば世界」の一大決戦。プレッシャーを跳ね返し、オーストラリアのスーパースター候補を止め、逆に仕留めることができるのか。最後まで目を離せない、熱い勝負となりそうだ。

取材・文◎川端暁彦

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『AFC U17アジアカップ 準々決勝』
 日本 vs オーストラリア
・日時:6月26日(月)19時キックオフ
・解説:水沼貴史/実況:福田浩大


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